42 ギャル子さんとコラボするぞ
「そんなわけで、今日はギャル子さんとコラボしていくぞ!」
『きちゃああああ』『こんみゃああああ!』『待ってた!』『ギャル子さんきたー!』『ミアちゃん可愛い』『ギャル子と聞いて』
盛り上がるミア友。
画面上では、俺とギャル子さんが廃墟に一緒にいる様子が映し出されているはずである。
そう、何と夜の十九時にも関わらず、ギャル子さんはわざわざ家まで来てくれたのだ。
まさかのオフコラボ。
さすがに夜に一人で帰すのは危ないので、最初は断ろうとしたが「終わるの二十時とか二十一時でしょ? そんな心配いらないって!」と笑うギャル子さんに押し切られてしまった。
まあ夜道は姿を消して、俺が送っていけば大丈夫かな?
よく考えたら、何気にコラボするの二回目なんだよな。
最初に真夜さんとやって以来である。
しかも、俺の枠でやるのは初めてなので、今日は少し緊張しているのだ。
「やっぴー、ミア友のみんな、ギャル子でっす。高二だよ!」
カメラに向けて横ピースを決めるギャル子さん。
ちなみに、ギャル子さんの配信者ネームはそのままギャル子である。
実は気に入ってたのかな。
何にせよ、わかりやすくて助かるのだが。
「今日はミアっちに無理言ってコラボ組んでもらっちゃった。ミアっちありがとー!」
「いやいや、ギャル子さんとのコラボが見たいっていうミア友もいたし助かるよ」
「それなら嬉しいなー。あたしもミア友だからミア友の人たちとは仲良くやりたいし」
ウシシと笑うギャル子さんは、同性の俺の目から見ても可愛いと思う。
『可愛い』『仲良くしよう』『ミアちゃんは渡さん』『俺はミアちゃん一筋やで』『ギャル子さんチャンネル登録した』『ミア友だったのか』
「そだよーミア友。っていうか? ガチ友だから真ミア友とかそんな感じ?」
『お? 喧嘩か?』『草』『マウント取ってて草』『羨ましいいいい』『俺も真ミア友になりたい』『俺たちは偽物だった?』
「もう、ギャル子さん! 偽物とかないからね。みんな大事だよ」
全くもう。
勝手に喧嘩を始めないでほしい。
確かにギャル子さんは友達だが、ミア友だって俺に取っては大切な仲間だ。
居なくなることなんて考えたくもないし、どっちも大事なんだから仲良くしてほしい。
「じゃあ早速マシュマロ読んでいこうかな! 時間なかったのにたくさん送ってくれてみんなありがとう!」
「あざまる!」
あざまる?
さて、では第一弾のマシュマロを画面上に表示してと。
あまり時間は無かったが、一応配信前に軽く打ち合わせは済ませてある。
事前のやり取りでは特に問題はなさそうだったが。
「じゃあ第一弾はこちら! じゃん!」
【お互いの第一印象を教えてください】
『じゃん』『じゃんじゃん』『定番のやつ』『まずは基本からか』『地味に気になる』
「ええとね、これはもう出会いが出会いだから侵入者のギャルだね」
『草』『それはそう』『そのまんまww』『そういえば侵入者だった』『よく仲良くなれたなw』
実際それ以外に言いようがないからね。
一緒に来てた男連中の印象が最悪すぎるから、そういう意味ではまだ好意的に見れたけど。
「あたしはあれかなー。何か怖いの来たーって感じ? 元々何かいるのはわかってたから、ビビりまくっててさー。姿見せてくれてからは優しくて可愛い子だって思ったけど」
『あー』『そういえば見える人だっけ?』『そりゃ廃墟で幽霊出てきたらビビるわ』『ミアちゃんなら会いたいけどな』『ちょっと近くの廃墟行ってくる』
ギャル子さんは最初蜘蛛神様の気配を感じていたらしいから、そりゃそんなとこから幽霊が出てきたら驚くだろう。
そもそも何故そんな危険な場所に来たと思わなくもないが、例の男連中なら自分たちだけでもやって来かねないし、放っておけなかったのかも知れない。
優しいっていうのも大変だ。
「じゃあ二つ目いくよ! じゃん!」
【二人は今後どうなる?】
『ほほう?』『どうなるって何だよw』『抽象的すぎて草』『どうにかなってしまうのか?』『ギャルミアちゃんになっちゃうの?』
「ええと、ギャル子さんとどんな関係になりたいかってことでいいのかな? これはね、良いお友達になれたらなーって思ってるよ」
「うーん?」
俺がそう言うと、ギャル子さんは悩むように人差し指を顎に当てた。
え、なにその反応。
俺と友達は嫌なのかとハラハラしてしまう。
「あたしさ、一人っ子だから弟か妹欲しかったんだよね。だからミアっちとは姉妹みたいになれたらっていうか、なんなら今日からお姉ちゃんって呼んでくれてもいいよ?」
『ガタッ』『キマシ』『おっと?』『姉子さん……ありだな』『てぇてぇ』『まよまよが嫉妬しそう』『僕のお姉ちゃんになってください』
え、ええ?
