第8話  僕と元カノの中間試験後の予定と

 結局その日はムードが壊れてしまったのもあり、それ以上何もすることなく解散し、翌日からはしっかり遥香の家で勉強に勤しんだ。


 そしてなんとか試験を乗り切った中間試験最終日の放課後。僕は特にすることもなく陽介とダラダラと会話をしていた。


「やっと終わったよ……。あと二ヶ月で夏休みだ……」

「そうだな、期末試験を挟んでだがな」

「一回テストのことは忘れよう、な?」


 先程の化学のテストが余程悲惨だったのかやけに切実そうだった。


「……忘れたとして夏休みすることあるのか?カノジョいないだろ」

「夏休みに作るんだよ!」

「……そうか」


 これ以上は言ってやらない。僕にも跳ね返ってくるような気がしたから。


 教室を見回してみれば、このあとのデートの予定を決めるもの、女子同士でスイパラに行こうと話すものなどしか残っていない。


「それでさ、お前明日暇?」

「ん、多分暇だけど。なんで?」

「二人でカラオケでも行かない?」

「えっ?二人でってまさか……そういう意味か?」

「違うわ。冗談だって分かってても殴るぞ。誘えるような友人がいるなら誘ってもいいけど」

「……別にいないからいい。ん?……ちょっと待ってくれ」


 スマホがメールの着信を知らせる。


 送り主の名前は遥香。メールの内容は短く


『明日二人で遊園地行かない?』


 というもの。脳内で遥香と陽介が天秤にかけられる。結果的に傾いたのは遥香の方。


「ごめん、たった今明日用事入った」

「マジで……、仕方ないか……。それだったら一人カラオケしてくるわ」

「ああ、ごめんな」

「いや、それなら今度でも埋め合わせしてくれよ」


 じゃあなと別れて家に帰る。


 羽原とデートにでも行ってきたのだろう、少し帰ってくるのが遅かった彼女と夕飯を取りながら明日遊びに行ってくるから担当だけど夕飯を作れないという話をすると彼女は僕に誰と一緒に行くの?と尋ねてきた。


「……陽介と」

「教室ではごめん、明日用事入ったって言って断ってたのに?」

「……」


 あの時教室に居たのか……。確かに教卓の近くにいた気もしなくはない。


「隠すってことは立花さんと?」

「……まぁ」

「デート楽しんできてね!」

「いや、だから遥香とは付き合ってないんだって……」

「またまた〜、下の名前で呼んでるんだから〜」

「……」


 僕が好きなのは君なんだ、だからそれは違うんだ……などと言えるのは漫画の世界の主人公だけだ。まぁ、この二人の恋路を邪魔することになるので主人公は空気を読んで言わない気もするが。


 僕のことをあらかた揶揄って満足したのか彼女は脱線していた話を戻した。


「私も明日デート行って夜遅くなるかもしれないから、夕飯は各々ってことで」

「了解。でも、もって付けるのはやめてくれな」

「え〜、お似合いだと思うんだけどな〜」

「どこがだよ、少なくとも釣り合わないだろ……」


 あの日、しっかりと彼女を支えられなかった僕は。


 彼女と別れると特にすることもなく時間としては早かったが布団に入った。なんだか妙な気分だった。


 楽しみなようでどこか怖いような……。

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