帰還

2069年11月3日

北桜駅周辺の老アパートで殺人事件が起きた。

被害者は24歳男性。加害者は18歳の女子高生。

彼女は現場で泣きながら笑っていたらしい。

「なんだよこれ」

あまりの衝撃につい口にして出してしまった。

つい昨日まで言葉を交わしていた人間がいきなり犯罪者となれば無理もない。だけど違う。俺はどこかでこの事件が俺のせいであるのではないかと考えた。考えたから願った。

”過去に戻りたい”と

まるで漫画のような展開を心から願った。それも淡い期待で現実から目を逸らそうとする自分を正当化しているようだ。はあ。

「じゃあなー澤田」

「おう、また明日」

今日も普通に学校を出て普通にバイトに行く。変わったことといえば、クラスメイトのギャルの事件も誰も触れようとしない雰囲気だけがただただ重かった。それだけだ。それだけなのに、前が見えなかった。駅のホーム、黄色い点字ブロックの手前で俺は再び罪悪感に犯され涙が込み上げてきた。

〜まもなく列車が到着します。黄色い線の内側でお待ち下さい〜

アナウンスのお陰で少し気持ちを切り替えれた。少し荒くなっていた呼吸を整えスマホを見た。

「え」

瞬間、俺の体は軽くなった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なぜ。 えでぃ @eddie_zZ

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