申し出は非常にありがたいのだが、なんというか……照れる。
そもそも、俺の中でギャル子さんはギャル子さんだからね。
完全に友達認定しちゃってるので、今更変更するのも難しい。
「し、姉妹と同じくらい仲良くしようってことなら?」
「おっけおっけ、仲良くしようぜミアっちー!」
ギャル子さんは嬉しそうに笑うと、俺のほうに頬を擦り寄せてきた。
う、うわ?
触れはしないけど、ビックリするから不意打ちはやめてほしい。
「うりうりー」
「ギャ、ギャル子さんちょっと落ち着いて……」
『ああ〜』『てえてえ』『ギャルミア派のワイ歓喜』『浮気ですか?』『真夜:私のミアミアが……』『草』『まよまよいて草』『見てたのかw』『とまれ:いいなあギャル子ちゃん』『とまるんもいるじゃねえかww』『戦争不可避』『モテモテで草』
え、二人とも見てくれてたの!?
嬉しい反面、何だか余計に恥ずかしくなったので、取り敢えずギャル子さんとは離れておいた。
「ミアっち照れてる〜?」
「もうっ、ギャル子さん!」
いいから、もう次行くよ!
「じゃあ三通目はこちら! じゃん!」
【僕とギャル子さんどっちを取るんですか?】
『クソマロwww』『草』『お前誰だよww』『これはクソマロ』『何故採用したww』『図々しいぞw』
「これはミアっちへの質問かな?」
「そ、そうっぽいね」
「で?」
ギャル子さんがじっと見つめてくる。
「あたしとこいつどっち取るん?」
俺はそっと目を逸らした。
まずこいつって誰だよ。
面白かったので採用したが、比べる対象が誰なのかすら知らないよ。
しかし、俺は全てのミア友を愛している。
もしこいつがミア友なら、先ほども言ったようにどちらかを選ぶような話ではないのだ。
「ええと、この人がミア友なら、ギャル子さんと同じなので、両者ドロー。引き分けということで……」
「ブーッブーッ! ミアっちの優柔不断! いけず! スケコマシ!」
真夜さんみたいなこと言わない。
ていうかスケコマシってなんだよ!
全然違うよ!
「じゃあこれはここまで、終了ということで! そんなわけで次は……」
そうして、順調にマシュマロを消化していく。
マシュマロを消化し終わった頃には、それなりに良い時間になっていた。
「さて、じゃあそんなわけで、次はギャル子さんとゲームをしたいと思います」
「いえーい!」
ギャル子さんが拍手してくれる。
ふふふ、しかしいつまでそのノリでいられるかな?
実は、俺はギャル子さんにはゲームをやるとしか伝えていない。
その内容については完全に伏せているのだ。
というのも、最初は普通にスラッシュブラザーズでもしようと思っていたが、せっかくのオフコラボ。
何か特別な催しが出来ないかと考えたのだ。
「そんなわけで、題して市子さんゲームを始めたいと思います!」
「え、何それ?」
困惑するギャル子さん。
『市子!?』『市子さんゲーム!?』『嫌な予感』『名前からしてヤバいw』『どういうゲームww』『不穏で草』
実は最近、市子さんの自我の成長が著しく、どうもファッションを気にするお年頃になってしまったようなのだ。
自分のおカッパ頭がダサいんじゃないかと気にしているらしい。
市松人形が何を言っているのかと思わないでもないが、心が乙女だというなら、無碍にするのも躊躇われる。
そんな時、ギャル子さんが家にやってくることになった。
どうやら、市子さんはギャル子さんをイケてる女だと認識していたらしい。
彼女のようになりたいそうだ。
難しいんじゃないか、などと残酷なことは言えない。
なら、ギャル子さんに髪でも切ってもらうかと提案したところ、大はしゃぎ。
今日は朝からソワソワしっぱなしだったと言っていい。
なので、是非市子さんの髪を切ってもらいたいのだ。
それで市子さんが気に入ればギャル子さんの勝ち。
気に入らなければ負けというゲームをすることにした。
最悪失敗しても市子さんの髪はすぐに生やせるからね。
ノーリスクではあるのだ。
と言うようなことを、ギャル子さんとミア友に説明した。
『草』『ギャル子が理想かよw』『可愛い』『市松人形なのにおカッパが嫌なの草』『面白そう』『市子、色を知る年齢か!』
「え、ええー、あたし、人の髪切ったことなんてないけど?」
「まあまあ、どうせ失敗してもすぐ生やせるから、やってあげてくれないかな? 市子さん朝から楽しみにしてたんだ」
そう言って、市子さんを連れてくる。
その顔は心なしか輝いていて、己の変化を心待ちにしている様子が伝わってきた。
「ま、まあ、じゃあそこまで言うならやってみるし」
そう言って、俺が渡したキッチン鋏を受け取るギャル子さん。
『あっ』『おいおい』『鋏ぇ……』『始まる前に終わってて草』『市子逃げろ』
え、これじゃダメなの?
