プロローグ2 sideフェルキウス
欲しくて欲しくて堪らなくて
この渇きを数千年耐えてきた事は素直に賞賛したいが、今はもうそれどころではない。
あの子を待ってる間におかしくなったのは事実だが、人間なんぞ多少は何処かぶっ壊れているもんだ。
なんてことを言えば、悍ましいなどと言われるだろう。知ったことではない。
口が歪み、目が忙しなく蠢く。浮かれてるなぁ俺様ちゃんは。ここが馬車の中かつ、一個人が乗ってるだけで助かった。
業者は馬の面倒を見なきゃいけないワケだし? 此方を見る余裕なんぞない。
「兄さん! 目的地についたぞ!」
「オーライ、サンキューだぜおっちゃん」
俺様ちゃんは軽い足取りで馬車を降り、業者のおっちゃんに金の入った皮袋を渡す。
「おいおい兄さん、いくらなんでもこんな大金」
「貰っとけヨォ〜おっちゃん! 俺様ちゃん今気分が最高なんだよね。だから気が変わらないうちに、だ!」
「は、はぁ……そうかい。そんなの例のあんたの嫁さんに会えるのが嬉しいのかい」
おっちゃんはまだ不思議そうな顔をしてる。人の話を疑ってんな? かなしいこった! 少しぐらい信用してくれてもいいのになぁ?
「あぁそうだぜ? おっちゃんだって奥さんと出会った時、全身に稲妻が走ったようにビビッと来ただろ。俺様ちゃんもそう言う事だよ。それはもう、一目見て惚れた上に? 小さい頃虐められてた俺様ちゃんに寄り添ってくれた、とーってもやーさーしーい子! なんだぜ? おまけに再会の約束までしてくれた。これを運命って言わずになんと言えばいいかわかるかい?」
「いや、わからんが? 御者だし」
「俺様ちゃんもしがない一企業の社員だからな〜! さて、行ってくるでおでお」
るんるん気分で目の前の建物――木製の西洋式廃工場を見つめ、中にいる彼目掛けて愛を囁いた。
「待ってろよ
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