44 三人コラボするぞ(後)

 そして、恒例のマシュマロタイムとなったわけだが。

 

「実は、マシュマロなんだけど私たちもお互いがどんなマシュマロ選んだか知らないんだよね」


 そのほうが面白いだろうと真夜さんが言うので、今回は解答を事前に用意していないのだ。

 

 俺としては初めての試みなので、ちゃんと答えられるかどうかドキドキなのだが、真夜さんやとまるんは平然としている。

 この辺は配信者として過ごしてきた経験が違うのかも知れない。

 

『いいね』『楽しみ』『クソマロ来い!』『ヤバいのくる?』『わくわく』『まよまよが何選んだのか怖いw』


「じゃあ、まずは私の選んだマロからいくね、じゃん!」


『じゃん!』『じゃんじゃん!』『じゃんすこ』『じゃんじゃんしていけ』『じゃんがゲシュタルト崩壊する』


 そう言って、俺は画面に文章を表示した。

 

【みんなの趣味おしえて】


『うーんこの』『無難』『いまさら!?』『ちょっと興味ある』『つまらん』『ミアちゃん?』


「なんでだよ! よく考えたら、真夜さんとかとまるんの趣味って知らないなって思って! いいだろ別に!」


 全く、ミア友は……。

 いつでもボケを期待してたらいけないんだぞ!

 

 俺はトップバッターだし、まずは無難なところから始めるのが普通だろう。

 いきなり気をてらっても良いことはないからね。

 

「ちなみに、私の趣味は配信かな」


 俺が鼻息荒くそう言うと。

 

「私の趣味も配信だよー」

「あ、えっと、その、わ、私の趣味も配信です」


 真夜さんととまるんが答えた。


 あっ……。

 

『草』『草』『それはそう』『全員配信者だからね』『ミアちゃん?』『ミアちゃんは悪くないよ』『やっちまったなあ?』


「う、うううう」


 よく考えたら当たり前の話だったかも知れない。

 ここにいる人間はみんな配信中毒なのだ。


 一番の趣味なんて他に無いに決まっている。

 

「うううぅぅー」


 あまりの屈辱に唸るしかできない俺。

 

「ま、まあまあミアミア、落ち着いて。ええと、配信意外の趣味ってことなら、私は怪談とかオカルト話読むことかな? 非日常感が好きなんだよね」

「私は音楽鑑賞と読書です。ゆっくりとした時間が過ごせるのがいいです」


 真夜さんととまるんが慌ててフォローしてくれる。


 うう、二人とも優しい。


 俺は何とか気持ちを持ち直した。

 そして小さく呟く。


「……ちなみに、私の趣味はゲームね」


『草』『知ってた』『草』『それはそう』『それしかないねw』『ゲーム大好きミアちゃん』


「はいはーい! じゃあ気を取り直して、次は私が行くよ! 私のマロはこれだ!」


 そう言って、手書きの紙を取り出す真夜さん。

 パソコンを介せばネタバレになるかもということで、まさかの紙媒体なのだ。

 

 そこには、真夜さんらしい大きな文字で。


【一番好きな人を一人だけ教えろください(ファン以外で)】


 と、書いてあった。


 瞬間、真夜さんととまるんの視線が交錯する。

 

『あっ』『あっ』『草』『これは』『興味あります』『ファンという逃げ道を封じてて草』『限定しまくってて草』『意地でも答えさせるという意思を感じる』


「ちなみに、私はミアミアだよ! ミアミアにはお世話になってるし、一番の大親友だからね!」

「私もミアさんです。ミアさんには色々助けていただいて……。本当に感謝しています」


 そして、二人の視線が俺に集中する。

 え、え、何この空気。

 

 二人が俺のことを一番だって言ってくれるのは嬉しい。

 でも、素直に喜べないというか、妙なプレッシャーを感じるのは何故だろう。

 

 取り敢えず、嫌な予感がした俺は全力で逃げを打った。

 

「お、お母さんかな」


『草』『お母さんww』『お母さんは草』『小学生だもんね』『まあその年齢で親元離れたらなあ』『これは仕方ない』


 剣呑な空気は薄れて、真夜さんもとまるんも同情的な雰囲気を出している。

 どうやら助かったらしい。

 おかげでマザコンのレッテルを貼られそうだが、背に腹は変えられない。

 

「ミアミア、私のことお姉ちゃんだと思っていいからね」

「私も、何かあったら遠慮せずに頼ってください」


 二人から優しい言葉をいただいたことで、少しだけ罪悪感が刺激された。

 うう……。

 

「じゃあ、次は私ですね。私が選んだのはこちらです」


 そして、とまるんも一枚の紙を取り出す。

 そこは可愛らしい丸文字でこう書かれていた。

 

【どうすれば霊視できるようになりますか?】


 とまるん?

 

『草』『草』『私欲で草』『これは……』『選び方に意図を感じる』『よっぽど見えるようになりたいんだなw』


「とまちゃん、人間諦めが肝心だよ」

「え、で、でも、まだ諦めるほど何もしてないというか、可能性はありますよね?」


 あるのかなあ?

