隠されていた?真実
野蛮だと 思った部族 生家かな
アルフォンス・アーネスト(10歳)心の一句。
どうやら俺が思っていた以上にこの世界は平和だったらしい。侮りがたし異世界転生。
だが待って欲しい。
どんなRPGでも取り敢えず魔物と戦うじゃん?
街や村から1歩でも外に出るとそこは
この世界の一般人が普通に日々戦っていると思ってもおかしくはないだろう?
って言うか産まれた環境が違いすぎるのがいけないんだ。
ウチじゃあ畑仕事に行くのに武器を携行するのは常識だし。何なら剣とか槍とか弓とかは農具扱いだ。
パン屋の息子のスティーブ(6歳)とか普通にゴブリンをシバくんだぜ?
「くっくっくっ。いやぁ世間知らずは怖いなぁ坊ちゃん?ま、良い勉強になっただろ?」
「うっせぇ。分かってたんなら教えろよ。」
広場に向けて走り去ったガブリエルを追い掛けながらクーガーに文句を付ける。
「ははっ。何言ってんだよ?もし仮に、1人でゴブリンを倒せれば軍人でも上出来な部類に入るだとか、魔物を自分から狩りに行くなんて冒険者でも珍しい部類だとか言っても何か変わったか?」
そ、そんなレベル低いのか?
どんな縛りプレイだよ!?
……あー、でもそうだな。
「―――きっと何を言われていたとしても、俺は同じ事をしただろうな。」
「だろう?きっと貴方は何も変わらない。どうしようもないくらいに貴方はアーネストだ。必要だと判断した事を果断に行う。誰がなんと言っても、さっきみたいに王子達を魔物の前に投げつけただろ?」
「ああ。でも、そうするしかないならするべきだろう?俺じゃなくても皆そうすると思うんだが……。って言うかそんなに皆戦わないものなのか?」
それが俺には分からない。
元日本人のゲーマー的にも有り得ないだろう。
「それが出来れば苦労しねぇよ。『隠形暗師』だ何だと言われちゃあいるが、俺でもまともな戦闘をすることはほぼねぇんだぜ?。」
王族特務の特殊部隊隊長であるクーガーですらそんな感じなのか!?
こ、こいつは不味いんじゃあないのか……?
だって、もしこのままストーリー通り進めば5年後には魔王が復活するんだぞ?
この世界のレベルという概念がどうなっているのかは知らないが、話を聞いてる感じよくてレベル10とか20くらいか?
柔よく剛を制すとは言うが、その反対に剛よく柔を断つとも言うしな。テーブルに乗っかるくらいの最低限のステータスは必要だろう。
「王国軍の訓練は必須だな。何なら全軍を帰らずの森に突撃させたい……。」
「くはははは!やっぱり坊ちゃんはアーネストだ!」
お前にとってアーネストって何なんだよ……。
―――演習場の広場は散々な事になっていた。
散開していた
少し離れた物陰からガブリエルが何本もの魔力回復ポーションや体力回復ポーションを口に咥えながら魔法を放っていた。
ウリエルとミカエルは―――いた。
ガブリエルの後ろで控えている。
手にはいくつものポーション類を持っているから兄であるガブリエルをフォローしているのだろう。
「大したもんですよ。魔力を使い切る倦怠感と、無理矢理魔力を回復させる不快感は訓練された軍人でもキツいって言うのに……。」
感心した様子で
彼等も何かあれば直ぐに駆け付けれる様に臨戦態勢だ。
なるほどね。普通のゲームにはない設定だ。ゲームがリアルになった差がそう言う所に現れているのか……。
0歳から無属性魔法の身体強化魔法を使い続けて魔力を鍛えた俺には縁のなかった話だな。
ゲーム的に言えば、ガブリエルは少しずつレベルが上がっているのだろう。
最初のうちは1発撃つのにもポーションを飲みながら魔法を放っていたが、次第に1発、2発とポーションを飲む間隔が伸びている。
「悪くはない。……けど、少し遅いな。」
今のクーガーとの会話で改めて気付いたことがある。
この10年間色々確認もしたし、この世界がドキめもを現実にした世界と言う事は疑いはない。
邪神もそう言っているしな。
そしてそれ故に、俺はこの世界では変な認識の差が存在することを確信した。
ファンタジー風に言えば呪縛と言ってもいい。
自分より強い敵?
