第22話 精神病院
入院してからとにかくぼんやりと過ごしていた。
時間が経たない。呼び鈴などはなく、看護師を呼ぶときは天井に向かって、手を叩き音を出す仕組みだ。
夜は一杯の水さえ貰えない。看護師は恐らく、仮眠を取っているのであろう。
両隣の女性達は睡眠薬が効かないのか、夜になると暴れだす。
カーカーと大声で走り回り壁中を叩く。壁は重厚なのか薄いのか、はたまた叩いている連中が力持ちなのかはわからない。しかしどうしてもこれでは眠れたものではない。
千絵は密やかに両隣の人のことを「カラス」と呼んでいた。
カラス達は昼間就寝する。千絵もカラス達のせいで昼間は眠くて仕方がない。
千絵が昼間に仮眠を取ろうとすると看護師から「そんなんやから夜寝られんのやろ」と怒られる。
なぜかカラス達は怒られない。長期の入院を見越してのことなのか、治らないためか。或いは両方か。
その精神病院は呆けた老人も入院する。精神病院としては珍しい方だと思う。まるで姥捨て山だ。
もちろん千絵と年齢が近い人や、話の合う人、様々な年齢層の様々な病気を抱えた人があふれかえっている。不思議と覚せい剤をやっている人間はいなかった。
病院自体が断っているのもしれないし、たまたまなのかもしれない。
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