46 十万人記念配信をするぞ(後)
それから、俺は色々なキャラに変身していった。
時には、サムライがスピリッツする格ゲーのアイヌの巫女になったり。
時にはカードをキャプターする小学生になって「ほえええ」と言ってみたり。
時には新世紀の綾波さんになって「こういう時どんな顔すればいいのかわからないの」と俯いてみたり。
少し時代は進んで、ソードのアート的なオンラインのヒロインキャラになってみたり。
涼宮さん家の憂鬱なキャラになって「ただの人間には興味ありません」と言ってみたり。
ゼロから始める系の鬼っ子ヒロインになって「鬼がかってますね」と微笑んでみたりした。
そのどれもにミア友が良い反応をしてくれるので、俺も次第に恥ずかしさを忘れ、成り切ることができた。
思っていたよりもずっと楽しい時間だった。
うーん、レイヤーさんの気持ちが少しだけ分かった気がする。
何というか、自分以外の何かになる非日常感というのは、一種独特のものだ。
さらに、それで人に楽しんでもらえるのだから、ハマる人が出てくるのも自然なことだろう。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。
「よし、じゃあコスプレショーはこの辺で終わりかな?」
最後に、最近流行りのVtuberの姿にもなったりして、ショーの終わりを宣言した。
『そんなー』『もう終わり?』『もっと見たい』『可愛いすぎた』『あっという間だった』『定期的にやってほしい』
「ええと、みんなありがとう。でもそろそろ時間も押してきたし、プチライブのほうに移ろうと思う」
『おけ』『了解ー』『ライブも楽しみ』『お歌!』『何歌うんだろ?』『テンション上がってきた』
なお、mytobeと著作権会社の契約により、歌はアカペラで歌うなら問題はない。
しかし、音源となるとそうもいかない。
今回のプチライブにあたり、俺が頭を悩ませていたのはその部分だったのだが。
なんと、それについてはとまるんがピアノで伴奏をして音源を作ってくれたのだ。
今日歌う予定だった曲を全てとなれば、かなり大変だったと思うのに「ミアさんの力になれるなら嬉しいです」と言って、嫌な顔一つせずにプレゼントしてくれた。
正直、ゲーム大会とか関係なく何でも言うことを聞いてあげたくなったよね。
私にできることがあったら言ってね、と伝えると「何でもですか?」と言われたので思わず目を逸らしてしまったが。
何でもはできないよ。
できることだけね?
そんなこんなで、俺はとまるんに感謝しつつ、音源データを再生した。
『お?』『この曲』『きたあああ!』『懐かしい』『テンション上がるわ』
かけたのは、とあるアニメのオープニングテーマだ。
そして、俺はその場で一回転し、そのアニメのヒロインキャラへと変身する。
そして、声を張り上げ歌い始めた。
『激熱』『これは熱い』『コスプレで歌うのか!』『カッコいい』『ミアちゃーん!』『こんなん惚れるわ』『ミアちゃんも神話になれえええ!』
今日俺が歌う曲は、全てコスプレショーで変身したキャラにちなんだ曲ばかり。
せっかくどちらも十万人記念配信でやるのだ。
独立させるのではなく、コスプレショーとプチライブを絡めたいと思ってしまったわけで。
ライブと題したはいいものの、俺は決して踊りは上手くない。
というか、ほぼ踊れないと言っていいだろう。
精々が曲に合わせてステップを踏んだり、適当にカッコよさげなポーズを取るだけだ。
だからこそ、視覚的な意味でもミア友に楽しんでもらおうと思えば一工夫が必要だったわけで。
コスプレはある意味都合が良かったのだ。
歌う。
ミア友に楽しんでもらえるように。
今までの感謝を込めて。
歌う。
真夜さん、とまるん、ギャル子さん、市子さんも、今日という日を迎えるに当たって多くの協力をしてくれた。
もちろん、カメラ師匠やモニターくんの支えも忘れてはいけない。
俺は本当に恵まれている。
口だけさんは……実は、プチライブを計画した際に、バックダンサーとして踊ってもらえないか頼んだことはあるのだが、完全に無反応だった。
まあそういうキャラではないだろうとは思っていたので、諦めはついたが。
キャラじゃないからこそ、踊ってくれたら盛り上がっただろうになあ。
それを聞いた市子さんが、自分が踊ろうか、と言い出して断るのに苦労したが。
何というか、百歩譲って口だけさんと一緒ならともかく、市子さん単体だとインパクトが強すぎる。
ミア友の目がそっちにしかいかなくなってしまう可能性を危惧して、俺は申し訳なく思いつつもお断りさせてもらった。
まあ、よく考えたら口だけさんが踊っていても、俺の存在感が食われてしまっていたかも知れない。
やっぱりソロでやって正解なのだろう。
そうして、何度着替えて、何曲歌っただろう。
