第7話

□久山学園・校舎(朝)

  生徒達が登校していく。


□同・教室(朝)

  教卓に、活気に満ちている美幸の姿。

美幸「こんにちは! 産休に入った古賀先生の代わりに臨時教員として、今日からこの一年C組を受け持つ事になりました、春日美幸です。みんな、よろしくね!」

男子生徒達「うおぉー、めちゃ美人だ!」

女子生徒達「可愛い~」

  盛り上がっている美幸組。

  その中で一人、彪が頬杖つきながら美幸を見上げている。


□同・校庭

  彪、ボーっとしている。

  美幸、彪にホウキを差し出して、

美幸の声「はい。ちゃんと掃除しなきゃ」

彪「……(渋々とホウキを受け取る)」

  美幸、ホウキで掃き出して、

美幸「でも、まさかアナタの担任になるなんてねー」

彪「……ハァ」

美幸「ったく、もっと喜べば?」

彪「誰が?」

美幸「くぅ~、かわいくないなぁ。あっ、それよりちゃんと約束守ってくれるんでしょうね?」

彪「約束?」

美幸「そう。幸太との約束。今度の記録会でまた勝負するってことよ。言っとくけど、幸太の力はあんなもんじゃないよ」

彪「ふーん」

美幸「とにかく、幸太と少ぉしでもマシに戦えるよう、私がキミを強くしてあげる」

彪「何、自信げに」

美幸「だって、ライバルが弱いとシャレにな

らないでしょ?」

  自信満々に腕を組む。


□同・グラウンド(夕方)

  放課後、広々したグラウンド。四百mトラック、百m直線トラック、幅跳び場。

  設備は整っているが、全く整備されていない。

  美幸、苛立ちを隠せない様子で腕組み、

美幸「あんの、野郎…サボったわね」

  すると背後から久保悟朗(17)がやって来て、

悟朗の声「あの~、コーチ?」

  美幸、振り返って、

美幸「ん?」

  そこには大柄で丸々太った悟朗の姿が。

  悟朗、モジモジしながら、

悟朗「新しいコーチが来たって聞いたけん…その、僕、一応~、陸上部二年の久保悟朗です」

  美幸、目を見張りながら、悟朗を足元から顔へ見上げて、

美幸「うーん、たくましい体格ね。種目は?」

悟朗「特に決まってないんのです。今までコーチもいなかったもんで…」

美幸「こんなに設備も整っているのに。他に部員は?」

悟朗「えっと、僕ともう一人、女子部の小倉先輩と。でも、先輩は今休学してて。あ、そういえば、一年で黒崎、何とかってのが。でも、それも全く顔出さなくて、そのぉ」

美幸「じゃあ、これまであなた一人で?」

悟朗「実績もない高校なんで人気もなくて。その、ヘヘヘ……」

  美幸、デコボコのグラウンドを蹴って、

美幸「そっか。じゃあ、とりあえず、ほら、ココの整備から始めましょ」

悟朗「ふぁい」

  美幸と悟朗、地面にガリをかける。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る