3-3 救いは無いけど悔いは摘み取れるのが創世界

 さて、如何でしたでしょうか。

 総勢二〇人にも及ぶ無双戦士達、その存在感は。

 いずれも成功してもおかしくない個性のポテンシャルをお持ちだったと思います。


 私としても興味を惹かれる方は多かった。

 だからこそ、彼等の物語にはどんな感動が詰まっているのだろう――そう妄想せずにはいられません。


 ですが敢えて言わせて頂きましょう。

 あくまでも一個人としての意見を。


 いずれも、どうにもパッとしません!!


「うッ!?」

「がはっ!!」

「ぐああッ!!」


 個性押し出し過ぎて先のビジョン見えません!!


「げふおッ!!」

「なぶちッ!!」

「ぐええっ!?」

 

 今のじゃ誰の目的もわかりません!!


「ぴぎィッ!?」

「ぎゃぶろッ!!」

「やめろ、やめろ……!!」


 そもそも戦い始めた理由さえ掴めませぇん!!


「おぼぼぼ!!」

「あう、あ……」

「待て、それ以上は俺の暗黒面ダークサイドムーンが目覚めてしまう……!!」


 どうやら皆さん図星だったようで。


 そう、皆さん総じて掴むモノが無いんです。

 確かに特徴は人それぞれ、力それぞれですが。

 でもやってる事が同じなので、変わり映えがないんですよね。


 つまり、意外性を求める余りに世界観自体が追い付いていないんです。


 人は誰しもやる気モチベーションを維持するのに目的を設定するものです。

 ノルマを課し、達成に向けて動き、果たしたら一喜一憂すると。

 これを無双行為に置き換える事も出来るでしょう。


 ですがその目的が安直だとどうでしょう?


 まず、無双を行う者自身が飽きます。何のために戦ってるんだろう?って。

 それが自然と怠惰を生み、生み出す活力さえ乏しくなるでしょう。

 すると、創造主はその感情を汲み取ってしまい世界の構築にまで影響してしまう。


 つまり、貴方達の行動力の弱さが【エターナル伝説化現象】の引き金になっていたのですよ!!


「「「うわァァァァァァ!!!」」」


 確かに皆さんは被害者です。

 直接的な原因ではありません。


 ですが、ですがですよ!!


 だからって神様が指示した王道ルート通りにだけ動いてたらつまらないじゃないですか!

 行動に意外性が無いと、能力が意外でも映えないじゃないですかぁ!!


「「「ぎひィィィィィィ!!!」」」

 

 普通、なんです!

 存在が特殊でも!

 行動が伴ってない!!


「バ、バカな、このSIO塩対応が正論で敗れるなどとォォォーーー!? ぐぶぉあァァァーーー!!!!!」

「「「SIOーーーッッッ!!!」」」


 どうなんです、実際? 誰か教えてください。

 この中で神様の指示に逆らって動いた方はいますか?

「僕ならこうする!」って強引にバック走行して裏ルート見つけた方はいらっしゃいますか?

 等身大オールスターキャラバトルの中であろうと関係無く、「俺はガ○○ピ―――ムで行く!!」と巨大兵器を持ち出したりしましたか?


「「「……」」」


 いないですよね。それがダメなんです。


 意外性を求めるなら勢いが無いとダメなんですよ。

 無双種類だけじゃなく、スタートダッシュから土に潜って星の裏側の街に辿り着くくらいの。

 皆さんにはその勢いが無いんですよ。


 だってさっきの紹介、全部自分の事ばっかりじゃないですか。

 コレコレやってやる! って目標掲げた人居ませんよね。


「確かにそうかもしれません……。僕自身、やりたいって思って進んだ事はなかったかもしれない」


 椅子さん、心当たりがあるみたいですね。


「はい。言われて思えば、ずっと見える矢印に従って動いてただけだったと思います。それに沿って進めば正解なんだなって。ゲームと同じで、案内通りに動けば万事上手く行くってわかってたから」


 えぇそうです。

 でもそれはあくまで、神の初期想定した正規テンプレルートでしかないんです。

 そして皆さんは必ずしもそれに沿って動く必要は無いんですよ。


「そうかもしれません。でも、それでも安心したいじゃないですか! いきなり異世界に飛ばされて不安だったんですよ……! そしたら矢印が見えるようになって、お陰で不安も和らいで、嬉しかったんですよ……!! あぁ、これなら危険は無いんだって!」


