策略-12
「彼は・・・・・・・その・・・・・・・」
医師のその言葉に燐が「その・・・・・・・何ですか?」と尋ねる。
「彼は、至って健康そのものです」
その一言に全員がガクッと肩を落とす。
「健康なんかい!」絢巡査長がキャラも忘れて大声でツッコミを入れる。
「ま、健康と言っても刺されてはいますがね。全治二週間といったところですね」
「あ~ 良かったぁ~」燐は膝から崩れ落ち安堵する。
「長さんは今?」一川警部の問いに「起きてますよ。話されますか?」と提案する医師にすかさず「お願いします」と燐が答えた。
ストレッチャーに乗せられた長四郎が手術室から運び出されてきた。
「皆の者、出迎えご苦労」
長四郎が発した第一声はそれであった。
「馬鹿ッ!」燐はそう言って、長四郎の鳩尾を叩く。
「ッ!!」
傷が塞がったばかりの長四郎には、耐え難い痛みが身体を走り抜ける。
「長さん、大丈夫?」一川警部の問いかけに、無言で首を振り大丈夫じゃないアピールをする長四郎。
「ま、一週間程は入院してもらいますので」医師は看護師に頷くと、看護師は長四郎を病室へと運んでいった。
「では、私はこれで」
医師は自分の仕事へと戻っていく。
「あたし達も仕事に戻ろうか」
「一川さん。高島さくらの身辺警護は続けますか?」
「そうやねぇ~ そのまま続けてもらおうか。長さんを刺した奴はこっちで調べておくけん」
「分かりました。では、私も高島さくらの元に戻ります」
絢巡査長は、高島さくらの元に向かう。それに同行する燐であった。
ウゥゥゥゥゥ
パトカーのサイレンがビルとビルの間に響き渡る。
「なんで、刺すんだよ!!」武彦が健人を怒鳴りつける。
「身の危険を感じたから・・・・・・・」
この二人は他の仲間とはぐれ、巡回を掛けるパトカーから逃れるためビルの間に身を隠していた。
「クソッ! こんなはずじゃなかったのに!!」
「さくらのせいだ。あいつが、あんな事、言わなきゃ」
「そんなこと言ったってしょうがないだろ?」
「クソッ!! クソッ!!」ビルの壁に拳を叩きつける武彦。
ここで警察に逮捕されることがあれば、人生の多く時間を刑務所で過ごす事になる。
武彦はそれだけはどうしても避けたかった。そして、健人は長四郎を刺した事の動揺が拭いきれずに身体を震わせるだけであった。
一台のパトカーが止まった。
「逃げるぞ!」武彦は健人にそう言うと、一人先に駆け出していく。
「ま、待てよ!!」
健人もすぐに武彦の後を追いかけ、逃げ出す。
行く当てもない二人は、夜の街を駆け回るのだった。
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