第14話

    ×    ×    ×

  美幸、ベッドの隣の椅子に座っている。

  落ち着きを取り戻した歩萌、美幸を見て、

歩萌「やっとうちの陸上部にもコーチが来てくれたんですね。部員が少なくて、私と悟朗ちゃ…久保君だけだったから」

  嬉しそうにそっと微笑む。

歩萌「それと、彪…」

美幸「アキラ君も頑張ってるわよ。少し手は焼いてるけど」

  歩萌、少し噴出して、

歩萌「ふふ…少しですか?」

美幸「まぁ、すこぉしばかり」

  お互いに笑い合う。


□同・ナースステーション・前

  彪が慌ただしく廊下を走っていく。

  彪の後を追って、悟朗もやって来る。

  看護師のカオリ、慌てて、

カオリ「ちょっと、危ないですから病棟内で走らないで下さい!」

  去って行く彪に呆れる。

  ゆっくり来る悟朗、カオリに向かって、

悟朗「ゴメェンです」

  頭を下げながら苦笑いをする。


□同・歩萌の病室・中

  歩萌と美幸、外の騒音に反応する。

  彪が勢い良くドアを開ける。

  彪、息を弾ませながら歩萌を確認する。

彪「……」

  歩萌と美幸、ア然とする。

美幸「騒がしいと思ったら。ちょっと、アキラ君、ココをどこだと…」

彪「歩萌!」

  美幸を制して歩萌に近づく。

  歩萌、彪を微笑ましく見上げて、

歩萌「もう、馬鹿なんだから……」

彪「ば、馬鹿とは何だよ。人がせっかく…」

  不満げに顔を膨らます。

  歩萌と美幸、顔を見合わせて笑う。

彪「な、何だよ」

歩萌「うーうん、なんでもない」

  悟朗、病室に到着して、

悟朗「セェンパイ!」

歩萌「あ、悟朗ちゃん!」

悟朗「ヨガッタァ。これで皆そろったっちゃ」

  満面の笑顔を向ける。


□同・廊下

  美幸に続いて、彪と悟朗がやって来る。

美幸「小倉さんの退院にはもう少し時間がかかるそうよ。歩行のリハビリが必要みたい」

悟朗「でも良かったです。先輩の意識が戻って。インターハイ予選までに間に合いますかね?」

彪「あと三週間もねぇぞ」

美幸「試合に出るのはちょっとね…」

悟朗「そうですか……」

彪「俺達が歩萌の分まで頑張るんだ」

悟朗「……! 黒崎君」

美幸「あら、たまにはイイ事言うじゃない」

彪「たまにはで悪かったな」

  美幸、彪の真剣な眼差しに感心する。


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