第25話 僕と元カノと初めて知る心情と
そのように居心地の悪さをその後の昼休みなどにも繰り返し感じさせられながらも放課後になった。
授業が終わると同時に遥香が僕の元に来る。
そんな僕たちのことを無遠慮にジロジロと見るクラスメイト。
「……取り敢えず移動しない?」
「ああ」
流石にクラスメイトに見られていては、話しにくい事この上ないので彼女の提案に素直に頷き教室を出た。
僕の前を歩く遥香に静かに付いていき、遥香の家に上がる。
彼女がお茶を淹れてきて僕の前に座ると僕は話を切り出した。
「……遥香、今日の朝のキスはどういうこと?」
「どういうことって?」
「それはその意図が何かってこと」
「……意図ね……意図自体はあんまりないかな」
「ないのか……」
何の意味もなくキスをした。突然わざわざ学校、公衆の面前で?
遥香なら間違いなく、そんなことをしたら僕とそういう関係であると思われると分かっていたはずだ。
「うーん、でも強いて言うなら、勢いかな……」
「勢い……?」
何の勢いだ?直前に特に何かがあったわけでもない。ただ僕は陽介と話をしていただけだし……。
「ごめん、やっぱり意図あったかもしれない」
「……何?」
「……」
彼女はそう言うも僕の質問に答えずにしばらく黙って僕のことを見つめていた。だが、しばらくすると口を開いた。
「あのね蒼熾、蒼熾は気付いていないんだと思うんだけどね、蒼熾って女の子をダメにする成分を出してるの」
「……」
「そのどこまでも包み込んでくれる優しさ、それとその中に存在している暖かさに強さ。それらが生む絶対的な安心感。その全部が魅力的だし、全てが違法薬物みたいなものなの」
「……」
「このままだと、ううん、間違いなくもうその成分に侵されちゃってる女の子がいるの」
「……」
「だから私は手遅れになる前に手を打たなきゃだめだったってこと」
「……」
僕は黙って彼女の話を聞いていたが、いまいち何を言いたいのかが掴めなかった。
彼女の言っていることはなんとなくふわふわしている。
僕がそう思っていることを顔を見て理解したのか少し彼女は考え出した。
「ん〜、難しいな〜」
彼女はそこで一旦お茶を口に含む。
「蒼熾、それじゃあ物凄く分かりやすくしようか?」
「出来るならお願い」
「こういうこと」
彼女は立ち上がると僕の唇にディープキスをしてくる。
酸素が吸えずに呼吸が苦しくなってきたところで彼女は唇を離すと僕の耳元でそっと囁いた。
「あのね、蒼熾。私は蒼熾のことが好きだよ、ずっとあのときから、何よりも誰よりも」
「……」
ハッと彼女の方を見ると、その時の彼女の目はトロンと蕩けていて、ずっと見ていたらどこまでも引き摺り込まれてしまいそうな目をしていた……。
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