6-3 実はこれ、〇〇で産まれた悲劇だったんです

 ……ちょ、ちょっと待ってください。

 それってつまり、ソアラさんは消えたって事ですよね?


 死んじゃったって事ですよね???


「はい、そうです」


 ええっ、じゃあなぜここにいられるんです!?

 さすがの創世界も死んで魂が消滅した方はお呼びでき――ますけどぉ!

 でも本来はやっちゃダメなはずなんですよ!?


(笑)ふふっ それはですね、実は私、二代目なんですよ」


 えっ? 二代目……?

 どういう事です?


「実はこの後続きがあって。私が消えた後、美空はちゃんと一人で目的を達成したんです。それで世界が救われて、神様が顕現した時に訴えたそうなんです。『ソアラを助けてあげて』と。そして神様はその想いに感銘を受けて、なんと私を美空の世界に復活させたんですよ。ここまでの記憶を持ったままに」


 え、ええーーーっ!?


「なので今は元気に美空の世界で頑張ってます。新しい目的を与えられて」


 驚きましたね。まさかそのような展開になるとは。

 しかしソアラさんを襲った現象はなんとなく察しました。


 恐らくこれは【ミラーリング現象】、つまり【パックーリ】によって起きる相互視認現象です。

 話から察すると、ソアラさんの世界がコピーで美空さんの世界がオリジナルだったのでしょう。


 ただ推測するに、美空さんの世界の神はソアラさんの世界を認識していたんです。

 きっとコピーされている事も知っていたんでしょうね。

 それで敢えて自分の方の主人公の名前を書き変えたんです。

 ステータス名称が変わっていなかったのはきっと書き変えが漏れたんでしょう。【ゴージ】と呼ばれる失敗ですね。


「正解です。

 私を復元する時、美空側の神様がこう教えてくれました。『貴女の世界は消滅しました。当初より私の世界を複製した代償として。しかし美空は貴女の存在をとても気にしています。ですので貴女だけは私の世界に呼び込む事にしました』って。最初から知ってた風でしたね。

 もしかしたら、最後に二人の声が通じたのも神様のおかげかも」


 さては神同士が知り合いだったか。

 あるいはコピーする事を許可していたのかもしれませんね。


 けどおそらくそのままではいられなかった。

 どちらかに人気が出たか、あるいは閲覧していた神が気付いたのかもしれません。

 それで黙認し続ける訳にはいかなくなったと。


 だとすれば消滅させたのは創世界行政府でしょうね。

 そこまで悪質な場合ですと、世界消滅の判断を下す事もありますから。

 普段は動かない行政府ですが、動くと怖いのです。


 ただそうなるとすると、ソアラさんが復活するのは世界的に若干無理があるのでは?

 美空さんの世界としてはまったく関係無い存在ですし。


「そうなんですよね。最初は苦情の処理で大変だったとも聞いています。辻褄を合わせるのにも苦労したと。なので感謝で一杯ですよ。ここまでやってくれた神様、とっても優しいって」


 ですよね! ですよね!? 心温まります~!!


「パプリエルさん翼パタパタさせてて可愛い~!」


 嬉しいとついついそうなっちゃうんですよ~!

 生まれた活力のおかげで身体が喜んでるんです。


 美空さんの神様グッジョブです。そういう暖かい配慮、素敵だと思います~~~!


「私もそう思います。まぁ、今の私が闇に呑まれたソアラ自身なのか、それとも記憶を持っただけの新しいソアラなのかはわかりませんけどね。だったら後腐れなく後者という事にしとこうかなって」


 なるほど、それで二代目と。


「えぇ。敢えてステータスにもそう載せてもらいました。『そあら(二代目)』って。なのでいつも人に見せると不思議がられますね。『なかなか斬新な称号だね』と」


 以前との区切りを付けたかったんですね。


「そうです。美空は私が消えていく所を見ていた訳ですし。なので切り替えて行こうと。

 もちろんこれは美空も知ってます。その上で一旦離れて行動しようってなりました。折角同じ世界に来て、話し合う事も出来ましたから」


 そうか、今まではコピーだったから同じ事しかできませんでしたもんね。

 でも同じ世界に来たのなら別行動もできると。


「一緒にはいないけど、同じ世界にはいる。だから怖くないんだって声合わせして。それで互いの人生を歩む事にしたんです。いつかまた巡り合うその時まで。また共に冒険する事を夢見て」


 とってもロマンチックですね。

 現実的には、美空さん側をスムーズに語る為の采配とも言えますが。


「いきなり現実に戻さないでくださいよ~(笑)」


 大変申し訳ありません。(苦笑)




 時に神は、ルールやマナーをも顧みず世界を創る事があります。

 他の世界に似せて人気世界にあやかろうとしたり。

 あるいは少し調整しただけの偽世界をこっそりと模倣つくったり。

 中には今回のケースのように完全なるコピーを模造する事もあるみたいです。


 しかしこれらは決して創世とは言いません。

 たとえオリジナルよりも人気があったとしても、それは結局模倣。

 自ら産み出したとは到底言えないですから。


 たとえるならば、デコレーションケーキの飾りつけをしているだけに過ぎないのです。

 それも他店よりこっそり横流しされた違法ケーキの上にね。

 それは果たしてケーキ職人と呼べるでしょうか?


 いいえ、只の悪徳業者でしょう。

 つまり悪手なのです。正当な手順を踏んだ創世ではありませんから。


 ですが今、そのコピー是非の境界が甘くなっています。

 どこまでそっくりであればコピーか、その判断基準が個々の神に委ねられているから。

 残念な事に、その曖昧さを悪用してコピー品をメジャー化させた神もいるそうです。

 こうなるともはや邪神でしょう。嘆かわしいですね。


 ですからどうか強い信念を持ってください。そんな邪神にならない為にも。

「自分が最初に創った」と胸を張って言える世界を創り上げるのだと。

 決して意図してコピーしてはいけないのだと。


 そんな不純な世界をこの世から無くす為にも。


 ただ、意図せずコピーとなってしまったものは仕方ありません。

 貴方が愛情を注いで創った世界ならば悪い物ではありませんから。


 なのでその時は直ぐに消さず、そっと手を加えてあげましょう。

 それだけできっと、似ていたはずの世界は貴方色に染まり直しますよ。


 そう、世界はそれだけで簡単に色付けできるのですから。

 コピーなんてする必要が無いくらいに。

 世界を創れるほどの想像力があれば些細な事でしょう。


 だからこそ、自分だけの世界を一から造り上げて欲しい。

 そう願わずにはいられません。

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