「「「そうそう」」」


「そうしたらある日突然、矢印が消えたんです。それで危険どころか何も起きなくなって、いきなり何もしないでいい毎日が訪れて。この期待と不安わかります? 僕だって、本当はもっと活躍したかった……もっと凄い自分になりたかったんですよォ!!」


 椅子さん……。


 そんな想いをもっと早くぶつけられれば違っていたかもしれませんね。

 けど、終わりはいつも突然ですから。

 神の采配で全てが決まり、人の意志なんて関係無いんです。


 だからこそ、最初から精一杯自分らしく生きて欲しかった。

 生きてるぞ、戦っているぞってアピールして欲しかったんです。

 きっとその想いがあれば神にも届くはずですから。


「なら最初からそう教えて欲しかったぜ。これは我儘かもしれないけれど、そんな優しさが必要だったんだ。けど、俺達はもう終わっちまった。パプリエルさんが幾らそう言った所で無駄なんだ。俺達はもうこれ以上前には進めないのさ」


 悲しいですね。これ以上救えないというのは。

 いっそこの場での思い出が救いになれば良いのですが。


「アンタいいキャッタワ持ってるのにゃ。とてもキラキラしてていいのにゃ」

「なんなら登るかい? 君に登ってもらえれば、世界が止まろうと俺は本望さ」

「トゥンク……」


 とかなんとか言ってる間にロマンスが生まれてますね。

 これは異世界間主人公カップル成立というミラクルが生まれそうな予感です。


 でもスタジオでイチャラブは厳禁でお願いします。

 嫉妬しますので。主にワタクシが。


「確かに、私達には意欲が足りなかったかもしれないですね。悠長にしてる暇も無かったんでしょう。ただそれなら始めから見える目標が欲しかった。たとえ短くても、そのラスボスっていうのが見える世界に行きたかったです」

「だな。そうすればもう少しやる気も違ったかもしれねぇ」

「ラスボス、逢いたかったな」

「ああ。ラスボスとの戦い、憧れるよなぁ」

「せめて一度くらいは最後の死闘って奴をやってみたかったよ」


 そうですか、やはり皆さん心残りではあったんですね。


 ですよね、やりたい事もやれないまま世界が閉じてしまったのですから。

 そんな願望があったって不思議ではありません。


 ――ならいいでしょう。救いはありませんが、悔いは摘み取れます。

 ではこの機会に、真のラスボス戦を皆さんに経験してもらいましょう。


 この私自身をラスボスとして……!


「えッ!?」

「まさか!?」

「パプリエルさんが、ラスボス……だとッ!?」


 二等天使と思って甘く見ないでください。

 これでもワタクシ、天使相伝の究極百拳が一つ【ミラガロン流派・天界羅煌極華拳】筆頭伝承者の立場も持っていますゆえ。

 実は皆さんより数十倍も強いのですよ?


 はああああああ……!


「うおおッ!? パプリエルさんの身体が、金色に、輝いているッ!?」

「なんだ、広げた腕が、まるでっ鳳凰の翼に見えるーーーっ!?」

「あの動き、あの輝きはまさか、内なる小宇宙的な力だというのか!?」

「知っているのか素麺!?」

「知らん!!」


「うッ!? 何かBGMまで聴こえて来たぞ!?」

「こ、これはアーアアーって声のあるオペラ風ラスボス曲じゃないか!!」

「うあああ!? BGMが入るだけでなんて威圧感なんだあッ!!」


 さぁどうしたのですか? 後悔したくないのでしょう?

 ならばかかってきてください。全員同時で来て頂いても構いませんよ。


 ちなみにワタクシに弱体や呪い、概念系、無効化などの干渉能力は一切通用しません。

 通用するのはただ一つ、貴方達の純粋なパワーのみです。


「体の、震えが、止まらないの!!」

「これが、真のラスボスだっていうのか……!!」

「こんなの勝てる訳が、無いだろうッ!?」


「けど、それでも!! 僕達は……主人公なんだッ!!」

「椅子ッ!?」

「そうだな、俺達は諦める訳にはいかないんだ!! 主人公だから!!」

「そうね、主人公だものね。私達、頑張ればきっと倒せるわ!」


「ならば今こそ全員のカルマ運命ディスティニーの可能性を繋ぎ合わせる時だ!! 行くぞ皆!!」




「「「うおおおーーーーーーッッッ!!!!!」」」


はあああーーーーーーッッッ!!!!!

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