第3話

□福岡タワー周辺・海浜公園(早朝)

  百道の景色に際立つ福岡タワー。

  穏やかな波だ。


□同・海浜公園沿い道路(早朝)

  スレンダー美人の春日美幸(28)、歩道をジョギングしていく。

  軽快なリズムと息づかいだ。

    ×    ×    ×

  道路をバイクの青年が猛スピードで走り抜けていく。

  額に深い傷を負った彪だ。

  髪が風を切ってなびいてゆく。

    ×    ×    ×

  美幸、角を曲がり、青信号の横断歩道を渡ろうとする。

  その瞬間、彪のバイクが鋭くカーブして突っ込んでくる。

美幸「わっ!」

  鳴り響くタイヤの摩擦音。

  身をかがめている美幸、ソーっと辺りを見上げる。

  煙立つ摩擦跡の先に止まっているバイク。美幸、腹立たしくなって近寄り、

美幸「ちょっとぉ、危ないじゃない!」

  黙ってうつむいている彪に、

美幸「あのねぇー、キミ。聞いてる? 不注意、スピード違反、それにノーヘル! たく、こんな早朝から…どこの高校よ?」

  彪の肩をつかみ、顔を見る。

  額の傷がチラリとのぞき、ハッとなる。

美幸「その傷……」

  彪、美幸をにらみつけ、

彪「あんたには関係ねぇだろ」

美幸「なっ……(困惑する)」

彪、美幸を振り払ってアクセルを絞る。

美幸「あっ、ちょっと!」

  彪、バイクを急発進させて消えていく。

  美幸、呆れて、

美幸「信じられない。何よ、あの子」

  ジャリっと何かを踏み付ける。

美幸「イッタァ」

  足首をひねってうずくまる。

美幸「何よぉ、もう、最悪」

  足元を見るとキーホルダーが落ちている。

美幸「ん?」

  可愛いヒョウのマスコットを拾い上げる。

  スパイク裏に『親愛なる黒崎 彪へ』の刻印がある。

美幸「くろさき、トラ……?」

  首をかしげる。

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