策略-14

 さくらを乗せた覆面パトカーは、大学の前で停車する。

「着きました」

「ありがとうございましたぁ~」

 さくらはそそくさと車を降りてキャンパスへと歩いて行った。

「絢さん、行ってきます」

「何かあったら、連絡頂戴」

「了解です」燐は敬礼をし、さくらの後を追う。

 長四郎からの指示の一つ、さくらの身辺調査を行う。大学での人間関係が今回の事件を解決するものになると言われたので、燐は気を引き締めてさくらを調査する。

 さくらが受講する講義に紛れて、さくらに話しかける人物を写真に納めていく。

 九十分の講義を終え、さくらは三人の男友達を連れて移動した。燐は長四郎に教わった尾行術を実践しながらさくらの後を追う。

「99研究室」

 男友達と入っていた部屋を確認し、さくらが出てくるまで周辺を探索する。

 そこは化学部の研究棟で燐は学生のフリをしながら、殺人事件の手掛かりも探す。

 ここから、ふぐ毒が盗まれた可能性は高い。長四郎はそう言っていたので燐はテトロドトキシンを扱う研究室がどこにあるのかを探索する。

「う~ん、どこの研究室だろう」

 エレベーターホールにあるフロアマップを見ていると、白衣を着た男とぶつかった。

「あ、すいません!」

 燐は謝りながら、ぶつかった相手が落とした紙を拾おうとする。拾いながら落とした紙に何が書かれているのかを確認していると、一枚の紙にテトロドトキシンの表記があった。

「はい、これどうぞ」

「ありがとう」燐から数枚の紙を受け取ると、そのまま自分の研究室へと戻っていた。

 燐が目で男を追っていくと、さくらが入っていた研究室へと入っていく。

「ホントにあの女が犯人なの?」

 燐は訝しそうに研究室を見つめるのだった。

 三時間後、さくらが男友達を連れ立って大学から出てきた。

「バイバァーイ」

 さくらは手を振りながら男友達と別れると、不機嫌そうな顔をしながら覆面パトカーに乗り込む。

「お疲れ様です」絢巡査長がそう話しかけると、さくらは無言のまま会釈だけする。

 車が走り出し始めると、助手席に座る燐が切り出した。

「さくらさんって、理系の学部なんですか?」

「そうだけど」燐の質問の真意が読めず、少し警戒するさくら。

「それにしても、男友達多いんですね?」

「まぁ、理系は女子の比率が少ないから」

「そうですよね。必然ですよね。なんか、姫プレイに見えちゃって」

「姫プレイ?」

「姫プレイっていうのは、一人の女の子を数人の男で囲って持ち上げる環境? の事ですかね。私も受け売りなんでよく分からないんですけど」

「あまり、良い気分はしないけどね」

「すいません」

 車内の空気が気まずくなり、少しの間沈黙が流れるのであった。

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