第7話「二度目の来訪」

 授業中、翔太は気になって華を観察していたが、船を漕ぎながらも何とか頑張って授業を受けていたので、華を少し見直した。


 昼休みになり、中庭でクラスメイトと昼食を取っていた時、スマホに華から着信があり、翔太はギョッとした。


(な、なんでっ)


 何となくクラスメイトに見られない様に、スマホのロック画面を解除して、華からのメッセージの内容を確認したが――


 その内容に、翔太はうなじの毛がこわばった。


 午後の授業になっても、華からのメッセージの内容が頭をぐるぐる回り、その事ばかり考えてしまう。


『翔太ちゃんって、彼女いるの?』



(なんで、そんな事聞くんだよっ)


 華の事だから絶対深く考えてないだろうと頭で分かっていたが、自分の心の動揺が制御出来ないのが、翔太は凄く嫌だった。


 何で動揺しているのか、考えたくなかった。動揺している自分を律する様に、動揺を華に悟られない様に、翔太は授業後すぐ華に返信した。


『いないけど』


 そのメッセージに既読は付いたものの、華からの返信はなかった。


(あいつ、何なの)


 翔太は華が家に来るまで、この事について悶々と考えさせられる事になった。


***


「こんにちはー」と華は制服のまま、携帯ゲーム機と充電器を抱えてやって来た。


「こら、ちゃんと仮眠する約束だろ」

「寝てきたよ、一時間くらい。本当だってっ」


 ムキになる華がちょっと可愛く思えて、翔太は呆れてため息を漏らした。


「夕飯までだからな」


「OK」と玄関先で笑顔で答えると華は、翔太の家に上がり込んだ。


 自分の部屋に華を招き入れる。翔太は夜中に華を自室に入れた時より、少し緊張した。だがその緊張は、すぐに掻き消えた。


 華が一目散に、ベッドに寝転がりそうになったからだ。翔太はカッと頭に血が昇った。


「おい、こらっ。ベッドに寝転ぶな!」


 今日は絶対許さんと、翔太は華の腕を掴んだ。


「えー。何でっ? 昨日は貸してくれたじゃない?」

「何でって……男のベッドに、簡単に寝転ぶなよ」


 言ってしまって、翔太はハッとした。小学生の頃、うやむやに別れた時の事が思い出される。絶対変な空気になると、翔太は慌てて咳払いをした。


 華は暫く翔太を黙って見ていたが、ごめんねと素直にベッドから降りた。


「よし。やろう、やろうっ。時間が勿体ない!」


 と、華はいつもの強引な華に戻っていた。翔太は正直その華の強引さにホッとし、体の緊張を解いた。


***


 それからは時間を忘れて、二人でギャーギャー騒ぎながら遊び倒した。まるで本当に昔に戻ったかの様だった。


 いつの間にか外が暗くなっており、気が付けば、夜の六時を回っていた。


つづく

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