そして遊びは終わらない
ナビィから聞いた話を総合すると『ドキドキめもりある』はオーソドックスなオープンワールドのアクションゲームである。
広大なフィールドをプラプラ歩いていると向こうから敵がやって来てそのまま戦いになると言う、モ〇ハンとかブレ〇イとかエルデ〇リングみたいな感じの戦闘システムだ。
この手のゲームによくある様にキャラのレベルもあるらしいが、それよりもプレイヤースキルが物を言うゲームと言えよう。
それ故にむしろ戦闘は極力避け、武器の損耗や無駄な体力消費を避ける方が効率的だ。
そうでなくとも不意打ちにはクリティカルボーナスが着くみたいなので、物理職だろうが魔法職だろうが最低限の潜伏能力は必須だし、そもそも移動=潜伏と言う認識で間違いないはずだ。
「確かにママンの言う通りだな。ドキめもは潜み隠れて移動して、相手に見つかる前に確殺する
屋敷にある自分の部屋の真ん中に鎮座されたベビーベッドでくつろぎながら、先程飲みかけていた哺乳瓶のミルクをぐびぐびと飲む。
生後数ヶ月の愛くるしい赤ん坊と殺し合おうとするなんて全くどうかしてるぜ!
そんな凶行にいちいち付き合う義理もなければ義務もない。
かくれんぼがスタートした瞬間にさっさと
『oh......。全て私の受け売りじゃあないですか。まぁ知識の伝承とは即ち模倣からですし、悪くはないのですがそこまでドヤ顔を決められるとは……。』
うるさいな。ちょっとくらい良いだろう?
そう!実は既にこの1ヶ月で俺は
切っ掛けは数週間前にパパンに教わった魔法の基礎理論だ。
……………………………
………………
『良いか?アルフォンス。魔法を使う上で最も大事なのはイメージだ。』
そう言うとパパンは自分の五指に徐々に魔力を込めて行く。
そうすると指の先に炎や水、風、土のビー玉位の塊が現れた。
『呪文や魔法陣、杖を始めとした数々の魔法媒体、そして数多の魔法理論が存在するが、その根幹にあるのは術者の想像力を補強する為の補助器具であり、増幅器でしかない。』
話しながらもパパンは指の先に生まれたそれぞれの属性の塊を操作する。塊は大きくなったり小さくなったりしながら次第に部屋中を飛び回る。
す、すげぇ!流石は王国軍の魔法特務大佐!
パパンは見た目こそムキムキマッチョの戦士体型だが、実は軍でも指折りの魔法使いだ。
正確に言うならば魔法使い寄りの魔法戦士らしいが。
飛び回る塊は次第に鳥や龍に姿を変え、部屋を縦横無尽に飛び回る。実に幻想的な風景だ。
『究極的に言うなれば、魔法とは即ち、己の意思で世界を改変する技術に他ならぬ。』
己が意思で世界を掴んで見せよ。
そう言いながらパパンは、豪快に笑いながら大きな手で俺の頭を撫でてくれた。
………………
……………………………
俺の中の潜伏のイメージは閉じた空間だ。
自分を中心に数メートルの空間を切り取り、その空間ごと周りの風景に溶け込む事で視覚的にはもちろん、匂いや音すら欺き、果ては気配等を完全に遮断する結界を作り出すのだ!(尚、あくまでイメージの為、実際の効果は不明。)
何度かマーサ相手に試して見たが一応は潜伏ハイド魔法としての効果は確認出来たので多分大丈夫だろう。
ナビィも問題なく発動していると保証してくれたしな。
『YES、Master!実に筋が良いです。前世での迷彩や遮断といった科学知識が功を奏していると推測します。科学と魔法は案外と親和性が高いのかもしれません!実に興味深い!』
「しかもママンは庭でかくれんぼって言ってたしな。まさか俺が開始早々に自分の部屋に戻って来ているとは思うまい!
かくれんぼ開始から既に25分!無意味に庭を探しまくるが良いさ!ふはははははははは!」
まぁ30分過ぎたくらいにこっそり庭に戻れば大丈夫だろう。
バン!!!
…………へっ?
「いるなぁ?アァルフォオンスぅ…。」
吹き飛ぶんじゃないかという勢いでドアが開き、そこには鬼の様な凄惨な顔をしたママンが立っていた。
う、嘘だろ!?
視覚どころか匂いや音も消す遮断結界(あくまでも俺のイメージ)だぞ!?
ち、ちくしょう!やはり俺のイメージが足りてなかったのか!?
「くっくっくっ!実に見事な
とても生後数ヶ月とは思えん!ほぼ完璧に姿形、匂いや音、魔力反応に至るまで隠蔽されている。だがなぁ!!!」
シャオン!と流麗な音を立ててママンが腰にさげた剣を居合の様に振るうと結界が音も建てずにベッドごと両断される。
ま、マジか!?
「お前の周囲の空間まで隠蔽したのはやり過ぎだったな。
だから逆に目立つのだ。私の感覚には、この周辺だけぽっかりと開いた穴のように感じる。」
どんな超感覚だよ!?
庭からここまで何百メートル離れてると思ってんだ!?
「私の記憶が確かなら、かくれんぼは庭でやると言っていたはずだな?アルフォンスぅう?」
や、やべぇ!こ、殺される…!
あまりの恐怖にママンの顔も見れず、堪らずギュッと目を瞑った瞬間―――。
「素晴らしい!!」
女神のような慈愛をたたえた笑顔で、ママンは優しく俺の頭を撫でてくれた。
………へっ?
「このかくれんぼ、何をどう考えても私と勝負など成立はしなかった。まぁ私としては単なる遊びのつもりではあったのだが、お前としては違ったのだな?そして勝つためにお前はルールと言う盤上をひっくり返した。」
え、あー、うん。まぁそう言う捉え方もある…かな?
「状況に対処するだけではなく、さらにその先、状況その物を支配しようとする。くっくっくっ。実に戦略的な動きだ。流石は我が息子。アーネスト家の未来は安泰だな。」
えっと、つまり許された…?
「しかし――。」
俺の頭を撫でていた手に急に力が入り、ガシッと俺の頭が掴まれる。
え?え?あれ、どゆこと?ママン?
「有能な怠け者は、良い将校の条件とは言うがな?こうも見事にしてやられたとなると私の気がすまん。もう少しママに付き合ってもらうぞ?アルフォンスぅ?」
やっべぇぞこれ!ママンの目が笑ってない!
「な、なんで!?勝ったのはママだろ!?」
「はっはっはっ。小さな勝ち負けに拘るな。アルフォンス。
有能な若者を見ると鍛えたくなるものだ。それが我が子ならひとしおだな!」
離せ!はーなーせーよー!!
その後、日が暮れるまでガッツリかくれんぼ(魔法・武器あり)をした。
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