第54話 美鈴と遥花
「いやー楽しかったね」
「はぁはぁ、こわ、楽しかったです」
凄かった。人生初ジェットコースター。ただ上がって下がるだけじゃなくて、一回転とか横に思い切り揺られたりとか、重力無視の新鮮な感覚。
高いところが苦手というわけでは全くないのだけど他では味わえないスリルを感じた。
彩乃さんはどうやら余裕なようで笑いながらキャー!って叫んでいた。
「ははは…」
「ってあれ?彩乃さんと柚乃ちゃん?」
「あはは、応援ありがと……ってあれ、美鈴と……遥花じゃん!」
またファンに話しかけられたのかと思ったのだけど……
「ライブ以来ですね!」
そこに居たのはForceのメンバーの二人だった。
「こ、こんな偶然あるんですね…」
「意外とあるんだよね〜」
街でアイドルと出会うなんて激レアイベントだと思ってたけど意外とあるんだ。
「ほら、一般人の人には以外と気づかれないんだよ。それこそ店員さんとお話するとかじゃなかったらね。でも見知った中の友達だったら遠くからでもわかるでしょ?雰囲気とかで」
「あーー、なるほど」
何となく分かった気がする。
最初に私たちに話しかけてくれたのが
そして……
「お久しぶりですね、彩乃さん。そして、初めまして柚乃さん、保礼遥花です」
レイヤーカットの黒髪を揺らしながら軽く会釈をされたのでこちらも会釈で返す。
「初めまして、Force3期生の山月柚乃です」
「おー、ゆずちゃんもすっかり挨拶が板に付いてきたね」
「そこうるさいです」
「ははは、ごめんごめん」
「久々だね〜、あっ、そういえばそろそろ休養から復帰するんだっけ?」
「はい。1週間後から番組にも出始めます」
そう、遥花さんは私たちが3期生としてForceに加入する前から数ヶ月の休養をしていたのだ。理由は腕の怪我。怪我の原因は公には出ていないねれど、先輩たちが言うには足を滑らせて階段から転がり落ちてしまったらしい。
だから私は会うのが初めてだったのだ。姿を見る限り怪我は治っているようだから一安心だ。
「ここで遊んでるのはその前祝いですね。美鈴がどうしても行きたいとうるさくて」
「遊園地行きたいって言ったのは遥花じゃん」
「記憶にないかな?」
「遥花の記憶都合よすぎ……」
なんだか微笑ましい光景だ。今のやり取りを見ただけでも2人の仲がとてもいいことが伝わってくる。
「ふふ、みんなさえ良かったら一緒に回らない??まだ私たちここに来たばっかりだし」
「是非!」
彩乃さんの提案に凄く食い気味に遥花さんが返事をする。
勿論私も賛成だ。あまり話したことの無い先輩と話すことの出来るいい機会だ。
「私も異論なしです」
全員の肯定が得られたので一緒に回ることが確定する。
「じゃあ回ろっか。どこ行こっか?お化け屋敷??」
「いいと思います。じゃあ行きましょうか!」
遥花さんは何故かとても上機嫌だった。
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