第23話 退院へ向けて
例えば、満タンのインスタントコーヒーに瓶ごと湯を注ぎ一気に飲む。すると覚せい剤と同じような効果が見られるが、コーヒー自体違法ではないので厳重な扉の向こうへ行くことはない。何度もそれでカフェイン中毒となり入退院を繰り返す男性。
とある男性は親から日々虐待を受けていてある日、我慢の限界が訪れ「俺、これ以上暴力をふるわれたならどうなっても知らんよ」という息子の言葉に過敏に反応した親は「息子から殺される」と病院に訴え医療保護入院となった。措置入院の次に重たい入院だ。
新婚二年目で三回自殺未遂を行った男性。何が不満だったのだろうか。
その男性は沖縄で、大阪の精神病院にくる理由もわからない。千絵と同じく措置入院だ。いつものほほんとし、スマートフォンで映画を観ていた。
理由はわからないが、交番に包丁を二本持って押しかけてそのまま入院となった中年女性。なぜ逮捕されなかったんだろう。こちらももちろん措置入院。
他にも拒食症の子や、親から性的虐待を受けていた子、セックス依存症の子。様々な人間がいた。
千絵は昔から集中すると、恐らく人の数倍は頭の回転が良くなる。
早く退院したいがために精神に関する研究書を読み漁った。
退院に関する文を発見し、丸暗記し担当医に伝えた。すると担当医は相手にわからせるためだけの、大きなため息をついた。
「いつ退院したいですか?」
「明後日にでも。明日でも構いませんよ」千絵が嬉々として伝えると
担当医はさらにため息をつき「準備があるので明後日にしましょう」となぜか負けたような背中で去っていった。
正直担当医と二人だけでご飯を食べたりと仲は良かった。もちろんやましい事はまかったが。
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