二話 冒険者

その後彼女は森から抜け出す事にした。


道中魔物に遭遇したりしたが、何故か魔物が襲ってくる事はなかった。


そして森からやっと出られると思った所で——


「動かないで」


背後から何者かにナイフを突きつけられた。


「金になる物と食材全部出して」


手を頭に付けて背後を振り向くと、ボロボロの格好をした女の獣人族が居た。


「わ...」


獣人は驚いた表情をしていた、そしてナイフを地面に落とした。


「ごめんなさい」


その後獣人は何があったのかを彼女に話した。


獣人は元々冒険者パーティの奴隷として生活していた。


奴隷生活は酷く、毎日冒険者からのサンドバックにされていたりなど散々だった様だ。


そしてある日パーティメンバーにこの森の中で捨てられて、数日その辺の魔物を狩って食べてなんとか生き延びたという。


ナイフを落とした理由は彼女の美しい容姿に驚いたとの事。


「私の名前はカフィー、貴方の名前は?」

「ん...名前...?」

「——名前がない...?」

「貴方の様な美しいに合う素敵な名前は...」

「人...」


彼女は人と言う言葉に反応した。


そしてその場で泣き崩れた。


「えぇちょっと...!?」


彼女は今日に至るまでに人として扱われてこなかった。


初めて人として認知された、その感動で泣いたのだ。


泣き止んだ彼女はその辺の花を持ってきた。


「その花は...リコリスの花?」

「あ」

「あ」


彼女はその花の名前と同じ『リコリス』と名付けられた。


リコリスはカフィーにこれから何をするのか尋ねた。


「私は...あいつらと話を付ける」

「大丈夫?」


あいつらと言うのはカフィーを奴隷にしていた冒険者達のことだった。


しかしいくらなんでもカフィー一人でなんとかなる問題でもない。


リコリスはカフィーと一緒に行く選択をした。


カフィーは最初普通の女性と一緒に行くのは危険だと判断したが、そもそもこの森で生存している辺り只者ではないとカフィーは考えた。


そしてリコリス達は街へ向かう事にしだ


____


カフィーのパーティが拠点としていた冒険者ギルドに到着した。


ギルドの中に入ると、カフィーを奴隷にした冒険者達が居た。


「あぐっ!」


冒険者はカフィーの存在に気づくと早速有無を言わさずに殴りかかってきた。


「この野郎...よく戻ってきたなこのケダモノめ!」


助けようとカフィーの所に近づこうとしたリコリスだったが、パーティメンバーの一人によって阻止された。


そしてその一人がリコリスに対して露骨なナンパをしてきた。


男がリコリスの腕を掴んできたので、両手で腕を掴んで振り解こうとしたら所——


男の片腕が消し飛んだ。


「う...うわぁぁぁぁぁ!!!」


その断末魔はギルド内に響き渡った。


因みに冒険者同士のトラブルに関してはギルド側は干渉しないとされている。


「カフィー大丈夫?」

「う...うん」


そしてカフィーは立ち上がりパーティリーダーと面向かった。


「もう私はあんたらの奴隷じゃない!」


リーダーはリコリスをじっと見つめた後、結論を出した。


「分かった、お前は晴れて自由の身にしてやる、その代わりにその女リコリスを寄越せ」

「...」

「さぁ、早く寄越すんだ...!」


リーダーが強引にリコリスの腕を引っ張ろうとした。


リコリスはリーダーの腕を振り解こうとした時、またもやリーダーの腕が吹き飛んでしまった。


ギルド内が突然の出来事にプチパニックになっている間リコリスは呆然と立ち続けていた。


_____


何やかんやあったがこれでカフィーは正式に冒険者となった。


ついでにリコリスも冒険者になった。


この日、冒険者パーティ『フィーリス』が誕生した。






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