策略-13

「あー退屈だ」

 長四郎は頭の後ろで腕を組み、窓から見える景色に目をやると、秋が始まったのを感じる景色が窓の向こうには広がっていた。

 そして、テレビに視線を移すとさくらがお昼のバラエティー番組に出演していた。

 銀座のとんかつ屋で、お笑い芸人と食レポをしていた。

「ん~ 美味しいぃ~」

 さくらはカメラに向かって、味の感想をレポートする。

 それを見ていた長四郎は「美味しいのは当たり前だろ」とテレビに一人ツッコミを入れる。

「テレビにツッコミを入れる元気はあるんだ」

 声がした方を見ると、燐がお見舞い用のフルーツを持って立っていた。

「ラモちゃんか・・・・・・・」

「お見舞いに来てあげたのに、それはないでしょ」

「んな事より、彼女はどうなの?」

 絢巡査長と共に行動する燐から、さくらの情報を聞き出す。

「さくらさんは、普段通りに生活してるよ」

「普段通りねぇ~」

「それと、私達を襲った覆面達なんだけど」

「おう」

「一人、捕まえたらしくて。そしたら、同じ大学の同級生に誘われてやったらしいんだって」

「そうか。で、その大学は、さくらちゃんが通う大学でしょ」

「なんで、分かるの?」

「分かるでしょ。彼女のストーカーは同じ大学の学生だろうからな」

「でも、ストーカーって殺されたんでしょ?」

「そうだよ。ストーカーの濡れ衣を着せられてな」

「どういう意味?」

「ラモちゃん。これからは俺の指示に従って行動してもらうから」

「なんで、私が」

「あ痛たたたたた」傷口を抑えながら、誰のせいでこうなったんだと言わんばかりの顔をする。

「分かった。分かりました」

 燐は了承し、長四郎からこれからの指示を受けるのだった。

 翌日、燐は絢巡査長と共にさくらのマンションへと迎えに来た。

「おはようございます!」燐が元気よく挨拶すると、「おはよう」と素っ気ない返事をする。

「では、行きましょう」

 絢巡査長は覆面パトカーに乗せる。

「今日は大学でしたよね?」絢巡査長が予定を確認すると「そうでぇ~す」とだけ答えスマホに目を落とすさくら。

「あの、さくらさん」燐が声を掛けると、さくらはスマホから顔を上げて助手席に座る燐に向ける。

「何?」

「実は、長四郎を刺した犯人が捕まったんです」

「それは良かった。探偵さん、元気?」

「ええ、それはもう。それより、どんな犯人なのかを聞かないんですね?」

 燐のその一言に、さくらは眉をひそめる。

「どんな人なの?」車外に目を向けながら犯人について質問する。

「それが、さくらさんの通う大学の学生である人物から依頼を受けたって供述しているそうです。ですよね? 絢さん」

「ええ、そうよ」

「じゃあ、ストーカーはうちの大学の生徒だったって事ですか? そんな・・・・・・・」

 さくらは、ショックを隠し切れないという反応をする。

「それで、その依頼人は女だって言うんですよ」

「女?」

「はい、女です」燐はきっぱりと答える。

「何か心当たりでも?」絢巡査長の質問に「いえ、ありません」と気まずそうに答えるのを見て、女子二人ニヤッと笑うのだった。

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