策略-15

 東京都と埼玉県の県境にある廃工場に身を隠している健人。

「なんで、こんな事に・・・・・・・」健人は頭を抱えこんで落ち込んでいると、「帰ったぞ」と武彦がビニール袋を片手に戻ってきた。

「ほら、食えよ」

 武彦がコンビニで買ってきたおにぎりを差し出すと、「いらねぇよ!!」とおにぎりを払いのける。

「何すんだよ」武彦はやれやれといった感じを醸し出しながら、おにぎりを拾い上げる。

「マン喫で隠れれば良いじゃねぇか!」

「そう怒るな。さっき、コンビニでスマホ充電してきて状況を確認したが俺達の事件は大きく報道されてなかった。警察も大した捜査をしていないことだ」

「なんの慰めにもならねぇよ!」

「お前、前科者じゃないだろ。すぐには特定できないし、世間の関心も薄い。ネットでも特定とかされてないだろ」

 自身の推測を交えながら、健人を励まし落ち着かせる。

「武彦がそこまで言うなら、そうなんだろ」少し落ち着きを取り戻す健人は「なぁ、さくらは消したほうが良いんじゃないか?」武彦に提案する。

「お前、急に考え方が凶暴になるのな」

「すべての原因はあいつだろ?」

「それもそうだな。移動しながら、あいつの始末の仕方を考えよう」

 武彦と健人は、おにぎりを頬張りながら廃工場を後にするのであった。


「それで、彼女は不機嫌になった?」

「うん、そう」

 長四郎の問いに、元気よく答える燐。

「で、さくらちゃんが所属している研究室がふぐ毒を扱う研究室だった」

「そう」

「でも、彼女は盗んでねぇだろな」

「私もそう思う。姫プレイだもん」

「おっ、ラモちゃんも姫プレイが理解できてきたじゃない」

「褒められても嬉しくない」

「はい。すんませんでした」

 長四郎は深々と頭を下げて、謝罪する。

「それでさ、絢さんにあの研究室もしくはあの学部でここ二、三日欠席している学生が居ないかを調べてもらってる」

「ラモちゃん。今回は偉く活躍するね」

「やかましいわっ!」

「それで、ラモちゃんが考えるこれからの筋道は?」

 長四郎の質問に、少し長考すると燐は答え始める。

「さくらさんが、どうやって経済学部の大学院生と知り合ったかを調べる」

「なんで、そう思うの?」

「だって、あの女の周りにいる男ってさ、陰キャそのものなんだよ。陰キャが陽キャみたいに人間関係広い訳ないじゃん」

「酷い偏見だな」

「でも、あんたも同じ意見になるでしょ」

「そんな事はないよ」と言いながら、顔は同じ意見だと言わんばかりの顔をしていた。

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