23話対怪人用アンドロイド半年に一回の機能力テスト



扉の先には

ひどく冷たいと感じさせる頑丈そうな鉄の壁がアリスを迎え入れた



アリス「!すごいな。アンドロイドが使うから特殊な素材と構造で頑丈に作られてる。」


兎丸「でしょ?道具も人間のとは違ってめっちゃ頑丈だかね!」


兎丸が指差した方向にある跳び箱も握力測定器も全て壁同様アンドロイド用に頑丈に作られている。


イナズマ「うさちゃーーーん!!待ってたよぉおおおおお!」

どこからともなく兎丸に飛びついてきたイナズマと


コウ「気安く触れるな。



兎丸、相変わらず愛らしいな」

とイナズマを引っ剥がして兎丸に挨拶するコウ


ドーラ「二人とも、こんにちは」

その三人を微笑ましそうに見守りながら一歩後ろからやってきたドーラ


よくよく体育館の中にはイナズマとドーラ、コウ、兎丸と言うメンツでどーるくらぶのアンドロイドのみが集まっているようだった



兎丸「みんな!こんにちは!」

イナズマとキャッキャしながら挨拶する兎丸



アリス「!お前達も今日、機能力テストしにきたのか?」



ドーラ「えぇ、休みの日に色々予定があったからたまたま空いてたのが今日だったのよ。

いつもはもう少し早めに受けにくるのだけど」


イナズマ「僕はうさちゃんが毎回テストのことド忘れして最終日に先生に呼び出されるの知ってるから毎回最終日に来てる!

うさちゃんの携帯のGPSでこっちに向かってるのは分かってたし」


アリス「あ…そう…(相変わらずの兎丸大好きっぷり)…コウも兎丸の合わせたのか?」


コウ「あぁ、愛しの妹の成長を見れる良い機会だから当然であろう?」


アリス「(こっちはこっちで相変わらずだった)……ん?じーぴーえす?」


少し遅れてイナズマの言葉の一端に違和感を覚えたアリス


イナズマ「うん、ストーカーは迷惑でしょ?でもうさちゃんがいつどこに居るかは知りたいから」


アリス「それもストーカーの一部だろ。」


コウ「俺もスマホからその情報はみれるが?

兄妹愛故だそいつと一緒にしてくれるな」

と真顔でいうコウ


アリス「どっちもどっち、てか兎丸はいいわけ?」


兎丸「?よく分かんないけど、私もみんな好きだから会えたらそれで嬉しい!」


イナズマ「しゅき!!」


コウ「かわいい」


ドーラ「あらあら、私にまで嬉しいこと言ってくれるじゃない?」


アリス「ダメだツッコミがたりない!!!」


赤人「ちっ、相変わらずクソみたいな茶番だな…」

そう言って道具の準備をする赤人


兎丸「そうだ!私ね一時的にパワーアップできるようになったからそれで計測したい!!」


赤人「却下だ。持続性のある状態でないと計測は無効。



腕を変えたから以前よりも握力が上がったから

足を変えたから威厳よりスピードが落ちたから

これからはその記録を維持する


などで限り記録の更新は出来ない。」


兎丸「えー!」


赤人「えー、じゃない。

明日から新しいアンドロイドが教育にくるんだ。その準備もあるからさっさと始めるぞ」


赤人は不機嫌そうにそう言った


兎丸「そなの!?どんなアンドロイド!?」



赤人「まずは握力測定からだ。」

握力測定器を構える赤人


兎丸「あれ無視!?」




赤人「イナズマ→コウ→ドーラ→兎丸の活動歴順で計測しろ」


イナズマ「え〜僕が最初?確かにこの中だと年長さんだけどさぁ」

渋々、そう言いながら握力測定器を赤人から受け取るイナズマ


アリス「そうなのか?」


イナズマ「そうだよ。僕は今年で47年目」


アリス「アンドロイドって人間と違って活動歴と精神的な成長は比例しないもんなのか?学習機能あるのに…」


イナズマ「どーゆう意味?」

ニコリとアリスに問いかけるイナズマは思いっきり握力測定器を握る。


アリス「あーーー、コウ達は何年目なんだ?」

ごまかすように他のアンドロイドにも問いかける


コウ「俺は27年目だ。」


ドーラ「私は18年目ね」


兎丸「私7年目!」


アリス「へ、へー」


赤人「…イナズマ…握力、右左ともに64kg

前回との差異なし。次」

いつのまにか測り終えていたイナズマの記録をメモした赤人はそう言う


イナズマ「ちぇ、僕肉弾戦タイプじゃないから相変わらず握力は全然ダメだなぁ」


アリス「(それでも人間の男性の平均超えてるけど…)」



コウ「……」

無言で力を込めるコウ


赤人「コウ…左右ともに148kg、問題ないな。

次」



ドーラ「頑張っちゃうわ!」


ふんっ!と言い思いっきり力を込めるドーラ


赤人「…共に809kgと問題ないな。まぁこれ以上強くなられたら機械が壊れるからやめて欲しいが」


ドーラ「あら?強い私はお嫌い?」


赤人「お前だろうがそれ以外だろうが馬鹿高い機械を壊す奴は嫌いだ。」


アリス「(アンドロイドの機能によって握力の変動もかなり違うのは分かるけど…ドーラってそんな握力いる機能か…?いや、まぁハリを怪人にぶっさすのには握力も腕力もいるか…)」


