祝融

塩見佯

祝融

咲く花の数だけ枯れる花があり火葬場で君に輪舞を踊る




胸骨の奥の廃墟を文月の花火のように照らす面影


這うように歩き続ける塩害の街の陽射しは常に逆光


感情に重さなどなくひとごとにただ致死量のさだめだけある


時として手の中にある夕焼けは流れて落ちる祈りに代わり


あの日あなたが燃やした写真わたしのわたしたちのためだけのひかり


わらいなきねむりめざめていきをする あなたのかけた呪いを生きる


約束も理由さえなく月は満ち心臓はまだ動いてゐる


(救われるな救われるなこんなことで救われるなこんな)  逃げるな


屠畜場の羊の声で目を覚ます火曜日の午後、冷蔵庫を壊す


つかのまの糧を獲るため野を焼いて振り向けば虹、塩の尖塔


癒えぬまま傷みつづけて想い出になることもない光の残滓


翔ぶものはすべてあなたのたましいで横顔に似た揚羽を潰す


ふりつもるふりつもる、意味、灰、秘密、(あなたの言葉)、(息が苦しい)


蟋蟀のようにふるえるありふれた夜はあまりにあま、りに、 も 、、


暗闇に過日を抱けば焼き過ぎた日焼けの肌の熱の気だるさ


だれの手もとどかないからうつくしく目をとじて見る赤色の星


こもれびに触れてしまったことがある ただひとときの水辺の記憶


暮れ残る熟れることなき姫林檎の実 いっさいはもう、過ぎたことです




もういちど眠って夢で花束を燃やす七月、降り続け雨

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祝融 塩見佯 @genyoutei

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