第11話「男の子、女の子」
華は、真っ暗な自室のベッドの上に、倒れ込む様に寝転がっていた。もう何時間、そうしているだろう。体が怠くて動かない。
このままベッドと一体化して、何も考えられなくなったらいいのにと思った瞬間、数時間前に翔太に言われた事が頭に浮かんで来て、華は自然と涙が溢れそうになった。
『無理、ごめん』
この感覚は知ってる。昔、翔太と喧嘩別れした時と、全く同じ気持ちだった。
あの頃翔太と喧嘩別れして、散々落ち込んでいた時、父親に「男の子にはそういう時が来るもんだと」言われた事を思い出す。
あの頃は意味が分からなかったし、今も理解出来ない。したくもない。
他人の薄っぺらい、からかいの言葉なんかで、自分たちの友情が、簡単に壊れた事に腹が立つのだ。自分たちのこれまで培って来た時間は、そんなくだらない事に負けるのかと。
華はギュッと唇を噛み締めた。
ただ翔太が変わってしまった事は、自分にはどうする事も出来ないと分かってた。今はそこまで子供じゃない。でも悲しいと思う事はどうしようもない。
だから、もう翔太の事を思い出さない様に、自分の奥底にしまっていたのに。再び顔を合わせて、また話が出来て、昔の頃に戻った様で浮かれていた。
なんであの嵐の夜、連絡してしまったんだろう。本当に自分は馬鹿だ。勝手な事をして、勝手に傷ついてる。
あの日、メッセージなんか送らなければ、翔太のあんな顔を見る事もなかった。
「無理、ごめん」と呟いた翔太は悲しそうな、苦しそうな、全く自分の知らない大人な顔をしていた。
(もう何も、何も考えたくない……)
華は目を閉じて、自分に暗示をかける様に眠りに落ちた。
つづく
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