まずはフレンドから

くにすらのに

第1話 フレンド

「おつかれ。今日は早いね」


「そっか。そっちは雨なんだ。こっちは超晴れてるよ。もう暑くて暑くて。エアコンが効いた部屋でゲームするのが人生の目標と言っても過言ではないね!」


「なによ。お兄ちゃんだって似たようなものでしょ。でも今でも信じられない。お兄ちゃんが大学でフットサル部に入るなんて」


「ごめんごめん。ゲーム中にリアルの話はNGだっけ。そんなに気にしなくていいのに。どうせ私とお兄ちゃんだけのボイチャなんだし」


「そもそも名前が安直すぎない? 私見習った方がいいよ。絶対に誰も本名を特定できないから」


「すぐわかるって? それはお兄ちゃんだからでしょ。本名から文字を拝借しつつ好きな人から一文字もらったの」


「好きな人くらいいるわよ。女子高生ですもの。気になる? どんな人か気になっちゃう?」


「はぁ……まったくお子ちゃまなんだから。お兄ちゃんこそ彼女いないの? ……って、彼女がいたら私とゲームなんてしないか」


「そうよ。私だって彼氏いません。そのおかげでお兄ちゃんは優秀なヒーラーである私と共に冒険できるんじゃない」


「恩着せがましいとは失礼ね。ヒーラーがいなければアタッカーなんてボスに倒される運命なんだから。悔しかったら一人でボスを倒してみせてよ。ざーこざーこ」


「……ごめんなさい。ヒーラーだけじゃボスは倒せません。お兄ちゃんが危険を顧みず攻撃してくれるおかげで私は高級素材をゲットできています」


「これからもたくさん回復させてください……もう! なんでお兄ちゃんは正論で反撃してくるの! 私じゃなかったら愛想尽かしてるんだからやっぱり感謝して!」


「心がこもってない。お手本聞かせてあげるからリピートアフタミー」


「お兄ちゃん、いつも私と一緒に遊んでくれてありがとう。引っ越しで離れ離れになっちゃったけど、こんな風に毎日お話しながらゲームできて、すごく幸せ」


「ほらほら。私への感謝と愛を気持ちを込めて言ってごらんなさい」


「無視しないで! 狩場の湧き時間が近いから装備変更も大事だけど! 私も高速回復のスキルが付いた武器に変更中だけど! 私だけが恥ずかしいじゃん!」


「そうそう。回復速度めっちゃ上がったから体力がゼロになる前に回復できちゃうよ。この域に達してるヒーラーが世界に何人いるんだろう。幼馴染のよしみで私とフレンドになれてるお兄ちゃんは幸運の持ち主だなぁ」


「うんうん。わかればよろしい。リアルでは離れ離れになっちゃったけど、こうしてゲームの世界でまた再会できた私達って運命で……」


「ちょっとお兄ちゃん! 聞いてる? なんかクエストのお誘い通知が来てるんですけど。回復速度が上がったのを知ってボス周回しようとしてない?」


「アタッカーはひたすら攻撃すればいいけどヒーラーはダメージの瞬間に合わせて回復魔法を発動させる超絶反射神経が求められるんだよ? あーあ、ご褒美がほしいなぁ。レア素材だけじゃ割に合わないなぁ!」


「え!? 本当!? リアルでお礼してくれるの!? さすが、大学生は一味違うな~。どんなお礼をくれるか楽しみにしてるね」


「よし行こう! お兄ちゃんは絶対に死なせないから」

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