第三章 僕と彼女たちと歪み始めた音と
第34話 僕と彼女たちと僕との関係と
「ん……」
翌日、僕はバイクの走行音で目を覚ました。
日曜日の朝から五月蝿いな……。目が覚めちゃうだろ……。うーん、でもまだ眠いし、二度寝するか……。そう休日を謳歌するべく、寝返りを打とうとした時にいつもと違い体に温もりを感じ、その違和感に薄らと目を開けると僕の瞳に一糸纏わぬ姿で僕の胸の中で眠る梓の姿が写る。
「!?!?」
あまりの衝撃に眠気など消え去り、慌てて跳ね起きるも、そこで昨日の夜の出来事を思い出した。
……そうか、昨日僕は梓と……。
気付いて僕は頭を抱える。
……明らかにやらかした。
僕がウンウン唸っているのに気付いたのか、梓が目を覚ました。
「蒼熾くん、おはようございます」
「えっ、ああ、うんおはよう」
いつもと変わらぬ様子に梓に少し戸惑いながらも返事をする。
「朝ご飯作っちゃいますね」
「あっ、うんお願い」
まるで何事もなかったかのように彼女は僕の部屋を出ていってしまう。
彼女の提案に乗ってしまった僕だけが悩んでいるのか?ベッドの上で正座をして考え出すと、先程出ていった梓が戻ってきて僕のことを抱きしめてきた。
「蒼熾くん、好きです」
「……」
「……この家の中だけでもこうしてもいいですか?」
梓の犯罪的な上目遣い。……やっぱり断れないよな。
「……ああ」
「それじゃあキスをしても?」
「……どうぞ」
たった一秒にも満たない短いキス。それでも彼女は満足したのか、上機嫌そうに僕の部屋を今度こそ出ていった。
彼女の作った朝ご飯を食べて自分の部屋に戻ると、スマホに遥香からメールが来ていた。
『二上さんの体調どう?』
そういえば昨日仮病だったんだよな……と思いながらもそれを言うのは何か違う気がしたので、梓の体調は大丈夫そう、昨日はごめんとだけ返信して机の上にスマホを放り出す。
僕自身はベッドに身を投げ出して昨日僕が抱いた違和感について考え始めた。
僕は一年前から梓のことが好きだ。それは間違いない。
それにも関わらず昨日の夜、僕が彼女の言った彼女の家の中だけでの関係というのを否定して正式にお付き合いをするという話に持っていけなかった理由、それは僕は遥香のことも好きだからなんだ。
遥香と別れたときに僕のどこかに未練が残っていたのか、それともセフレという関係を続ける内に好きになっていたのか、それは定かではないが。
どちらとも付き合っていないとはいえ、体を重ねてしまっている。それに少なくとも人には言えない歪な関係だ。二人から好きだと言われたが、それに対して僕は何も答えられずに曖昧なまま。
僕は一体この先どうしていくべきなのだろうか?
梓、遥香と結んでしまった歪なセフレ以上恋人未満の関係を。
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取り敢えず近況ノートにも投稿した通り、第三章からも不定期更新となります。
どうしても文化祭で書きたい描写があるのでそこまでは頑張りたい……。
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