一応、汚れや錆は可能な限り除去してある。
家にこれしか無かったから仕方ないというか、切れればいいんだしいけると思うんだが。
どうしようかと悩んでいる間に、ギャル子さんが動いた。
「いくし」
震える手を髪に沿わせ、思いっきり大胆に。
あ。
ジャキンと、破滅の音が響いた。
そのまま立て続けに鋏が動かされる。
まるで何かが見えているかのようにカットし続けるギャル子さんは、絶対に美容師になってはいけない人間なのだと俺は思った。
そして、僅か二分程度でそれは終わる。
「で、できたけど……」
『草』『市子ぇ』『これは……』『可哀想』『前衛芸術かな?』『さすがの俺でもこれは引くわ』
ところどころハゲて、前髪はパッツンパッツン。
左右不揃いすぎて、まるで幼児に髪を引っ張り回された後のような悲惨な姿の市松人形がそこにいた。
「え、ええと、すぐに生えるんだよね?」
ギャル子さんが聞いてくる。
生えるよ、生やそうと思えばいくらでも生えるけど。
市子さんが振り返る。
俺たちは同時に身体を震わせた。
その瞳は『私イケてる?』と聞いてきているようで、俺たちは言葉に詰まってしまった。
結局、鏡で自分の姿を見た市子さんが、何故かその髪型を気に入ってしまったことで、ゲームはギャル子さんの勝ちとなった。
自分をイケてる女だと思い込む市子さんに本当のことなど言えるはずもなく。
結局、その後、ギャル子さんと二人で前の髪型がいかに良かったかを語り尽くすことで、何とか元に戻ってもらうことができた。
危なかった……。
◯
【トレンド】幽霊配信者ミアちゃん応援スレpart12【もう遅い】
547 視聴者の名無しさん ID:
市子ぇ……
548 視聴者の名無しさん ID:
いいコラボだった
549 視聴者の名無しさん ID:
楽しかったわ
またやってほしい
550 視聴者の名無しさん ID:
この二人結構相性いいのかな?
551 視聴者の名無しさん ID:
まよまよ派のワイ、複雑な気持ち
552 視聴者の名無しさん ID:
ミアちゃんはとまるんのファンなんやぞ?
ミアとま最強に決まってるわ
553 視聴者の名無しさん ID:
>>551
>>552
正式に三人コラボの日取り決まったんだし落ち着け
554 視聴者の名無しさん ID:
とまるん風邪治ってよかったな
556 視聴者の名無しさん ID:
三人コラボも楽しみ
559 視聴者の名無しさん ID:
とまるんといえば幽霊の鳩のせいで風邪治らなかったって聞いたけどマジ?
560 視聴者の名無しさん ID:
マジやぞ
今日の配信で嬉しそうに言ってた
563 視聴者の名無しさん ID:
名前もつけたらしいな
ポッコちゃんとか
564 視聴者の名無しさん ID:
ポッコちゃんwww
565 視聴者の名無しさん ID:
センスwww
568 視聴者の名無しさん ID:
なんでだよ!
可愛いだろ!
569 視聴者の名無しさん ID:
でもとまるん霊見えないよな?
まよまよならともかく
571 視聴者の名無しさん ID:
それめっちゃ羨ましがってたわw
なんとか霊視できるようになりたいみたい
573 視聴者の名無しさん ID:
霊視できるようになるのが良いことばかりとは限らないから難しいね
574 視聴者の名無しさん ID:
というか普通は良いことなんかないだろう
ミアちゃんがいるから錯覚してるだけで普通に危ない
577 視聴者の名無しさん ID:
どうだろうな
俺ならむしろ無自覚に巻き込まれるよりは意識して避けたいが
579 視聴者の名無しさん ID:
まあ即死とかじゃなければ最悪ミアちゃんが何とかしてくれそう
581 視聴者の名無しさん ID:
さすミア
583 視聴者の名無しさん ID:
実際神殺しだし霊関係の信頼感はすごい
585 視聴者の名無しさん ID:
俺もミアちゃんに守ってほしいわ
586 視聴者の名無しさん ID:
>>585
俺も
588 視聴者の名無しさん ID:
そんなんみんなそうだろw
589 視聴者の名無しさん ID:
俺は守ってあげたい派だけどな
591 視聴者の名無しさん ID:
なんかめっちゃスレ番号飛んでるんだけど荒らし来てる?
594 視聴者の名無しさん ID:
例の荒らしきてるね
放っとけ
596 視聴者の名無しさん ID:
まあしゃーない
荒らしも早くミアちゃんの可愛さに気付くといいな
599 視聴者の名無しさん ID:
ミアちゃんの可愛さが世界を救うと信じて
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