第26話 母
あれから半年が経ち、佐奈子の元へちょこちょこと逢いに行っていた。
千絵は佐奈子の腹に話しかける。
「ええかー、おばちゃんやないで。お姉さんやからな。おばちゃんって言っても返事せーへんからなー」佐奈子の腹も目立ってきた。
「何回言うねん、おばちゃん。ええかーおかあちゃんちゃうでー。ママやからなー」
佐奈子も同様に自分の腹に話しかける。
「しかし禁煙せなあかんって大変やな」千絵は眉間に皺を寄せ換気扇の下で煙草に火を着けた。
「そんなもんせんでええ。佐奈はたまたま悪阻で吸えへんくなっただけやし。あー、いい香りやな」と佐奈子は手で煙を自分の方にパタパタとさせる。
「佐奈悪阻が治まってきたからって調子乗んな」
佐奈子は産婦人科に行っていない。もちろん異常があればサポートするが内心心配で堪らない。
その頃千絵に彼氏ができていた。相手は二つほど年上だ。誰にも言っていないが実の所二か月生理がきていない。
「なーおかあちゃん、どんな気持ちよ?」
「ママや言うてるやろ。パパおらへんし具合い悪いで、てかあんた先輩やんか」佐奈子は自身の家の三階のベランダから空虚に話しかける。
そうだ、遥は今元気なのだろうか。早ければあと少しでスマートフォンを持たせてもらえるのではないか。同時に夏の事も思い出す。悪い男に引っかかってなければ良いのだが。
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