策略-11

 覆面の拳を片手で受け止めると、手首を内側に曲げて固めるとそのまま腕を捻った。

「痛たた」そう言う覆面を仲間の覆面に向かって突き飛ばす。

「調子に乗るんじゃねえよ!!」

 別の覆面が長四郎を蹴ろうとすると、絢巡査長が足を掴みそのまま足を持ち上げて覆面を地面に叩きつける。

「このアマァ!!」隙ができた絢巡査長に襲い掛かろうとするが、ゴンッという鈍い音共に覆面は地面に崩れ落ちた。

「ラモちゃん・・・・・・・」驚く絢巡査長。

 そう、絢巡査長の危機を救ったのは燐であった。

「ふぅ~」燐はゆっくりと息を吐きながら拳を降ろす。

 大人二人から拍手を送られる燐だったが、柱の陰に隠れていた覆面がナイフを突き出して燐に襲い掛かろうとする。

「ラモちゃん、危ない!!」

 絢巡査長が駆け寄る前に、長四郎が身を呈して燐に覆いかぶさる。

 ザクッ!!

 現場に嫌な音が響き渡る。

「ひっひぃぃぃ!」

 血塗られた手からナイフを落とし、覆面は走り去りそれに続くように他の覆面達も逃げ出すのだった。

「長さん!!」絢巡査長が駆けよると「絢ちゃん、声大きすぎ」そう答える長四郎はゆっくりと地面に倒れる。

 燐はいきなりの事に、声を出せずに放心状態になっていた。

「長さん! 長さん!!」

 長四郎の意識が途切れないよう一生懸命声を掛ける絢巡査長。

「な、何で?」

 自分が長四郎の調査に付き纏ったせいでこのようなことになったのか。

 自責の念に駆られていると、「ラモちゃん。救急車」長四郎が痛みを堪えながら救急車の手配を要請する。

「分かった」燐はすぐさま119番し、救急車を手配する。

 長四郎は近くの救急病院へと運び込まれた。

「長さんが刺されたって!」

 病院に駆け付けた一川警部が、手術室の前で長四郎の手術が終えるのを待つ絢巡査長に声を掛ける。

「はい。私のせいです。申し訳ありません」絢巡査長は一川警部に謝罪すると、「絢さんが謝る必要はないですよ。私がいけないんだから」そう言う燐の目から涙がこぼれ落ちる。

「ラモちゃんが気に病むことはないばい」一川警部は燐を慰める。

「でも・・・・・・・」

「長さんの容態は?」

「救急隊員の話だと、背中側の左脇腹あたりを刺されたようで、出血もかなり」

「そうか」一川警部は絢巡査長の話を聞き頭をペチペチと叩く。

「犯人は覆面をしとったんよね?」

「はい」

「凶器は?」

「もう鑑識に回しました。でも前科者履歴でヒットするかどうか」

「ああ、初犯な感じの犯人なんやね」

「私の感覚ですが」

「いや、初めて人を刺すと人間パニクるからね。絢ちゃんの言いたいは分かるけん。大丈夫ばい」

 ブンッと言う音と共に手術中の明かりが消えた。

 手術室の扉が開き、医師が出てきた。

「先生。彼の容態は?」一川警部が長四郎の容態を尋ねると医師は心苦しそうに口を開いた。

「彼は・・・・・・・その・・・・・・・」

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