第16話 決別

 今思い出すとあの時、キャバレークラブで働き、猫二匹と過ごした日々は人生で一番幸福だったかもしれない。

 そこそこに人気もあり食べるものにも困らない。暴力を振るう男はいない。


 しかしキャバレークラブからの帰り道、知らない男に拉致をされた。その男はヤクザだった。外には見張りがいて外に出られない。携帯電話は取り上げられていた。

「家に猫がいるんです、お願いします、私はどうなってもいいから」という願いはようやく聞き入れてもらえ、大介という男の家で二人と猫二匹で暮らすことになった。

 

大介はアルコール依存症で暴力も振るう、レイプもする。

 良い所を見つけようと努力はしてみたが、見つからない。


 キャバレークラブは辞めさせられ、ラーメン屋で働いていた。出勤退勤は見張りが行う。

 大介の嫉妬深さは尋常ではない。勤務時間まであと一時間しかないのに焼酎を瓶ごと一気飲みさせられることもあったり、悟と本気で身体の関係があると思い込んでいたり、大介の妹も同じような性格をしており身体を押さえつけられ焼酎を無理やり呑まされた。

 

しかし大介の父は借金から子供たちを守るために自殺をした。大介がそのような性格になったのは必然なのだろうか。(結局大介の母親が保険を解約しており、大介の父は無駄死に終わった)ラーメン屋はクビになり千絵は日々疲れ切っていた。


 ある日大介の父の墓参りに長崎まで行くという時変わらずに酒を呑まされ、千絵は酔っぱらっていた。

 もう限界だと思っていた千絵は満タンに入った焼酎瓶で大介の頭を割った。

 大介は千絵がそんな行動を取らないか、自分に惚れていると思っていたのだろう。

 頭から血を流し泣いていた。


 千絵は逃げ出し、敷金礼金がいらないアパートメントを借り、再びキャバクラで働き始めた。


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