第2話 海にいきたい
「ねぇ……海渡」
「ん?」
卒業式も終わり生徒もだんだん帰り出したとき、水無瀬が声を掛けて来た。
「この後、海行かない?」
「……ごめん。このあとみんなでカラオケ行くんだ。水無瀬も誘われてるだろ?」
「まぁ……うん、一応」
「なら、またカラオケで会おうぜ」
「……うん」
彼女の最後の言葉も聞かずに俺は友達の方に走って行ってしまった。
水無瀬はカラオケには来なかった。
「それでさ……今日、海で友達に会った」
「へぇ……誰?」
「水無瀬って言う……中学まで一緒だった奴」
「…………え?」
覚えがないのか?まぁ……中学の時の同級生だし、母さんは会ったことないしな。
「それって水無瀬さん所の娘さんのこと?」
「うん、多分」
母さんの知っている水無瀬家と俺の言っている水無瀬が同じかどうか分からないのでとりあえず多分とだけ言っておく。田舎だと近所に同じ苗字の家族が居るなんてことはざらにある。
「それ……本当?」
「本当」
夕食を食べ終わり、食後に水を飲む。家には俺と母さんの二人だけ。父さんはまだ帰ってきてない。週に一回の残業らしい。
「水無瀬さんの所の娘さん、死んだのよ」
「は?」
「今年の夏、あんたが帰って来る少し前に海で……」
「それ、違う家じゃないの?俺が会ったのは中学の時、同じクラスだった水無瀬 葵なんだけど」
「そう。葵ちゃんよ。思い出した。水無瀬 葵ちゃん」
「…………」
変な沈黙が流れる。リビングはエアコンが効いているため、室内温度は27度くらいだろう。それなのに変に汗が出てくる。暑いからじゃない。背中に冷たい脂汗がにじみ出てくる。
「へ……へぇ……そうなんだ」
「あんたが会ったの本当に、水無瀬さんなの?」
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