そんな圧倒的強者を打倒して、人類は文明を築き上げてきたのだ。人間が絶滅させて来た生物の中には、人よりも遥かに大きくて強い生物も多くいたはずだ。
ステラー海牛やマンモス何かが良い例だ。
彼等は人間の知恵や勇気……いや、この場合は策略と強欲さか?まぁそんなものに絶滅させられた。
しかし、この世界の人間はそんな事はしない。
何と言うか発展性が極端にないのだ。
何もまともに戦わなくとも、餌に毒を入れれば良い。罠のひとつでも張って怯ませればいいんだ。
1匹の魔物を倒すのに10人、20人でパーティを組んで倒したっていいはずだ。
ここは現実。システムの限界なんかないんだから。
だが、彼等はそんな事はしない。出来ない。
何より思い付きもしない。
そう。これこそがこの世界にかけられた呪縛だ。
一言で言うなら、これはゲームを現実にした弊害なんだろうな。
今のガブリエルの戦い方が良い例だ。
単に真っ直ぐ魔法をぶつけるだけ。
戦闘で奇襲こそしても、戦う前に毒殺する事も謀殺する事もしない。相手を罠にかけたり、騙したりもしない。
あれだけ強い軍人であるパパンとママンの戦いを見ていても、この呪縛の影が見え隠れしている。
何と言うか、根本的な所で真っ直ぐなんだ。
まるで取れる行動が決まっている、アクションゲームの戦闘みたいに。
パパン曰く、魔法はこの世界を意のままに操る技術。
ならもっと自由な発想で戦えるはずなのだ。
こんな何でもありの摩訶不思議パワーがあるんだ。火の玉を飛ばすだけじゃあ勿体ない。
「中々精が出るじゃあないか。ガブリエル。」
魔力枯渇とポーションによる強制回復を繰り返しているせいか、青白い顔をしてるガブリエルに声をかける。
「アルフォンス・アーネストか……。確かにお前の言う通りだったよ。頭はフラフラ、さっきから何度も吐いて気分は最悪なのに、身体がやけに軽い。まるで1匹倒す度に身体の重りが外れていく様だ。」
おそらくゲームで言う所のレベルが10を超えて普通に戦えるようになったくらいか?
「そのうち病みつきになるさ。」
「そうなりそうで怖いよ。……だが、後で1発殴らせろ。それで今回の件はチャラにしてやる。」
「ったく。8つも年下の俺に何を言ってんだよ。
―――ま、やれるもんならやってみな?」
さっきから足元が覚束無いくらいに疲労している癖に、やけにギラギラした目でガブリエルと野蛮に笑い合う。
「さて。今日の所はここらで切り上げよう。」
粗方弱そうな魔物は処理出来たが、逆に言えば強い奴らはしっかりと残っている。あのレベルを戦わせるのはガブリエルには少々酷だろう。
そう言って俺は右手を突き出す。
世界の呪縛はきっと根深い。
こんな事を思っている俺ですら、こんな戦い方を最近まで思い付かなかったくらいだ。
「
その瞬間、俺の前方500m四方の空気が消滅した。途端に苦しみ出す魔物たち。
そう。こうなればレベルなんて関係ない。
わざわざ大きな火の玉を作って当てるより、遥かに簡単だ。
待つこと数秒。次第に魔物達は倒れ出し、そのまま動かなくなった。
ポカンとした顔をしたガブリエルに俺は笑いかける。
「魔物と言っても生き物なんだ。殴れば怯むし、切られれば血を流す。足が折れれば動けなくなるし、高い所から落ちれば昏倒するし下手すれば死ぬ。空気がなくなれば大抵の魔物は殺せるよ。」
そう言いながら指を鳴らすと、風が舞い大気バランスが元に戻る。
「参考になったか?こうやれば簡単に――」
「出来るか馬鹿野郎!どんな大魔法だ!?」
ガブリエルに怒られる。
あれ?おかしいな。
俺の予想では目からウロコな感じになる予定だったのだが……?
と言うかコイツ、どんどん口が悪くなってないか?ヘタレな病弱キャラはどこに行ったんだ。
「アルフォンス。言いたいことは何となく分かるが、魔法の規模感が違い過ぎて全く参考にならないな。」
「やっぱりアーネストだよな……。」
ミカエルが突っ込み、クーガーが遠い目をする。あっれー?
「ふー。何となくお前という人間が分ってきた気がする。……これから俺様が色々教えてやるから無理はせず少しずつ慣れて行こう。」
何だか優しいウリエルの生暖かい視線が痛い。
くそ。この俺がウリエルの器の大きさを感じて劣等感を感じているだと!?
慣れるってなんだ?常識?常識なのか!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます