8-1 貴族令嬢モノも一歩間違えればゴリラになる
皆さまこんにちは、司会天使のパプリエルです。
先日は突然お休みを頂き、誠に申し訳ありませんでした。
ですがお陰様でしっかりリフレッシュ出来ました。重ねてお礼も申し上げます。
え? ゲストで出演していたじゃないかって?
いえいえ、ワタクシは出ておりません。
きっと雰囲気の似た方だったのでしょう。
じゃあ代役のラタタウェルはどうなったか、ですか? はて。
そんな名前の天使は創世界には――いえ、もうどこにも存在しませんが。
もしかしたらお名前を聞き違えたのかもしれませんね。
でも気にする必要は無いと思います。まったく。
では切り替えていきましょう。
ここ最近はハプニングが多発しておりましたので、初心に帰りたいと思います。
番組そのものの存在意義を変えぬ為にも。
という訳で本日紹介するゲスト様はこの方。
異世界転生を経て来られた、ルクセレン=ヴィラ=メルヴィエールさんです。
「皆様こんにちは。ワタクシ、ルクセレンと申します。本日はお招き頂き、誠にありがとうございます」
はい、こちらこそ依頼を受けて頂いて感謝しております。
それにしても、とても麗しいお名前ですね。
雰囲気共にとても気品に溢れていらっしゃいます。
なんだかバラの香りが漂ってきそうな。
「えぇ、これでも上流貴族の令嬢ですから。中身は現代生まれの一般的な女子だったんですけれど。気付いたらこの身体に転生しておりまして」
なるほど、それは今【ハッヤーリ】の令嬢・聖女の転移転生ですね。
大創世ブーム発生直後、転移転生に巻き込まれたのは男性ばかりと聞きます。
苦難に飛び込ませるには丁度良いテスターだったのでしょう。
酷い目に合わせてもギャグに出来易い事もあったのかもしれません。
そして転移転生の安全性が確保された昨今、とうとう女性が本格進出してきたというのです。
それがすなわち令嬢・聖女モノ。
誰もが羨む存在へと持ち上げる、まさに自尊心爆上げの舞台入りという訳です。
ルクセレンさんもその舞台入りに選ばれた一人なのでしょう。
パッとしなかった前世から光り輝く舞台へ。
そのまま栄光への架け橋を駆け登り、末には美少年と恋に落ちる……。
とても素敵な運命に出会えたのではないでしょうか。
「えぇ。最初はとても驚きました。けれど、慣れた今では運命を受け入れましたわ。この世界で新しい私を演じて行こうと。本来この身体に宿っていたはずのルクセレンの代わりに」
その心構えも素敵だと思います。とても聡明ですね。
話から察するに、中の人の魂が成長した個体に宿る、というタイプの転生ですね。
そんな時は大概、身体の持ち主が何かしらの都合で魂を失います。
それで代わりに今の中の人が宿るという感じです。
だからこそルクセレンさんには頑張って頂きたい所ですね。
本来の魂に報いる為にも。えぇ。
ところで質問なのですが、なんでお姿はゴリラなんです?
ここまで麗しい設定を引っ張って置いてなんなんですけど。
ルクセレンさんの容姿、実は巨大なゴリラなんですよ。
どの角度から見ても。見紛う事無く。
雰囲気も性格も作法も悪くないのに。
お洋服もとても煌びやかで美しいのに。
でもこの太ましい体格と力強い存在感。
それも、スタジオの天上に頭が付きそうなくらいの。
ミラーがまったく用をなしていません。
多分、本番組出演者の中で歴代最強クラスですよね。
間違いなくどの転移転生者も余裕で(物理的に)千切れるオーラを感じますもん。
「そう、それなんです。それがワタクシの失敗の始まりというか」
OH……スタートから既に失敗ですか。これはドぎつい。
「実はですね、転生前にとあるソーシャルゲームをプレイしていたんです。【貴族令嬢聖女賢者ゴリラと十人のイケメン守護騎士達】っていうタイトルなんですけど」
貴族令嬢聖女賢者ゴリラ!?
盛り過ぎじゃありません!? 混じっちゃいけない単語入ってますけど!?
「主人公はゴリラなのですが、なぜかイケメン騎士達に言い寄られるっていう世界観で。でも主人公はプレイヤー視点なのでほぼビジュアルには登場しないんです。それに私自身もあまり可愛く無かったし……イケメンも凄くカッコ良かったので。だから『まぁ、見えないし別にいいかなぁ』って」
それでハマっちゃったと。ゴリラ役に。
「はい、密林の沼にずっぽりと。お陰で毎月の課金額が大変な事に」
あーわかります。
ピックアップで推し来たら
課金サービス、ご利用は計画的に。
「天界にもソシャゲあるんですね(笑)」
最近は美少年モノに、それはんもうハマってますね。
推しがとても可愛いんですよぉ。もう母性ねっちねちにくすぐって来てぇ~!
……失礼、話が逸れました。
でもソシャゲ一杯ありますよね?
なのにわざわざ主人公がゴリラなゲーム選びます?
「それなんですよね。なんかこう目を引いたっていうか。それもゴリラ願望あるんじゃないかって自分で思えるくらいに。で、気付いたら落としてたのですよ。もしかしたら、ここからもう目を付けられていたのではないかって思えます」
あぁ~そうですね、それはあながち間違いでは無いかもしれません。
神の釣り餌は人心をとても強く引き寄せますから。
もしかしたらそのソシャゲ自体が仕組まれた罠だったのかも。
ただ、これは常套手段ですね。
人が自ら足を踏み出す事、それが転移転生の一般的条件ですから。
けど普通ゴリラで釣りませんよね。釣り針、バナナだったんでしょうか。
「ええ、でも見事に釣られたようです。それで気付いたら四歳のルクセレンに転生していまして。その時にはもう両親を見下ろしていました。あ、ちなみに名付け親は私自身です」
素晴らしいネーミングセンスですね。(苦笑)
さぁ、こうして転生後の世界を生きる事になったルクセレンさんですが。
どうやらタダでは済まされない波乱の第二人生が待っていたようですよ?
もちろん私もどうなるのかは知らされておりません。本当です。
なので楽しみ半分、恐れ半分、デザートのバナナ付き、と言った所です。
それでは語って頂きましょう。
貴族令嬢聖女賢者ゴリラ、その圧倒的存在が示す人生を。
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