1-3 異世界ハーレムの真の恐怖を君は知らない
な、なるほど。壮絶でしたね……。
私も軽く絶望しました。これは無理だと思う。(苦笑)
「気持ち、わかって貰えます? ええ、主に股間が大絶望ですよ(笑)」
常々性欲を抑えて生きなければならない。
しかも青春まっただ中の少年が。
そしてもし隙を一つでも見せたら最後という。
これは確かに辛いですね。まさしく修行僧らしい人生だったのではないでしょうか。
「軽いノリで語りましたけど、向こうで目的の為に動いてたのは大体四年くらいですからね。その間ずっと耐えなきゃいけなかったんです。
自慰も出来ませんし、何なら裸にすらなれませんから。彼女達、平気で男風呂やトイレにも入って来るんで警戒さえ解けないんです」
OH壮絶ゥ……。
「なのに彼女達はそれで更にエキサイティングするんですよ。『抱いてもらえないのは信頼が足りないからだ』って。やめて! 仲間と結託して俺の服を脱がそうとしないで!!」
もはや野獣の如き方々ですね。(笑)
「えぇ。なので対抗手段を得る必要がありました。
不滅の金属オリハルコンが手に入った時、何に使ったと思います? 貞操帯ですよ。オリハルコンの貞操帯。俺の意思でしか開かない無敵のパンツです」
オリハルコンで造ったのがアマタの為の剣じゃなくてパンツ……ッ!!
「あと身体洗浄魔法も憶えてトイレと風呂も不要にしました。それくらいしないとダメだって道中で気付いて」
敵よりも気を遣う相手ですね。(笑)
もっとも、これは決して女性達が悪いという訳ではありません。
ただアマタさんの生態が世界に合わなかっただけで。
「おまけに『性別詐称は重大なマナー違反』という倫理があるんですよ。なので公になったら勇者失格にすらなるっていう。即犯罪者扱い確定です」
トコトン合いませんね……。
だからこその悲劇と言えるでしょう。
これは相性を知らず転移させた運営側に問題があったと言わざるをえません。
なおこの一件により、この世界の創造主は転移を諦めたそうです。
元々異性交遊を目的としてても、自世界の生態に興味が無かったようですね。
なので気付かなかったと。
アマタさんが初めての転移者だそうで、思い通りに動いてくれなくて悩んだそうですよ。
何でこんなに大勢ヒロイン用意したのに誰ともくっついてくれないのか、と。
「一体ナニをさせる気で転移させたんでしょうねぇ。(笑)」
ご想像通りだと思います。
割とそういった趣向を目的として世界を創る神も多いですから。
神々も欲を持て余しているので、良い発散になると思ったのでしょう。
ちなみにかの世界は現在活動場所を〝午後界〟に変えたそうです。
現地人達だけで盛り上がっているそうな。きっと将来は人口爆増待ったなしですね。
妄想するだけならまだ面白いのかもしれません。
「俺にとっては考えるだけでも恐ろしい話です。あの世界の事はもう二度と考えたくないですね」
性格次第では受け入れられる方もいそうですが。
でもどうやらアマタさんにとっては不幸以外の何者でも無かったようですね。
「やっぱり女の子とイチャつきたいですから。罵倒されて生きるのはさすがに無理ッス」
ノーマルであるが故の不幸、という訳ですか。
こういった人選もまた神の采配ですから、アマタさんに何の非も無いのが本当に辛い所です。
そう言えば、現在は元の世界で有意義に過ごされているのだとか?
「はい。多分異世界での経験と反動が出たんでしょうかね。そのお陰で、転移前の時に好きだった子にも告白出来て。それでもって交際もOKもらえました」
ずっと思い焦がれていたんですねぇ。
なんだかロマンチックで素敵だと思います。
「そうなんですよ! もう冒険中はずっと彼女に告白する事を夢見てましたから。たとえフラれようが関係無いって感じで。だから【大いなる闇】にも勝てたってもんです。
お陰様で今ではその子が俺の嫁です。子供ももう二人いますよ」
なるほど、異世界での苦痛をバネに幸せを掴めたのですね。
失敗してもタダでは転ばなかったと。
これは前向きなアマタさんだったからこそ得られた結果だったのかもしれません。
「教訓・修行としては良かったんでしょうね。我慢せざるを得ない状況はやっぱ人を変えるもんなんだなぁって思います。今では陽キャなんて言われる事もありますし」
えぇ、どことなくそんな雰囲気を感じます。人間とは変われるものなのですね。
とはいえ、その変化を異世界転移の成功例に、とは出来ませんが。
あくまでも失敗談を乗り切り、その上で成長を果たしたという事ですので。
以上から、異世界転移の危険性が垣間見えたと思います。
もちろんこれは一例であり、アマタさんがお呼び出来る状態だからこそ公開にいたれました。
失敗の中には会場にお呼び出来なくなった方もいらっしゃいますので。
むしろ、そっちの方が多い現状だと言わざるをえませんから。
実際、転移によって即座に死を迎えた被害者は数知れません。
中には跳んだ瞬間、大気が合わずに窒息死・中毒死した例さえもあるのです。
他にも転移先で魔物に負けたり。知識が通用しなかったり。
人気が奮わないからと神に直接手を下された例もあると聞きます。
その中で生きて帰れたのは幸運中の幸運と言えるでしょう。
目的だけでも成し遂げてくれたアマタさんには感謝したいですね。
ではアマタさん、本日はお越し頂き、誠にありがとうございました。
「いえいえ。思う存分話せてよかったですよ。そういえばパプリエルさんの髪、桃色で綺麗ですよね。ふわっふわなエンジェルボブヘア可愛いです。良ければこの後――」
異世界転移。
それは最も簡単に渡れる手でありながら、失敗をも生み出し易い行為です。
だからこそ安易にではなく、転向者に配慮した形で行ってもらいたいですね。
今取り挙げた例などにしっかりと対策を施してもらうなどで。
以上、司会天使のパプリエルからお伝え致しました。
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