音源が尽きたと同時に、俺は大きく息を吐いた。
同時に、コスプレを解除し、元のミアへと戻る。
「みんな最後まで付き合ってくれてありがとう。以上で、十万人記念配信を終わります」
『感動した』『良かったよ!』『良いライブだった』『ミアちゃん最高!』『アンコール! アンコール!』『ミアちゃん愛してるううう!』
「う、ぐすっ……み、みんなのおかげでここまでやってこれて、本当に本当に感謝して……ううー」
ダメだ。
涙が止まらない。
本当に涙脆くなってるな俺。
肉体年齢が幼くなったからなのか、それとも単純に俺が、いや、ミアがそういう子なのか。
とにかく、俺は改めてみんなに感謝の言葉を伝えた。
『また泣いてるw』『ミアちゃん!』『全俺が泣いた』『ええんやで』『泣かないで』『結婚しよう』『開幕でも見た気がww』『頑張れミアちゃん!』
「う、うん、とにかく、これからも、頑張っていくから、みんなよろしくね、ずっと、ミア友でいて、ね」
『草』『もちろんだ』『よろしくううう!』『僕たち、ずっとミア友だもんげ!』『泣かないで』『大丈夫? 結婚する?』『次は百万人目指そう』『ずっと好きだよ』
温かい言葉に、思わず笑みが溢れる。
本当に俺は恵まれている。
元々は少数でもいいから、お話しできる人が欲しかっただけなのに、思えば遠くに来たものだ。
ただ、登録者数が何人だろうと、俺のやることは変わらない。
こうして、俺の配信を見に来てくれる人に楽しんでもらえるよう、そして俺も楽しめるように、お互い良い関係を築いていけたらと思う。
「みんな、本当にありがとう! ばいみゃー!」
『ばいみゃー!』『ありがとー!』『ばいみゃあああ!』『楽しかった!』『ミアちゃん大好き!』『今度はスク水着てください!』『ミアちゃんなら百万人とかすぐや』
よし、これからも初心を忘れずに頑張るぞ!
◯
【十万人】幽霊配信者ミアちゃん応援スレpart13【おめでとう】
247 視聴者の名無しさん ID:
ライブよかったわ
感動した
248 視聴者の名無しさん ID:
やっぱミアちゃんだわ
249 視聴者の名無しさん ID:
あんな若い涙見せられるとさ
おじさんキュンキュンきちゃう
250 視聴者の名無しさん ID:
ひょっとしてあなたのキュンキュンとは不整脈なのではないでしょうか
251 視聴者の名無しさん ID:
草
なんだそれw
252 視聴者の名無しさん ID:
やめたれwww
おじさんがキュンキュンしても別にええやろwww
253 視聴者の名無しさん ID:
いやマジで良かった
ゲームは楽しいし、コスプレから歌の流れが神がかってたわ
254 視聴者の名無しさん ID:
コスプレよかったよな
人気キャラがみんなロリキャラになってるのは笑ったけど
255 視聴者の名無しさん ID:
ミアちゃんがコスプレするからどうしてもロリキャラになるんだよなw
256 視聴者の名無しさん ID:
ロリ綾波可愛い過ぎて変な声出た
257 視聴者の名無しさん ID:
鬼がかってますね
258 視聴者の名無しさん ID:
マジでこれだけで食っていけるレベル
収益化しないのが勿体無い
259 視聴者の名無しさん ID:
ミアちゃんが可愛すぎて生きるのがつらい
260 視聴者の名無しさん ID:
俺ロリコンじゃないけどミアちゃんは可愛いと思う
261 視聴者の名無しさん ID:
>>260
ロリコン乙
262 視聴者の名無しさん ID:
上手くないけど一生懸命踊ってるのがいい
263 視聴者の名無しさん ID:
コスプレショーも定期的にやってほしいな
264 視聴者の名無しさん ID:
髪色から服装全部自由自在だからな
前も言われてたけどコスプレ性能高すぎる
265 視聴者の名無しさん ID:
しかもロリになるという
266 視聴者の名無しさん ID:
ロリコンアニメファンの聖地になれそう
267 視聴者の名無しさん ID:
あの廃墟が巡礼スポットになるのかw
268 視聴者の名無しさん ID:
心霊スポットから巡礼スポットに格上げは草
269 視聴者の名無しさん ID:
実際一回は行ってみたい
270 視聴者の名無しさん ID:
お前ら特定するなよ!
絶対するなよ!
271 視聴者の名無しさん ID:
言うてあの部屋だけじゃな
外も映ってないしミアちゃんの行動範囲的に東京っぽいということしかわからん
272 視聴者の名無しさん ID:
その辺にしとけ
推しの住所特定とか困らせるだけやぞ
273 視聴者の名無しさん ID:
それな
ミアちゃんが楽しそうに配信してくれるだけで僕は満足です
274 視聴者の名無しさん ID:
百万人記念は武道館を貸し切ろう
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