第2話 結び付かない

「そういえばさ、この前のクイーンレンジャー超熱かったよね! 年々おもしろくなるから卒業なんてできないよ」


「一人称が俺だった話はもういいでしょ。だって、子供の頃は戦隊と言えば男の人がメインだったんだし」


「今年の戦隊はおもいきったよね。男女比が今までも逆なんだもん。私はイエローの女王様が好きかな。ただのわがままなお嬢様かと思いきや国民の生活を向上させるための振る舞いだったとか超カッコいい!」


「お兄ちゃんはパープルのお姉さんでしょ? 昔から好きだよね~、クールなお姉さん。でもそろそろ役者さんがお兄ちゃんの年齢を超える頃だよ? お姉さんキャラを演じているのが年下でした、みたいなことも発生するよ」


「お姉さんはお姉さんって? 現実を見ようとお兄ちゃん。そしたら私だって年下のお姉ちゃんになるってことだよ」


「最後にリアルで会ったのは私が小学生の時だもんね。あれから成長して大人になったんだよ? 私が本気で誘惑したらお兄ちゃんなんて簡単に落とせるんだから」


「全然結び付かないって失礼すぎない!? 渾身のお姉さんボイスでお兄ちゃんを誘惑するから覚悟しなさい。んっ! あーあー、ん゛っ」


「うっふ~ん。可愛いボウヤ。一生懸命攻撃しちゃって。でも、攻撃してるだけじゃボスには勝てないわ。お姉さんのペットになるなら回復してあげてもいいわよ」


「…………あっは~ん。照れなくてもいいのよ? む、無視しないで。ほら、ちょっと体力が削れてきてるわ。回復しないとボスに辿り着く前に倒れちゃうわよ」


「お兄ちゃん! 聞こえてるのはわかってるんだよ! さっきから笑うの堪えてるんでしょ。あ……本当は照れ隠しだ。ゲーム中にムラムラするのを誤魔化すためにわざとプルプル震えてるんだ。そうだよね、大学生の男子なんてそんなもんだよね」


「おーい。お兄ちゃん。フレンドの声を無視するのはよくないよー。こっそりアイテムで回復してるし。ま、まあボス戦までにMPを温存しなきゃだしね。先を見据えて行動するのは素晴らしいと思うよ。だからね、ほら、きちんと対話を」


「うぅ……私はお姉さんにはなれないですよぉだ。どうせ小学生の私だと思ってるんでしょ。本当にあの時からすごい成長したのにな~。あーあ、女の子と縁のないお兄ちゃんにはもったいない可愛い子になったのになあ~」


「おっと、私の耳は聞き逃さなかったよ。今、ごくって唾を飲んだでしょ。今使ってるヘッドフォン、超高性能なんだから。お兄ちゃんのどんな小さい音でも逃さないからね!」

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