第6話 口が悪い

「おつかれ~。どう? お兄ちゃん。囮になるイメトレは完璧? こっちはシャイニングバスターで触手を吹き飛ばすシーンを何回も想像してるよ」


「あれ? ちょっとレベル上がってる? もしかして他の人とパーティ組んだの? どうやって……」


「ふーん。ヒーラーの方から……ねぇ。どうせ見た目重視の弱い装備をした女の子だったんでしょ。中身はおっさんだよ」


「はいはい。私が最高のパートナーだって言うなら私を触手から守ってね。毒になっても麻痺になっても絶対に逃げちゃダメだよ」


「シャイニングバスター1発じゃ倒せない? そんなのわかってるよ。最高の見せ場を作るためにお兄ちゃんに削ってもらって、とどめを私が刺すの」


「回復魔法を使わなければ2回撃てるから、1回は触手に捕まりそうになったら使って、最後の1回はとどめ用に取っておく。完璧でしょ」


「お兄ちゃんだってレベル上がってるじゃん。アイテムで自力回復しながらゾンビ戦法すれば大丈夫だよ」


「そっかそっか。そんなに私に癒してほしいか。男の人ってみんな赤ちゃんになりたいって聞いたことあるよ。あまえんぼなんだから」


「いいんだよ。二人きりのボイチャだから甘えても。赤ちゃん言葉になっても私は引かないよ」


「いい子でちゅね~。ママのことだいちゅきでちゅか? 素直に甘えてもいいんでちゅよ~」


「……ちょっと。ノってくれないと恥ずかしいじゃん」


「お姉さんにもママにも反応しないなんて……やっぱりお兄ちゃんは年下がいいの!? まさかロリ!?」


「そうだよね。最後にリアルで会ったのは小学生の私だもんね。思い出の私が可愛すぎて忘れられないものわかる。うんうん」


「でもね、人間は成長するものなの。高校生になって大人の階段を上った私のことをちゃんと見てほしいな」


「あまえんぼうのお兄ちゃんをあやすくらいできるんだから。ほら、甘えていいよ」


「って、もう触手の近くだ。残念だったね。せっかくのあまえんぼうチャンスを逃しちゃって。ここから先はヒーラーであり戦士だから甘い言葉なんて出てこないよ」


「うわあ! やっぱりキモい。なんでテカテカしながらウネウネしてるんだよぉ。ひゃあっ!!」


「攻撃魔法は詠唱速度を上げてないからちょっと囮になってて! シャイニングバスターさえ撃てればこっちが有利だから!」


「ひいいいいいい。ほぼ無詠唱みたいな速度に慣れてるからハラハラする~。まだかなまだかな。この瞬間のためにレベル上げ頑張ったんだから」


「いくよ!! シャイニングバスタアアアアア!!!!!」


「死ね死ね死ね死ね!!! 聖なる光がそのキモい触手を焼き払ってくれる。あーっはっはっはっはっは!!」


「え? 口が悪い? 昔からこんなもんでしょ。もちろん学校ではこんなこと言わないよ。でもほら、私の綺麗な体を汚した触手に暴言が出るのは自然っていうか……お兄ちゃん、ボーっとしてないで攻撃攻撃」


「シャイニングバスターのクールタイムはお兄ちゃんの出番だよ。回復に使えるMPは全然残ってないからアイテムでよろしく」


「チッチッチ。シャイニングバスターの習得と同時に攻撃魔力を高める特技も習得しているのだよ。その分のMPと最後のシャイニングバスターのMPをちゃんと確保してるってわけ」


「だって威力2倍だよ? 継続ダメージも倍になるからヒーラーが最高火力っていう話もあるんだから」


「うわあっ! 触手が再生した。早くない!? シャイニングバスターのクールタイム長すぎだよぉ」


「助けておにいちゃあああああん!!!」


「あああああ!!!! お兄ちゃんが死にかけてる! どうにかアイテムで耐えて。あと2秒で……」


「ぶっ放すよ!!威力2倍のシャイニングバスタアアアアアアアアアア!!!!!


「あはははははは!!! 触手にも本体にもどんどんダメージが入る。すごいすごい。撃てれば最強だよ」


「ざぁこざぁこ。いやらしくヒーラーを狙ったのに、そのヒーラーに焼き払われるのはどんな気持ち?」


「こういうのメスガキって言うんだっけ? お姉さんでもママでも可愛いロリでもなく、まさかこういうのが好きとか!?」


「ねぇねぇ、お兄ちゃんはどのタイプが好きなの? 報酬の確認も大事だけど質問に答えてよぅ! ねぇってば!」


「……ざぁこざぁこ。ボロボロのくせに助けを求めらず質問にも答えれないザコお兄ちゃん」


「いたっ! 剣で叩くのはズルいよぉ。ダメージは入らないけど見た目が痛い。深く傷ついた。その毒は回復してあげない」


「え? 毒消しもちゃんと持ってるの? そっか……回復魔法には頼れないからちゃんと自分で……うん、私がお願いしたことだけどさ、そこまで入念に準備じてるとは思わないじゃん」


「いや~今日の勝利はお兄ちゃんのおかげだよね。一人だったらそもそも触手に捕まってシャイニングバスターを使えなかったわけだし。クールタイムもお兄ちゃんが耐えてくれたからあの必殺の一撃を繰り出せたんだよ。とどめを刺したのは私だけどMVPはお兄ちゃん! よっ! 最高の戦士!」


「むぅ……手強いなぁ。あ、そうだっ! この前言ってたご褒美で良いの思い付いた!」

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