お茶会

 アランが騎士に選ばれてから、寝室から出るとアランが付き従うようになった。ジーナは、寝室でも一緒だった。そして、ミリアはクレアとレイアの騎士は、すでに鬼士となっている事を知った。

 城での一日は暇だった。戦争が無い限り、唄姫にすることは無く、何をするのも自由だったが、ミリアは暇を持て余していた。そんな時、クレアとレイアからお茶会に誘われたのだ。

 城の中庭には庭園があり、色んな花が植えてあった。季節は春だったので、春の花々が咲き誇っていた。庭園の中の東屋で、3人の唄姫は綺麗なドレスを身にまとい。紅茶と様々なお菓子を食べながら談笑していた。

 3人のメイドたちは、唄姫に紅茶を注いだり、お菓子をとったり補充したりしていた。騎士のアランはミリアの後ろに立っていた。

「そいつがミリアの選んだ騎士か、なんか普通だな?鎧はつけないのか?」

「僕の流儀は回避重視なので、鎧は足かせにしかならないのです」

 アランは畏まって返事をした。騎士と唄姫では、唄姫の方が立場が上なのだから、敬語を使う必要があった。

「ふ~ん。シルトとは正反対だな」

「そうなんですね。シルト様は、どんな方なのですか?」

 レイアが話題をふったので、ミリアは何気なく聞いてみた。

「うふふ、シルトは、とても強いのですよ。どんな攻撃も弾き返してしまいますし、体が大きいから、いつもわたくしを守ってくださいます。でも、気性が荒いわけではなく、礼節を重んじ、激高したところを見たことがありません」

 クレアは、とても嬉しそうに話していた。

「あんな堅物のどこが良いのかね~」

 レイアは嫌そうな顔をしていた。

「あなたは、不真面目だから良さが分からないのですよ」

 レイアに否定されてクレアは反撃した。

「別に分からなくてもいいよ。うちにはウィルが居るし」

「そうですわね。あなたに似ていい加減な男ですものね」

「おいおい、いい加減なんじゃなくて、度量が大きいんだよ。細かい事を気にしない、そういうところに惚れたんだ」

 レイアも負けじと反撃した。

「お二人とも、鬼士の方を好いているのですか?」

 二人が自慢げに鬼士を褒めたたえる姿を見て、ミリアは何気なく聞いた。

「もちろんですわ。わたくしが世界で一番信頼している方です」

「当然!てか、お前はアランの事、好きじゃないのか?」

「えっと、まだ分かりません」

「まあ、最初は、そんなもんだよな。うちも最初は強さだけで選んでたしな」

(レイア様も私と同じ理由で選んだんだ)

「あなたは、そうでしょうけど。わたくしは違いましてよ。勝っても負けても相手への敬意を忘れず礼儀正しかったからシルトを選んだのです」

(クレア様は、自分の好みで選んだんだ。人それぞれなんだな~)

 ミリアは、他の二人との違いを認識して、安堵していた。騎士の選び方に正解は無い。そう言われたような気がした。

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唄姫は今日も、戦場で自分の為に死んだ騎士の英雄譚を唄い。その死に涙し鎮魂歌を唄う 絶華望(たちばなのぞむ) @nozomu_tatibana

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