第4話 今日から始まる自堕落な後輩

 同居が決定した日から一週間が経ち成実たちが引っ越して来る日になり、荷物を玄関に置き終えた頃。


「先輩、重いんで全部やってくださいよー。ついでに私も部屋に連れてってぇ」

「荷物よりお前の方が重そうだからヤダ」


「ひどいです、私女の子ですよ!」

「お前を女だと思った事はない!女の子だったもう少し女の子らしくしろ」


「自然体の私を愛してくださいよー先輩、結婚することになったですし私達。妥協ですよ妥協」

「何が妥協だ!結婚はお前が勝手に言った事だろうが、そもそも偽りの関係なのに求め過ぎだお前は。自分の事は自分でやれ」


 父さんたちは晩御飯の調達をしてくるとデートに向かった。成実は両親が居ない事を良いことに荷物の入った段ボール箱の上でぐでーっとだらしなく仰向けになり乗っている。

 こいつ本当に女の子なのか?そう思えるほどに態度が悪いし、俺の前では腹が立つ。


「はぁ、俺はもうこの関係辞めたくなってきた」

「ダメですよ先輩。先輩は一生私の面倒見る事になるんですからね、これは決定事項です。なので早く荷物と私を部屋へ持っていってー」


 何を言っても一向に動きそうにないのでこのまま無視してやろうかと思ったが、お父さんたちが帰ってきたときに何を言われるか分かったものじゃない。ここは後輩の頼みを素直に聞いておくか。


「成実段ボール箱からどいてくれないか?邪魔なんだけど」

「私が邪魔ってひどいです、私と荷物どっちが大切なんですか?」


「時間かな」

「答えになってないです、あと私一歩も動く気ありませんから」


 そういった後輩は完全に脱力状態と言った形で全身の力を抜きやがった。なんだか話してるのですら面倒になった来た。


「はぁ、仕方ないな。…よっと」

「なっ!な、何してるんですか!?」


「何って運んでるんだけど?」

「ち、違いますよ!そういうことを言ってるんじゃなくて…な、なんでお姫様抱っこなのかを聞いてるんです!」

 そういう後輩は必死に両手を動かして暴れだした。


「荷物と一緒には運べないだろ?運び方が不満なのか?じゃあ、首裏でも掴んで猫みたいに運べばいいのか?」

「いや、それならこのままでお願いします」


 さっきまでの慌てっぷりはどうしたのか急に大人しくなった後輩は顔を手で隠しているが耳まで赤くなっているのを見ると相当恥ずかしいのだろう。まぁ高校生にもなってお姫様抱っこされるなんて思いもしなかったのかもな。


 今気づいたが後輩のこう恥ずかしそうにしてる姿を見るのは久しぶりだな、自分でもわからないが成実から目を逸らしたくなった。


 後輩をこれから成実の部屋になる二階の場所まで運ぶと、「あ、ありがとうございます」と小さく俯きながら言っていた。俺も顔を合わせずらいから、とりあえず玄関の荷物を運ぶことに。


「ふぅ、こんなもんかな」


 荷物を運び終えると先程までの気持ちも落ち着いてきていた。

 荷物を運び終わったことを報告しようと後輩を見ると部屋の真ん中で成実は胡坐あぐらをかきどこから見つけてきたのかお菓子の袋を抱え、スナック菓子を咀嚼しながら俺に命令してきた。


「あぁ先輩、娯楽系先輩の部屋でお願いします」

「え、なんで?」


「だってこれから毎日、先輩の部屋でゲームするんですから」


 毎日って、テスト期間中は辞めてほしい。

 が後輩とゲームをするのは素直に楽しいのでちょっとしたわくわく感がある。これまでは部室でしか後輩とはゲームをしていなかったから休日はいつも一人だったんだよな。それを考えるなら一緒に住むのも悪くは無いのかもしれない。


 そんなことを考えながら成実に言われた通り娯楽系のゲームやラノベ、アイドルのフィギュアにアニメのブルーレイなどを運び終えると、先ほどまでお菓子の袋を抱えていた成実が今度は枕を抱えて俺の部屋へと入ってきた。


「先輩オールしないですか?明日日曜日ですし、私友達と夜更かししたことしないので憧れてるんですよー」


 枕を持ってきた意味は分からないが、俺も友達とお泊りなど経験したことが中学の修学旅行以来だし少し興味はある。となればお菓子を多少買わないと行けないかな。


「いいぞー、でもするならお菓子とか買わないと…お前がさっき食べてたので最後だしな」

「了解です!じゃあ私お留守番してるんで、ポテチとポッキーとパイのみとチョコパイと――」


「注文多すぎ!覚えられないから一緒に行くぞ。あと俺の部屋にお前がいると何されるかわかったもんじゃない」

「何もしないですよー、エロ本ないか漁ったり先輩の匂い嗅ぎながらオナニーするくらいですよ。ベッド濡らすくらいならいいですよね?」


「そういうの平然と言うから、お前を女として見れないのかもな」


 後輩のやばい発言に一言文句を言って強制的に外へと連れ出した。

 こんなやばい後輩と一緒に暮らしていけるか?いつか襲われるのではないだろうかと言う不安の中、俺と後輩は近くのスーパーに足を運ぶのだった。


 

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