18話(2日目)兎丸の保育園変装作戦


宇宙歴4339年 5月19日 9:05

惑星:地球 トーキョー

品G区 三つ葉保育園 小体育館


翌日 2番目の太陽が出る前。



園児達はすでに登園しており今の時間帯は使われていない小体育館にとりあえず身を隠すアリスと兎丸。


兎丸「ねぇ!これ無理があるくない??

あんまり可愛くないし

あとちょっと小さいから動きにくい」


〈パシャ パシャ パシャ パシャ〉


アリス「大丈夫だって。ちょっとデカめの幼稚園児にしか見えないから。」 


小体育館でスモックをきて黄色い帽子を被り黄色い鞄を下げた兎丸にアリスは少し笑いを堪えながらそう言った。


兎丸「アリス君もしかして、この前の小惑星出張で女装したの見て面白がったこと根に持ってたりする?」


アリス「かっこいい俺がそこまで器小さいわけないだろ。


影の中の怪人捕まえるなら園児になって声をかけられたところを捕まえるのが一番確実だから。」


〈パシャパシャパシャパシャ〉


アリス「で?なんでお前がいるのイナズマ」

真顔に戻って音のする方向へと視線を向けるアリス


イナズマ「え?僕の兎ちゃんシャッターチャンスセンサーが反応したから仕事いく前に来てみた。」

そこにはイナズマがいた


兎丸「そっか!」


アリス「そっか!じゃねぇー!普通に不法侵入だし!!」


イナズマ「たとえ不法侵入だろうとうさちゃんの可愛い写真のためなら僕はなんだってやるね!」


アリス「ストーカー予備軍め。」


兎丸「ところでさ?この服はどうしたの?」


アリス「若に頼んで保育園の子が忘れ物をした時用の予備フル装備を借りた。」


兎丸「まじか。」


イナズマ「それだけは褒めて使わす!」


アリス「はいはい…

昨日とは全く服装違うし耳も髪も帽子かぶってれば分からないだろ?


あ、帽子脱ぐ室内では影の濃いところ通るなよ。


狙うなら帽子を着て外で遊べる昼休み」


兎丸「分かった!」


アリス「俺は今回いる方が邪魔だろうから近くの図書館にいる。


本当はワイヤレスイヤホンとかとうして通話してた方がいいんだけど。

もしバレたら作戦がパァだしな。」

アリスはそう言うとイナズマの首根っこ掴んで

歩きだす。


イナズマ「あーーーん!追い出される!」


アリス「当たり前だろ。仕事に行け。」


イナズマ「うさちゃんまたね!」


兎丸「うん!」


アリス「捕まえたり何かあったらすぐ連絡してくれ」


兎丸「アイアイサー!」


こうして兎丸保育園児変装作戦が実行された。

___________________________


三つ葉保育園 ライオン組


保育園の先生方には事情を話して兎丸の潜入許可をもらっている。



若「皆さんおはようございます!今日は転入生を紹介するよ!」

兎丸の身長的に最年長に入るのは必然的で

その最年長の組には若がいたのでちょうど良かった。


登園してきた園児達は体育座りで若先生の話を聞く



兎丸「兎丸です!よろしくお願いします!」

元気よく挨拶をする兎丸は割と馴染んでいる。


室内で帽子を被れないのでカチューシャで耳を隠す兎丸はそれが落ちないようにお辞儀をした。


若「では今日もみんなで仲良く遊びましょう!!」


「「「「「はーーーーい!!!!!」」」」」


子供達は室内の自由時間に入り



子供1「兎丸ちゃんは背がおっきいね!」


兎丸を囲っていた。


兎丸「でしょ!えっへん!そのうちもっと大きくなるのが目標なんだ!」

普段、子供扱いとチビを両刀で言われ続けている兎丸にとってはこの上ない喜びのセリフである。


子供2「なれるといいね!」


兎丸「うん!」


若「(ちゃんと馴染めてるな。)」


子供3「みんだフルーツバスケットするから兎丸ちゃんもやろ!」


兎丸「うん!やる!」



こうして午前の後半、室内の自由時間を満喫した兎丸だった。



___________________________________

三つ葉保育園 運動場



昼食を終えていよいよ外遊びが始まった。


若「みんな帽子はかぶったかな?」


「「「「「はーーーーい!!!!!」」」」」


若「水筒は持ってきたかな?」


「「「「「はーーーーい!!!!」」」」」


若「では、時計の針が今、1のところにあるから2のところになるまでお外遊びの時間だよ!


しっかり水分補給しながら遊びましょう!

体調がすぐれない子は先生に言ってね!


それではスタート!!」


若の声で一斉にみんなが遊具やうさぎ小屋、かけっこ用のラインに走りだす。


兎丸「(お昼の給食…….足りなかったなぁ。)」

保育園の子供達と一緒に給食を食べた兎丸は

いつもより量が少なかったためにエネルギーの回復に不十分だとお腹をさする。


そんな兎丸に



子供1「兎丸ちゃん!うさぎさん見にいこ!」


兎丸「うん!」


一人の子供が開始によく声をかけられるうさぎ小屋に兎丸を誘った。


うさぎ小屋には4、5人の子供達がかこってウサギを愛でる。



子供達の人数が多いせいか10分ほど経っても

怪人が声をかけてくる様子はない。


兎丸「私、お水飲んでくる!」

そう言って兎丸は木陰に置いてある水筒の方へと向かった。




木陰には誰も取らず子供達の水筒だけが並んでいる。


兎丸はしゃがんで自分の水筒のお茶を飲んでいた。


その時だった


??「君は新しい子ですか?よかったら私(わたくし)がみんなと仲良くなる方法教えてあげましょうか?」


何処からともなく声がする


兎丸「……だぁれ?」

兎丸は怪人だと分かっているが

何も知らない子供のふりをする。


??「私は御影と申します。

ねぇ、知りたいですよね?教えてあげるますから、私とも仲良くしませんか?」

影の中からほんの少しだけ顔を出す。

鯉のお面を被った茶髪の怪人は御影と名乗る


兎丸「あぁ、お前か」


御影「へ?」


兎丸はそう言うと御影の頭を片手で鷲掴みにする


御影「えっ!?ちょ!!なんなんですか!君!!離してくださいな!、」


兎丸「私、兎丸っていいます!対宇宙怪人用アンドロイドだよ!」

きちんと自己紹介をする兎丸


御影「あ、アンドロイド!?」

そのタイミングで強い影が吹いて兎丸の帽子が飛ばされ赤い髪と耳が風に揺れて現れる



御影「昨日の…!!」

思い出したと言わんばかりの反応をする


兎丸「そう!」


御影「わ、私、子供達と話してただけでして!

何も悪いことしてないですよ!?

