箱庭の残骸
志都花
箱庭の残骸
モノクロの制服を着てする恋のなんと鮮やかカレイドスコープ
ささくれのように君のさよならが心にかかる冬ざれの日
砂粒の一つになってサンダルにひそんで君に連れてかれたい
二人してひとりきりの短夜に静かの海の波の音を聴く
神様は味方だろうか他でもない雨に君と閉じこめられて
まだ君と無関係な点のまま星さえ線で結ばれるのに
ああ私また少しだけ大人になる誰かに上手に嘘をつくたび
あの月に夜行バスは走らない欠けた部分に秘密を埋めよう
読んで書き覚えて忘れてどうするのどうしたいかも忘れてしまった
答えのみ教えてくれる人だけは間に合っている十八の夏
ラムネ瓶この掌の中に海があり飲み干してなお遠い憧れ
恋をしている唇と知りながら奪ってみたい食欲の秋
星の名を教えてくれた唇を運命と呼びたかったのだと
呼び方も会う口実も分からずに影踏むばかりの恋をしている
飾るための鱗など脱げ人魚さえ二本の脚で立つと選んだ
箱船があればほんとのふたりきりつくれるような氾濫の夜
さあここで共犯者の恋をしようミントブルーの風が吹いたら
「月が綺麗」手垢のついた翻訳はいらない君の辞書を開いて
夏の夜の夢とは消えないつけられた傷のありかは正しく知ってる
「まだ十八」「もう十八」のわたしたち涙の色はただの十八
箱庭の残骸 志都花 @sizuka0716
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