第二章 僕と彼女たちと何かが始まった音と
第22話 私と私の好きな人とあの日々と【立花遥香視点】
彼、蒼熾と出会ったのは中学一年生のとき。
入学式の日に貧血で倒れてしまった私を保健室まで送ってくれたのが蒼熾だった。
その後も一人図書館で勉強をしていた際に落としてしまった消しゴムを拾ってもらったり、たまたま同じになった図書委員で一緒に仕事をこなしたり。
そうして気付いたら彼のことを体育の授業中や、彼が友人と会話をしているときなどのふとしたときに思わず目で追ってしまっていた。
友達にそのことを話すとそれって恋じゃんと笑われながら教えられて、私は初めて彼に恋をしているということを認識した。
そして、これが恋ということを知ってからは蒼熾が他の女子と仲良さげに話しているのを見るたびにモヤモヤした。
それは独占欲、本当に恋してるね〜と微笑ましそうに相談をした友人に言われて恥ずかしくなった。
ただ、その当時の友人は優しくて何かと気を遣ってくれ、課外授業のときは私を蒼熾と同じ班にしてくれたり、その友達と彼氏さん、そして蒼熾とダブルデートのような形で遊園地に行ってくれたり。
今攻めないでいつ攻めるの?と言われて図書委員の仕事と称して彼を誘い、蒼熾と一緒に二人っきりで本屋に行った。
そのように背中を散々押される中で思い切って告白することを決めて、中学二年に上がる際に私から告白した。それが私の人生で最初で最後の告白。
屋上に彼を呼び出して告白をしようとした際に、考えていた言葉を全て忘れてしまった上に、緊張して何とかその場で考えて紡ぎ出した言葉も何度も噛んでしまい終わったフラれたな……と思い泣きそうになった私のことを抱きしめて実は僕もずっと好きだったと告白にOKをもらえた時は嬉しくて余計に泣いてしまった。
私が更に泣き出したせいでえっ?ごめん。抱きしめちゃってと慌てて離れた彼を見て思わず笑ってしまった。
そして最初のデートのときに、誕生日プレゼントと言われて渡された銀色のブレスレット。
初めて女子にこういうの渡すんだけど……こういうので大丈夫?と聞かれた際、私が初めてなんだ……よかったと思いながらありがと!嬉しいと彼に抱きつきながら腕に付けた。
それからデートのたびにそれは付けるようになった。
そんな感じで一緒にお昼ご飯を食べたり、手を繋いで登校したりして間違いなく毎日が幸せだった。……あの日までは。私が見知らぬ男に襲われたあの日までは。
あれはすっかり冬になり寒い寒いと言いながら塾からの帰り道、蒼熾と電話をしながら歩いていたときだった。突然、電柱の影から飛び出してきた男に襲われた。
電話をしながらだったので、私に何が起きているのかは分からないにしても、私がどこにいるのか、何かがあったということはわかったらしく家を飛び出してきた彼に救われた。
私の力ではびくともしなかった、私の体に覆いかぶさっていた黒い服で身を包んだ男をタックルで弾き飛ばした上で、彼は一人でその男を抑え込んでいた。
無事にその男は逮捕されたが、蒼熾くん以外の男の人に体を触られたということがショックだったのと病気がちだった私の母親の死が重なり彼に依存しきってしまった。
辛くて叫びたくて、もう訳もわからずに彼に私の初めてを奪ってグチャグチャにしてよと迫った。
その時、初めて彼に何かを拒絶された。逃げるように消えてしまった彼のことを追うことも出来ず、その後碌に話せずにいる内に彼はどこかに転校していってしまった。
彼がいなくなってからは私は塞ぎ込んでしまった。ただその当時の友達にも慰められ、私は今までの黒く長かった髪を切り明るく茶色に染めて、彼がいなくて寂しいという本心を隠してやたらと明るく振る舞うようになった。ただそれでも、どうしても蒼熾以外の男の人のことを考えられず男子には素っ気ない態度をとってしまうようになった。
そのようにして形成されたのが今の私、立花遥香だ。
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