第11話 引っ越し
横尾の言葉はした千絵にはそれ程響かず、あれから何度も自殺未遂をした。
正しくは生きることをやめた。
それは、飯を食べないから始まり、外に出ない。人との交流もやめた。
まるで廃人だ。
悟は仕事帰りにコンビニ弁当を千絵に買って帰ったが手をつけなかった。悟には悪いことをしていたと思う。
だが自分を責めるたびに確実に死に向かいたくなるのだ。
十九歳になり、金が貯まった千絵は二人人暮らしを始めた。佐奈子という友達が誘ってくれたのだ。自由を手にした気持ちになった。
重い手錠が手足から外れたようだ。遊覧船に揺られている、そんな気分になった。
行き先はなるべく遠くと、福岡県に決めた。佐奈子は飲酒運転を起こし、親にばれずに金を返すために風俗で働くと決めていた。
千絵は麻雀屋とキャバクラで働いた。
麻雀屋は泊まりも多く、夜にはカーテンを閉めて仮閉店時には密やかな客が来て、徹マンをする。三日家に帰れない日にもあった。
徐々に慣れていき、客からなぜか「花子」と可愛がられた。
ちなみに麻雀のやり方は全くらないままだ。
佐奈子も千絵も酒が好きで、よく呑みに連れて行ってくれた。食欲も戻ってきていた。
全てが滅茶苦茶で、だだただ楽しい毎日だった。テーブルの上には貯金箱が置いてあり、千絵がご飯を作ると感想とともに貯金箱に五百円が入る。
それは食費で、節約料理に奮闘していた。
麻雀屋を辞め、キャバクラ一本でやっていこうと決める。
その頃千絵はキャバクラでも十分やっていける顔になっていた。
佐奈子は美しく、男好きのする顔だ。
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