兎丸「つぎ!私!」

そう言ってドーラから握力測定器を受け取る。


そして、ふんぬ!!となんとも言い難い声を出して握った。


赤人「157と…こっちも異常なし」



赤人「次、反復横跳び」



三つの線が引かれた場所に縦一列に並ぶ四人


赤人「はじめ!」

赤人の合図と共にストップウォッチが動き始める。


アリス「(どうしよう…すごくシュール)」

見学しているアリスはもはやそれしか言えなかった。


20秒間淡々と行われる中


兎丸だけなんか分身してるみたいに

以上に早かったのは言うまでもない。



赤人「やめ!」

赤人は合図とともにそう言ってストップウォッチのボタンを押した。


記録


イナズマ173回

コウ574回

ドーラ302回

兎丸 12036回



アリス「(床に光るラインを踏んだら回数がカウントするような機能がついてるのか)」


アリスはマジマジと床を見た


赤人「これも前回と変化なし。」



それからも


20mシャトルラン(エネルギー満タンの状態から尽きるまで)

イナズマ8080回

コウ8081回 

ドーラ5786回

兎丸 3763回



50m走

イナズマ7秒

コウ 5秒

ドーラ8秒  

兎丸 2秒


立ち幅とび

イナズマ2m

コウ2m30㎝

ドーラ1m97㎝

兎丸 48m


ソフトボール投げ

イナズマ102m

コウ205m

ドーラ723m

兎丸 678m




仮想下級怪人退治(20体)

イナズマ3秒

コウ1秒

ドーラ63秒

兎丸22秒


その他、機能別のテストなどなど


全ての測定が終わる頃にはもうあたりはすっかり暗くなっていた


赤人「計測完了、問題なしだな。」



兎丸「どこも異常なーーーーーーし!!!」

ふーーーーー!!!!とはしゃぎながら体育館を走りまわる兎丸


アリス「みんな、お疲れ様。」


イナズマ「ほんとだよーエネルギー補給しては消費して補給しては消費しててって


これだから機能力テストは嫌いなんだ。」



アリス「あはは…」


コウ「…」


ドーラ「確かに普段、全力で使ってない部分とかも全力で使うから怪人と戦ってる時より機体フル稼働って感じよね。」


アリス「人間で言う疲れたってやつか?」


ドーラ「うーん?多分」


と話している間も兎丸はずっとぴょんぴょん駆け回る。


アリス「…あいつはさては常にフル稼働だから別にいつも通りなんだな」



イナズマ「うさちゃん元気なのかわいいすき」


コウ「兎丸の機体に問題がなくて何よりだ。そして愛おしい」


アリス「はいはい。」


兎丸「アーリースークーン!!この後、どうせならみんなでどーるくらぶ言ってご飯にしよう!!」

とアリスの元に走ってきながらそう言う兎丸


アリス「俺はいいけど…」


ドーラ「そうね?気分転換に」


コウ「君の誘いなら喜んで」


イナズマ「行く〜!」


兎丸「せんせーも行くでしょ?」


赤人「断る」


兎丸「えー!いーこーおーよー!!行くまで離さない!!」


赤人の腕にぶら下がるようにして駄々をこねる兎丸


赤人「分かった、分かったから離せ」


兎丸「よっしゃぁぁぁぁあ!」


赤人「ここの片付け手伝ったらな」


兎丸「分かった!」


兎丸の駄々っ子に負けた赤人は

渋々そう言ったのだった。


___________________________________

惑星:技術の星 どーるくらぶ


吟一「なるほど、それでみなさんお揃いなんすね!」


どーるくらぶにグラスを拭きながら吟一はそう言った。


兎丸「モグモグモグ…うん!!」

吟一に作ってもらったご飯を食べながら言う。



アリス「突然お邪魔してすいません」


吟一「いえいえ〜、賑やかで嬉しいっす。

赤人さんは学校から兎丸君の引き継ぎに来た日依頼でお久しぶりですし」


赤人「当たり前だろ。それ以外に倶楽部に来る理由なんてない。

今日だってこいつがうるさくなければ来てない」

そう言ってウイスキーを嗜む


吟一「まぁまぁかわいい教え子じゃないっすか」


兎丸「そうだよ!かわいい教え子だよ!!」


赤人「どこがだ。」


ひどく不機嫌な声で赤人は言う




その後ろではコウとイナズマが兎丸のことで言い争いをしている


 


イナズマ「言っとくけど僕はうさちゃんの未来のお婿さんだからね!?」


コウ「それを言うなら俺は今現状で兎丸の兄だが??」

どうしてそうなったのかはわからないがそうなっている二人を

ドーラはそれを面白そうに見ている



二人を宥めていたアリスだが

宥めきれなくなり


アリス「兎丸!お前の自称お兄ちゃんとお前の自称旦那がお前のことで言い争いになってるから助けて!!」



兎丸「?分かった!!」


アリスの言葉に兎丸はそちらの仲裁に行くために吟一と赤人のいるカウンターから離れた。


_____________________


赤人「…そういやあんた聞いたか?10月の….」

ふと思い出したように赤人は吟一に話を振った



吟一「あぁ!アンドロイドたちの運動会ッスよね?この前、対トの情報部門から倶楽部にお知らせが」


赤人「何考えてんだか。


アンドロイドどうしの交友を深める、競い合うことで新たな戦闘スタイルを学習させる。とかなんとかいう名目らしいが…何がどうしてそうなったのか」


吟一「あはは…確かに急でしたし。


開催場所は対宇宙怪人用アンドロイド学校の体育館でしたもんね?」


赤人「あぁ、最悪だ」


吟一「まぁまぁ、兎丸君辺りが知ったら大喜びしそうですし」


赤人「そういやまだ言ってないのか?」


吟一「えぇ、どうせならうちの倶楽部がみんな揃ってからにしようと思ってまして。

サプライズの方がいいでしょ?」



赤人「あんたが一番ノリノリじゃねぇか。」


運動会…まだ三ヶ月ほど先のことではあるが

アンドロイド達に新たな刺激が待っているようだ。

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