第2話 作戦会議
「うわぁ、本当にお母さんじゃないですか」
「なんか楽しそうに俺のお父さんと話してるな」
昨日話し合いをした俺たちは当日の放課後、指定された喫茶店の窓外で各々の両親を見ていた。そしてどうやら昨日の仮説は正しかったようだ。
つまり俺と後輩は家族になるということだろう。何というか最悪だ。いやまぁ俺が怪訝していた知らないと人と一緒に住むのは多少不安は無くなったが、だからと言って後輩と一緒に住むのは少し抵抗感がある。普段の素行がと言う意味が8割強占めている。
だってこいつ俺の事を下に見ている気がするからな。絶対こき使ってくるに決まってる。でもまぁそんな事も多分ないはずだ、昨日後輩の提案を聞いて納得したからだ。
『先輩、私と恋人になりませんか』
『は?ごめん無理。お前の事女として見てないし友達でいてほしいかな』
急に告白をされ、俺は反射的にお断りの言葉を即答してしまった。
真面目にこいつと付き合いたいとは微塵思わない…顔以外にいいところは…趣味が合うくらいか?
『普通にショックなんですけど、って普通こんなタイミングで告白しませんよ。状況考えてくださいよ』
『状況ってなんだよ、ムードとしては最悪だよ』
でもどうしてこのタイミングで告白してきたのかそれは普通に疑問だった。さっきまで俺たちは親の再婚で家族になる可能性が浮上してきて焦っていたというのに、後輩は空気も読めないのだろうか?
『いや冷静に考えてくださいよ。私たちが家族になる可能性は多分高いです、そこでです。お互いの求めている物は話し合いでわかったと思います、なので恋人になってほしいんです(仮)ですけど』
後輩は人差し指をピンと立てて妙案でも思いついたような顔で話を続けた。
『先輩が今回嫌なことって言うのは自分の家に知らない人が住むことですよね?それで必然的に顔を合わせないといけない…と』
『まぁそうだな、それが?』
『つまり一緒に住めなくなる理由を作るんです!それが恋人です』
『?どういうことだ』
『考えても見てくださいよ、高校生の男女が一つ屋根の下という展開…初対面ならまだしも恋人ならどうでしょう。何も起こらないとは断言できないですよね?セックスしまくりですよ』
『なんでお前濁してたのに最後に言うんだよ。でもまぁ言いたいことは分かった、再婚して自分の子供たちがそういう関係ってのは親としては嬉しくないよな』
『ですです。私も余程の事が無ければ引っ越したくないですし。なのでこれは妙案だと思うのですが、どうです先輩?』
俺はうーんとわざとらしく顎に手を当てて考える素振りをした。お互いに利害が一致しているということもある、冷静考えなくてもこれはいい話かもしれない。
断る理由もあるわけもなく、まぁ後輩と仮でも恋人と言うのはちょっと嫌な気持ちはあるがやむを得ないと言う事で了承することに。
『わかった乗るよその話』
『話が分かる人で良かったです!恋人になった記念にチューでもします?私先輩ならいいですよー』
そう言った後輩は俺に顔を近づけて抱き着こうとして来た。
『しないわ!冗談は成功した後にでも言え!』
近づけて来る顔に手を置き必死に抵抗したのを覚えている。
と言うことが昨日あり、俺と後輩は作戦を成功させるべく店の外と言う状況だが改めて作戦会議だ。
「先輩、手を繋ぎましょ!恋人つなぎってやつ」
「はいはい、でこれからどうするんだ?」
「まず先輩は何も言わなくて大丈夫です!私がこの作戦の立案者なので責任は取ります。取り敢えず先輩は私の言葉に肯定しておいてください、多分それで成功します」
「不安しかないけど…ん、わかった任せたぞ?」
「任されました!」
後輩は自信満々に自分の胸を叩き、大船に乗った気で居ろと言ってるのような顔をしていた。泥船な気もするが、多分大丈夫な…はず。
こうして俺たちは戦場(喫茶店)の扉を開き、楽しく話している親の下へ後輩と手を繋ぎ向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます