第20話 旅立ち

 半年は経ち、ようやく生活も落ち着いてきただろうか。

 モコの様子がおかしい。身体を痙攣させ、口でようやく息をし、舌が紫色になっている。本来健康な猫であれば口呼吸はしない。

 深夜だったため即、夜間病院へ連れて行った。

 

そこには人間より大きな犬が熱中症で大の字になって、その犬によく似た家族四人に支えられていた。

 モコの病名は定かではないが、恐らく拘束型心筋症こうそくがたしんきんしょうの可能性がある為、翌日昼間病院へ連れて行き診断名を煽ることとなった。


 翌日改めて検査をしてもらう。「拘束型心筋症ですね。余命は三か月から半年でしょう」眩暈がする。現実が受け入れられない。


 キャバクラはしばらく休んだ。いつモコの発作が起きるかわからないからだ。

 その間何度も繰り返し入退院を繰り返した。発作は二日に一度は起こり、近所の人に土下座をして入院費を借りたこともあった。

 モコがいない生活等考えられない。

 黒井から裏切られ、モコまで居なくなったら自分がどうなるか分からない。

 今唯一の楽しみはモコとビールとマタタビで乾杯することだ。


 ある朝モコがまた発作を起こした。ちょうど半年が経っていたが、また戻り、共に乾杯ができると思っていた。いつもより激しい発作が起き、急いで病院に連れて行く。

 病院では人がごった返していたがモコを優先して診てくれた。

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