7-3 ゲームマスターがズルするのは反則です

 あの


「なおその天使は最近ようやく刑より解放されて、どこかの番組に出演する事になったそうです」


 ちょっと


「随分な出世ですよね。三等天使名乗ってるらしいですけど、それは名目上で。ランク自体は七等レベルです。生まれたてとほとんど変わらないんですよね、これ」


 PPAP子さん?


「つまり最下級天使、神の御目に触れるのもおこがましいレベルなんですよ。そんな子が一体どうして出演する事になったのやら。誰かに色目でも使ったか、それともまた騙したんですかねー」


 ちょっといいですか?

 もっと楽しい事、話しません?


 ほ、ほら、ネコのお話とかぁ。


「いえいえ、この番組は異世界転移転生にまつわるお話を語る場ですから。その失敗した原因を余す事無く伝える事が、ゲストであるワタクシの義務だと思っています」


 そ、そうですよね~す、すごいなぁ~義務って。


「なお、その一件だけで刑罰が一〇〇年にいたった訳では無いそうです。他にも色々と罪を重ねていたみたいですね。他の世界にこっそり忍び込んで活力泥棒したり。人気度上げる為に同僚の評判落とす工作したり。気に食わない相手に嫌がらせとかしょっちゅうだったそうですよ。

 実は一〇〇年って刑期、かなり重いんです。堕天一歩手前ですね」


 わ、わぁ~そんな酷い罪状もらった天使がいるんですねぇ~た、大変だなぁ~!


「まぁそれでも大天使様はお優しい方ですから、一度は更生の機会を必ず与えてくれます。その上でしっかり正しい天使としての振る舞いが出来れば、他の天使達と同様の扱いに戻してくださるそうですよ。

 でも、反省しなかった場合は――即堕天です。すべての天使特権を剥奪され、どこかの異世界に全裸無能無一文で追放ですね」


 ヒエッ……


「でも安心してください。それが嫌な場合は存在消去か、記憶と性格の書き換えという極刑も選べますので。もちろんどちらも絶命するくらいの苦痛が伴うそうですが。

 書き換えの方は時々頭がおかしくなるそうです」


 もっとドぎついじゃないですかぁそれ!


「でも真面目な天使ならばそんな心配をする必要はありません。皆、己を律する事に余念の無い素敵な方々ですから。間違っても転移転生者を蔑ろにするような事はいたしません。

 えぇ、確かに我々天使は彼等の管理者的立場でしょう。ですがそれと同時に大切にしなければならないパートナーでもあります。なので理由が無い限り、彼等を貶める事は絶対に許されないのです」


 ……す、すいません、ちょっと気分が悪くなってきちゃったみたい。

 ダ、ダメ、ラタタもう我慢できなウボロロロロ……


「つまり、彼等を評価して良いのは神だけという訳ですね。そう、多くの世界は神々が愉しむ為に創られたのですから。天使は己の欲だけで神々の創った世界に干渉してはいけません。

 例外があるとすればこの番組だけですね。以前のように転移転生者を想っての評価は許されていますが、ただの一方的な批判は対象外。それが公になったら、その時点でアウトです」


 オボブッ、ブバロゴブシャア!!

 も"、も"う"ほんと"、や"め"ま"せ"ん"?


「このように、ワタクシ達は常日頃から己を律して仕事を行っております。そんなワタクシ達と触れた事はきっと皆様もよくよくあるでしょう。たとえばナレーションだったり、チュートリアルなどで聴こえて来る声もそう。あれはすべて私達天使のお仕事なのです。決して中の人が喋っている訳ではありません。もちろんアイドル天使なんて者も存在しません」


 ディレクタァァァ! ちぇんじ、ちぇんじおねがいじまずうう!!

 え"ぇ"え"!? 無理ってえ!? なんでぇー!?


「ですので他の神も、そして転移転生者の方々も、どうか惑わされないでください。世の中には他にも沢山のこうしたひねくれ天使がおられますから。いざ転移転生で可愛い女神・天使に出会ったからと、その甘言に引っ掛かる事の無きようお願い申し上げます。何事も一つ疑いを持って挑む事が大切となるでしょう。基本的には詐欺対策と同じです」


 アッ……(悟った顔)

 ラタタね、もうゲロまみれでも、もういいかなーって思えて来たの。(遠い目)


「この番組では失敗談を伝えると共に、そういった詐欺や危険行為をお知らせする役目も果たしていると存じております。なのでワタクシのお話が皆様の役に立てる事を願ってやみません。

 あるいは、これを一つの創世の種としても良いかもしれませんね。『極悪非道の美少女天使、転生者を搾取する』みたいな。世界がそういう在り方なら問題ありませんから」


 そういえば今朝は納豆食べたんだよね~。

 あれ、ねばねばしててお肌にもよさそうだよねー……


「ではそろそろ番組もお時間と思います。少し話し足りませんが、尺は守らないといけませんから。ただ最後に少しだけ。この番組をご覧の天使達もどうか真似しないよう。それと昔一緒に働いた相方さん、もし気付いていたらまたお会いしませんか? まだ携帯番号は変えていないので、気が向いたら連絡をください、待ってます」


 イヒ、イヒヒヒッ!

 びたーん、びたーん、えへへぇ~~~……


「以上、司会天使に代わり、PPAP子がお伝えしました」

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