第6話 別れ

 朝の五時からパチンコ屋の台の清掃、八時からホテルの客室清掃、十二時から高速道路のパーキングエリアの売り子、五時から学校、九時からスナック(本来はタブーであるが)帰って母にご飯を少しでも食べさせ、オムツを交換する。

 時は目まぐるしく過ぎて行き、母は立つこともできなくなっていった。


 ぴったりと三か月で母は亡くなった。アルバイトから帰って仮眠を取ろうと思ったら父が「母さんがおかしいから救急車を呼べ。父さんは仕事に行く」と言って新聞配達へ出て行き、母を見ると明らかに亡くなっている。


 しかし、もしかしたら、と思い救急車を呼んだ。すぐに救急車は到着し母の目を開け「見てくださいよ、どう見ても死んでるでしょう」と一喝し帰ってしまった。

 何とも冷たいものだ。泣きながら悟に電話をかける。

「兄ちゃん、お母さん死んじゃった。助けて」

 

悟は仕事中であったが「わかった。すぐに帰るから待ってろ」と答えた。

 逞しく感じた。

 対して父は妻が亡くなっても仕事を成し遂げることが美化される世代なのだろう。

 どこかで聞いたことのある話だ。まさか自身に訪れるとは思いもしなかった。

 

悟が帰宅するまでの間、母の亡骸の横で膝を抱えてただ泣いていた。

 悟が帰宅し思い切り泣いた。恐らく人生で一番涙を流しただろう。

 悟は警察を呼んだ。自宅で人が亡くなると事件の可能性があるために警察を呼ばなければならない。

 警察は母を雑に見て、パトカーの車内で取り調べを行った。

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