29.5話シバとウサ



宇宙歴4993年9月27日 13:06

惑星:地球 トーキョー 



季節の変わり目の唐突な雨。



休日でお出かけ日和だったはずの兎丸は

その雨を凌ぐために屋根のある場所を探している間にずぶ濡れになり

やっとの思いで屋根がある場所を見つけたのはいいものの

 



兎丸「…ここ…どこだろ…」

迷子になってしまった。



兎丸「……携帯…おうちに忘れた」

と携帯電話を持ってきてないことも発覚した

なんと言う厄日だろう。

と兎丸が、しみじみ思っていると


茶色い何かがずぶ濡れになりながら兎丸の雨宿りしていた屋根の下に歩いてきた。



兎丸「…….こ、こんにちわ?」


柴犬「わん!」


四足歩行のけむくじゃらに兎丸は挨拶をすると柴犬である彼も返事をした。


そして体の水を振り解くために体をブルブルさせる


兎丸「わっ!」

兎丸はその水飛沫に驚くが

けがふわっとなった柴犬にすぐに興味が引かれた。



兎丸「初めまして!私、兎丸って言います!」


といつも通り自己紹介する兎丸


柴犬「わん!」


兎丸「君のお名前は?」


柴犬「くぅん??」


兎丸「うーーん…なんて言ってるかわかんないや……はっ!じゃあ柴太郎で!なんか柴太郎っぽい顔だし!」

の訳のわからん理由で名前をつける兎丸



兎丸「柴太郎、ふわふわしてるねぇ。触ってもいい?」

柴犬改めて柴太郎に目線を合わせてしゃがむとそういう兎丸に


柴太郎「わん!!」

とすり寄る、良いという合図だろう


兎丸「ふかふかだ!あははっ!!」

兎丸は柴太郎とじゃれつく。


兎丸「……柴太郎も迷子?」


ふと柴太郎にそう尋ねる兎丸だが


柴太郎「くぅん?」

柴太郎は首を傾げる。


兎丸「私はねー、まいごー」

そう言って座り込んだ。




___________兎丸「……雨…やまないねぇ。…」



激しくふり、止む気配のない雨を見ながら兎丸はそうつぶやく。








兎丸「…(このままお家に帰れなかったら一人ぼっちになるのかなぁ。)



…一人でいるのが好きくなっちゃったなぁ。私。


……今は柴太郎がいてくれるけどねぇ

柴太郎は一人ぼっちだったの??」



柴太郎「わん!」


撫でると柴太郎はそのまま兎丸の膝の上に顎を乗せて寝る体制に入った




兎丸はそんな柴太郎を見ながらそのままスリープモードに移行した。



______________



??「…….まる……うさまる!!」



兎丸「……!アリス君と乙骨君だ」


兎丸の肩を揺らして起こしたのは傘を持っているアリスだった。



アリス「なかなか帰ってこないと思ったらこんなところで寝るなよ」



兎丸「ごめんなさい」


アリス「(なんかやけに素直だな…)」




乙骨「ところでそのお犬様は?」


兎丸「!この子ね!柴太郎!私の迷子仲間!」


アリス「名前までつけちゃってるよ…(首輪つけてないな野良犬か?…)」



とアリスは柴犬を観察する。


兎丸「ねぇ!柴太郎、前の私と一緒で一人ぼっちなの!

お家連れて帰っていい?」



アリス「…ちゃんとみんなで世話するならって言いたいところだけど…。


俺たちの仕事は常に危険と隣り合わせで何が起こるか分からないし家を空けることだって少なくないそんな中でお世話してあげれるかも定かじゃないからダメ」


兎丸「むぐぅ…」

あからさまに拗ねる兎丸



アリス「かと言って放ってもおけないし…動物病院で一回見てもらってその間に買ってくれそうな人探そう。」



乙骨「それが良いですねぇ。ね?兎丸さん」



兎丸「……はぁい。」


渋々返事をする兎丸。



それから柴太郎を病院で診てもらいその間に知り合いに連絡してみたところ


アリスと兎丸がよく行っている喫茶「つばき」のマスターが引き取ってくれることになった。


_____________________


喫茶「つばき」に着く頃には雨はすっかり止んでいた。



マスター「ご連絡ありがとうございます。」


と喫茶店の前で待っていたマスターはそう言った



アリス「こちらこそ急な話を受けてもらって」


マスター「いえいえ、動物好きですので、お構いなく」

と頭を下げるアリスにマスターは声をかける。




兎丸「……(アリス君の言う通り…出張もあるし……その間に柴太郎は一人ぼっちになっちゃう……


それに…私が最後までお世話できるとは限らない…)

柴太郎をよろしくお願いします」




ひとしきり柴太郎を撫で回したあと兎丸もマスターに頭を下げた。


兎丸に撫でられた柴太郎は店の前でお座りをしてすっかり看板犬のような立ち振る舞いまで


マスター「柴太郎というんですか?」

とマスターは問いかける


兎丸「うん!そんな感じの顔してる!」


マスター「そうですか、そうですか…。

では、柴太郎のことはお任せください。」


兎丸「うん!…あのね。マスター、ご飯食べに来るだけじゃなくて柴太郎にも会いにここに来ていい??」

と問いかける兎丸に


マスター「もちろんですとも。ぜひ会いに来てください」


とマスターは兎丸の頭を撫でた。


兎丸「!うん!!」


乙骨とアリスは目を合わせて笑った。




兎丸「じゃあね。柴太郎。マスターのご飯美味しいし。ここにはいっぱい人が来るからもうひとりぼっちじゃないよ」

という兎丸に



柴太郎「わん!」

と柴太郎は返事をした。


____________________________



喫茶「つばき」を後にして帰る途中に



兎丸「今日はおてて繋いで帰ろ!」

と兎丸は二人に提案した。



アリス「また急な」


乙骨「おやおや、甘えたさんですかねぇ?」

と言いつつも兎丸と手を繋いで帰る二人だった。








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