 そりゃ全力で色々試せば可能かも知れないが、どうしてもリスクはつきまとうし、とまるんに危ないことはしてほしくない。

 

 まあ霊なんか見えないほうがいいと思うよ、うん。

 

「ええと、じゃあ次のマロ行こうかな」

「ミアさん!?」


 とまるんの悲痛な声が聞こえるが、心を鬼にしてスルーすることにした。

 うう……ごめんよ、とまるん。

 

 そうして、俺たちは順調にマシュマロを消費していく。

 

 一通り読み終わった頃には、結構な時間が経っていた。

 やっぱり三人いれば話も膨らむし、時間経過が早い。

 

「じゃあ、マシュマロも終わったし、三人でゲームしよっか!」


 そう言って真夜さんが取り出したのは、いつぞやの落ちものゲームだ。

 

 俺の目がギラリと光る。

 

 結局、前回俺と真夜さんの戦績は五分。

 完全なる引き分けだった。

 

 しかし、以前とは違い今回はミア友が見ている。

 情けない姿を晒すわけにはいかない。

 

「ふふふ、いいよ真夜さん。今日は勝たしてもらう」

「ふっふっふ、ミアミア、あれから特訓を積んだ私に勝てるかな?」

「わ、私も頑張ります!」


 一勝します、と意気込むとまるんに癒されながら、俺たちは負け抜けでゲームバトルをスタートする。


 そして、熾烈な争いが行なわれることしばらく。


 結果として、俺と真夜さんの戦績は今回も引き分けに終わった。


 ぐぬぬ。

 これは本格的に同じゲームを入手することも検討しないといけない。


 さすがにゲーマーを自称する俺が、このままではいられないからね。

 

 ちなみに、とまるんは予想通り全敗した。

 可愛いね。

 

 

 ◯

 

 

【十万人】幽霊配信者ミアちゃん応援スレpart13【おめでとう】


 37 視聴者の名無しさん ID:

 とまるん下手すぎわろた


 38 視聴者の名無しさん ID:

 弱すぎて可愛いw


 39 視聴者の名無しさん ID:

 むしろまよまよが結構上手いな


 40 視聴者の名無しさん ID:

 まよまよもたまにゲーム配信やってるからな


 41 視聴者の名無しさん ID:

 不覚にもミアちゃんの一番好きなのはお母さんに萌えた


 42 視聴者の名無しさん ID:

 わかるw

 ミアちゃんあんまり子どもらしいこと言わないからw


 43 視聴者の名無しさん ID:

 なんだかんだで小学生だからな

 親は恋しいのかも


 43 視聴者の名無しさん ID:

 実際ご両親には幽霊になったこと伝えないのかな?


 44 視聴者の名無しさん ID:

 前にもう一回悲しませるのが怖いみたいなこと言ってなかったっけ?


 45 視聴者の名無しさん ID:

 幽霊でもいてくれるだけで嬉しいと思うけどなあ


 46 視聴者の名無しさん ID:

 まあその辺はな

 俺らが口出すことでもない


 47 視聴者の名無しさん ID:

 言ってもこれだけ有名になれば気付かれるのも時間の問題


 48 視聴者の名無しさん ID:

 確かに遅かれ早かれな気はする


 49 視聴者の名無しさん ID:

 いっそ俺がお義父さんになるわ


 50 視聴者の名無しさん ID:

 じゃあ俺はお義母さんになる!


 51 視聴者の名無しさん ID:

 >>49

 >>50

 結婚おめ


 52 視聴者の名無しさん ID:

 草


 53 視聴者の名無しさん ID:

 スレから婚約者が出たと聞いて


 54 視聴者の名無しさん ID:

 幸せになれよw


 55 視聴者の名無しさん ID:

 結婚といえばまよまよととまるんでミアちゃん取り合ってたけどどっちが本妻なん?


 56 視聴者の名無しさん ID:

 ギャル子さんだろ


 57 視聴者の名無しさん ID:

 市子だろ


 58 視聴者の名無しさん ID:

 口だけさんだろ


 59 視聴者の名無しさん ID:

 俺だろ


 60 視聴者の名無しさん ID:

 >>59

 それはない


 61 視聴者の名無しさん ID:

 >>59

 しね


 62 視聴者の名無しさん ID:

 マジレスするととまるん

 何故ならミアちゃんはとまるんの大ファンだから


 63 視聴者の名無しさん ID:

 ファンとそういうのはまた別じゃね?

 まよまよとは一緒に旅行行ってるし本命はそっちだと思う


 64 視聴者の名無しさん ID:

 >>63

 とまるんとも旅行いく予定だろうが!


 65 視聴者の名無しさん ID:

 既に行ったものとこれから行くかも程度の差はでかい


 66 視聴者の名無しさん ID:

 とまるんは霊も見えないしな


 67 視聴者の名無しさん ID:

 とまぁ!!


 68 視聴者の名無しさん ID:

 赤ちゃん怒ってて草


 69 視聴者の名無しさん ID:

 霊視できないことがここまでウィークポイントになるとはw


 70 視聴者の名無しさん ID:

 でも十万人配信まで後三日か


 71 視聴者の名無しさん ID:

 楽しみだわ


 72 視聴者の名無しさん ID:

 まさかの全部乗せは笑った


 73 視聴者の名無しさん ID:

 大丈夫なのかなw

 無理しないといいけど


 74 視聴者の名無しさん ID:

 コスプレショーには期待してる


 75 視聴者の名無しさん ID:

 プチライブって何やるの?


 76 視聴者の名無しさん ID:

 ミアちゃんが歌って踊る

 なお場所はいつもの廃墟


 77 視聴者の名無しさん ID:

 ステージ借りられればなあ


 78 視聴者の名無しさん ID:

 それな

 まあでもミアちゃんがライブしてくれるだけで満足だわ


 79 視聴者の名無しさん ID:

 早く三日後にならねえかな

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