第27話 僕と彼女たちと前哨戦と
翌日、梓と一緒に遥香との集合場所に向かおうとしたら、サプライズで服は見せたいから先に行っててと言われたので、僕は一人先に向かい、駅前に立っていた。
「おはよう、蒼熾」
「ん、おはよう遥香」
何の悪戯もせずに普通に背後から現れた彼女は紺色のパフ袖ブラウスに青色のデニムパンツという服装。
遥香に何か言われる前に前回学んだことを伝える。
「可愛い系か……。こういうのも似合ってて遥香っていう感じがしていいな」
「……ありがと、それで二上さんは?」
僕の素直な賛辞に照れたのか顔を逸らす。
「先に出ててって言われたから分からないけど……そろそろ来るんじゃないか?」
スマホで時間を確認すればもう五分前。
準備で手間取っているとしたら連絡が来るだろう。
「お待たせ、蒼熾くん」
「ああ、別に全然待ってないから大丈夫d……」
僕は後ろを向いて思わず息を呑んでしまった。
そこに立っていたのはザ・清楚系と言える水色のワンピースを着た梓。いつも見ている彼女のはずなのに全くの別人のようだった。
羽原はなんで浮気をしたんだ……。
梓のことを見つめたままの僕の頬を遥香が引っ張る。それで現実に僕は引き戻される。
「どう似合ってるかな? 蒼熾くん」
「ああ、似合ってる。なぁ遥香」
「えっ、私? ……うん可愛いと思うよ」
「良かったです。ありがとうございます」
そこで僕はふと気付いた。
「ああ、というか梓と遥香の二人って直接対面して話したことあるっけ?」
「……多分ない」
「特に面と向かって話したことは……」
クラスの中心人物の二人と言っても差し支えない二人だが、そういえば話しているのを見たことがない。
僕の意図を察したのかお互いに自己紹介をしだす。
「立花遥香です、今日はよろしくお願いします」
「二上梓です、こちらこそお願いします」
短く固い挨拶を交わすとじぃっとお互いを見つめ合い始める。
「ああ……なんかごめん。二人とも取り敢えず移動しようか」
二人の間に流れる気まずい空気を感じ取ると僕は彼女たちの間に入った。
「そうね……行こう、蒼熾」
遥香は僕の手を掴んで僕のことを引っ張っていく。
「あっ……」
その場で一人取り残されてしまったからか声を上げた梓の手を掴む。
「ほら行こう」
「……はい」
「……嫌だったら離すからちゃんと言ってくれよ」
「嫌じゃないです……」
「そうか」
彼女はそれを示すように僕の手をキュッと握ってきた。
隣から黒い視線を僕は感じて、遥香の方を向く。
「遥香……?」
「こんなんで動揺してたらこの先持たないよね……うん、ちょっとは我慢しなきゃ……」
「遥香、遥香、どうした?」
「うん? 蒼熾どうしたの?」
「いやなんか変だったから……」
「私はいたって正常だから大丈夫よ。電車も来ちゃうしもう行きましょ」
彼女は何事もなかったかのように再び歩き出す。
本当に大丈夫なのだろうか……。僕は早くも昨日抱いた嫌な予感に似たものを抱き始めた……。
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