第4話 劣等生へ

 中学生に上がる頃には父の暴力は止まった。

 或いは悟に力で敵わなくなったか、アルコール依存症による体力減少だろう。

 朝になると震える手で安酒を呑み、自身を鎮める。なんとも惨めで情けない姿だろうか。


 千絵は虐めから逃れる為に劣等生となった。所謂不良だ。

 髪の色を抜き、学校へは家に飯がないため給食を食べにしか行かす、他の劣等生とカラオケばかり行っていた。それは必然とさえ思う。


 初めて彼氏というものができた。相手は高校生で憧れていた兄的存在だ。

 千絵は同級生よりはるかに大人び、美しく成長が見られた。


 だらしなく乱した制服はコスプレ衣装だと笑われた。

 中学生の千絵に高校生の彼が告白してきたのも納得できる節はある。


 いよいよ給食を食べに行くのも教師に憚れるようになった千絵は考えた末、売春の斡旋を始め金を稼いだ。

 やっていることは至極単純で、金を稼ぎたい女を集め、出会い系サイトに募集する。

 どこどこの駅に何色の車と支持を出す。持って帰ってきた金を半分貰う。

 女たちには「リスクを伴っているのだから当然だ」と納得させた。


 勿論彼氏には秘密にしていた。

 結局その彼氏とは四年で破局。千絵は遊びたい盛りだった。

 家ですっかりと筋力は落ち、酒浸りの父を見るのも嫌だった。家に居たくない。

 稼いだ金は全てカラオケ代か食費となった。

「これでいい」と思っていた。これからのこともろくに考えずに。

 反して悟は優等生になり、虐めは続いた。

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