話せばわかりますからいったん手を離してくれませんか!?」


兎丸「やだよ。影の中に入られたら捕まえられないし。そのままもうここには来ない可能性もあるでしょ?」


御影「うぐっ!」

図星なようで御影は顔を歪ませる


兎丸「若くん!!怪人捕まえた!!ちょっと手が離せないからアリス君に電話して!!」



若「!?わ、分かった!!」


若は急展開に動揺しつつすぐさまアリスに連絡を入れた。



連絡を受けたアリスはすぐに駆けつける。


兎丸「やっほー!アリス君!!」


アリス「おう、捕まえたんだってな。」


兎丸「うん!」


アリス「若は?」


兎丸「子供達に被害が出るかもだから小体育館に避難させてから戻ってくるって!」


アリス「そうか、で?なんで子供達に声かけてたんだ?」


アリスはそう言って怪人に問いかける。


御影「こ、ここここ子供達と仲良くなりたかっただけですよ!?」


丸わかりの嘘をつく御影


アリス「このまま嘘つくと兎丸がさらに手に力を込めて頭がかち割れるぞ?」


兎丸「そうだぞ?」


御影「わ、分かりました!本当のこと言いますかち頭わるのだけはご勘弁してください!!」


アリス「で?」


御影「うぅ〜。私はこの通り、濃い影限定で自由に移動できる怪人です。

ですが本当にそれだけなのです。

力もなく人間の大人でも簡単に私を捕まえられるでしょう。」


兎丸「うん!中級怪人の割にめちゃよわかった!」


御影「うぐっ…な、なので無知で純粋で力のない子供なら

大人のように警戒されずに仲良くなって時間をかければ言葉だけで怪人の味方として洗脳教育できるかなぁ…と。


そして洗脳教育した子供達に反乱を起こさせてあわよくば宇宙征服できるかなぁと」


アリス「子供使って宇宙征服て…」


兎丸「そんなことしちゃダメだよ?」


アリス「そもそもできねぇよ。」


御影「で、ですよねぇ。」


アリス「まぁでも、いくら非力でも子供達に危害を加えようとしたんだから怪人研究所の構成施設行きだけどな?」

アリスはそう言って電話を手にもつ。


御影「ひ、ひぇえ〜」

御影は怯えて影に隠れるが兎丸が掴んでいるため逃げることはできない。


若「おーい!」

そこへ若が戻ってきた。


若「子供達の避難終わった!」


アリス「お前は子供達のところにいなくていいのか?」


若「他の先生方が見てくれてる。

俺は怪人の様子を見てきてくれって頼まれたんだけど…どうなった?」


アリス「子供達に危害加えるって自白したから更生施設に引き取ってもらうとこ」


若「子供達に…危害?」


アリス「あ…」

アリスはしまったと言わんばかりに若を見た


若「……おい、怪人。」


御影「ひぃい!!!」


若「あんな尊くて可愛くて尊い生物に危害を加えるなんて!!ひどいぞ!!お前!」


子供好きの若にとって御影のしていることは理解不能なわけで御影の方を掴んでそう言う


兎丸は咄嗟にその場から離れた。


御影「こ、こっちにだって宇宙征服したいんだから仕方ないじゃないですか!!」


若「だからって子供狙うな!!大人を狙え!」


アリス「…いや、あのそもそも宇宙征服やめて?」


御影「わ、私だって子供達と会話してるちにあの子達を利用するのは心苦しいと思いましたけどね?


私は非力だからそうするしか方法が思いつかないわけですよ…」


若「…………」

若はしばらく沈黙する


アリス「…おーい….若?」


兎丸「大丈夫??」


アリスと兎丸はダンマリの若を心配するが


若「…….なんだ!そうだったのか!お前も子供達の尊さに気づいてだんだな!」

その心配など知らぬ存ぜぬで目を輝かせる


御影「え?あの…」


若「それなら最初からそうだって言ってくれれば良かったのに!


お前、実はいい奴なんだな??」


御影「いや….人間からしたらいい奴では絶対ないんですけど….」


兎丸「….あれ?なんかこの流れ的に」


アリス「もしかして?」


若「お前、よくよく考えたらいい能力待ってるよ!

どう頑張っても先生達の目の届きにくい場所で子供達のこと見守れるんだから!


更生施設に行くなんて勿体無い!

ここで是非、働いてくれ!子供も懐いてるみたいだし!


子供達のため!!」


御影「何この人怖いです!」


アリス「…よ、よかったじゃねぇか。

これなら更生施設行かなくて済むぞ?」


御影「いやいやいやいや……!ダメですよ!?普通!!私の目的は宇宙征服ですし!!」


若「そんなことより子供達が成長するのを共にサポートしながら見守ろう!!」


御影「ひ、ひぇっ…」


兎丸「どうするの?」


アリス「いや、だって…依頼主が更生施設に送らないって言うなら送らないんだろ?」


兎丸「いや、そうだけども。」


若「なっ?なっ?子供達のために!!」


御影「わ、分かりました。更生施設に行くよりはマシでしょうし…多分」 


と御影の渋々承諾した。


アリス「他の先生方とか園長先生とか保護者とかは?納得するのか?」


若「可愛い可愛い子供達のためだからな!必ず説得する!」

バッと立ち上がり拳を握る若


アリス「あ、そう…」


兎丸「また、悪さしちゃうと若くんに殺られそうだね」


兎丸は御影にそう耳打ちした。


御影「うぅ…薄々と言うか絶対に私には宇宙征服できないって分かってましたし悪あがきしてる自覚はあったので

いい機会ですしここでお世話になれるならなれます。」


兎丸「うん、人間っていい人ばっかりだから仲良くなる方がきっといいと思うな。

宇宙征服よりもね!」


こうして兎丸保育園変装作戦は無事?

幕を閉じたのだった。


____________________________

後日


アリス「そういえば若から連絡が来て御影が正式に保育園で働くことの許可を職員、保護者共々に許可を取れたらしいぞ?」


見回りの最中に思い出したようにアリスはそう言った。


兎丸「まじか…」

兎丸は普通に心底驚いたのであった。



アリス「まじまじ」

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