第53話 束の間の休日
「おー、ここが文京ドームシティ……」
東京都文京区。ここには五大ドームにも数えられる文京ドームがあり、そのすぐ隣にこの文京ドームシティが構えている。
文京ドームシティはレストランやカフェ、アウトレットや温泉まである複合施設である。
老若男女が楽しむことが出来るドームシティだが……
「「キャーーー!!!!」」
私たちの真上をジェットコースターが通過する。
何よりの魅力が遊園地である。
メリーゴーランドやジェットコースター、観覧車といったメジャーなアトラクションが揃っているこの遊園地は都会のビル群に囲まれた場所に設立されていて、テーマパークとはまた違う魅力を感じる。
「ジェットコースター怖そう……」
「壊さないでよ!?」
「壊さないですよ!?」
もー彩乃さんったら天然なんだからーなんて言いたかったけれど、確かに私なら壊そうと思えば壊せそうなので黙っておく。
「じゃあ最初はジェットコースター乗ろっか!」
「……はい!」
どうやら遊園地に入るのに入園料のようなものはなく、アトラクション1回につき何円、みたいな制度らしい。仕事終わりとかにでも気軽に来れるのは嬉しいポイントだと思う。
1200円でチケットを買ってジェットコースターの前に到着する。平日ということもあって全く並ばなかった。
「はい、お二人様です……ね、って、え!?」
係のお姉さんは私たちの顔を見るなり驚いた顔をする。
「あ、あやのん??と、柚乃ちゃん!?3期生の」
「おしのびなので内緒ね」
一応マスクと帽子で変装はしているのだけどこの距離だと分かる人には私たちの正体が分かってしまう。
彩乃さんはそんな係のお姉さんを前に、なんのことも無いかのようにウインクする。
慣れてるなぁ……
「は、はい!すいません業務中に。お二人様ですね?席にどうぞ!ファンなんです!」
「ありがと♪」
「あ、ありがとうございます」
情緒も日本語もぐちゃぐちゃな係のお姉さんに安全バーを下ろしてもらう。ちなみにお姉さんの手は震えてた。
うん。分かるよ…その気持ち。
安全バーは一度ロックしてからはシステムで一括で制御しているようで簡単には外れそうにない。
「うわ、窮屈」
「ふふふ、そういうものだから。ジェットコースターって」
「まぁ、安全のためですもんねー」
だけど、このタイミングに誰かに狙われるとなかなか逃げるのが難しい……なんて考えてしまう。
殺し屋をやめたと言ってもなかなか思考回路は変わらない。
「それでは、行ってらっしゃ〜い!」
やっと調子を取り戻したお姉さんの声によってジェットコースターがガタガタと音を立てながら動き出す。
「ふふ、でも嬉しかったね。こんなところにファンがいたなんて」
「ですね〜、応援してくれる人がいるんだって感じで」
ジェットコースターは音を立てながらゆっくりと坂を登っていく。
……あれ、結構高くない??
「でも、私ジェットコースター乗るの初めてです」
「あ、そうなんだ。私は何回も乗ってるよ。ここのジェットコースターも3回目とか」
ゆっくりと、ゆっくりとジェットコースターは坂を上っていく。
……あれ?想像の何倍も高いような。
「へ、へー、よく来るんですね」
「うん!ここのジェットコースター、日本でトップ3に入る絶叫コースターだから」
「え」
ジェットコースターはついに頂上に到達し、下向きに傾きはじめる。
「それ……」
「?」
「それを早く言ってください!!!」
急加速したジェットコースターは私の悲鳴を置き去りにした。
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